ある晴れた日に
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162部分:共に生きその十二
共に生きその十二
「絵になるからな」
「結局何でもオタクなんだよ」
「そうなるよな」
ここで竹山が結論を出してきた。
「やっぱりな」
そして正道もその結論に対して頷くのだった。
「そうだよな」
「そういうこと。それでね」
「ああ」
「これは歌舞伎オタクになるのかな」
「そうだな」
竹山の今の言葉にも頷くのだった。
「そうなるよな。この場合は」
「そういうのもあるし」
「じゃあここはオタクに専念するか」
彼もまた笑っていた。そうしてその笑いと共に竹山の家に行き助六を見た。竹山の部屋は確かに本や漫画やゲームは多かったがそれでも整理整頓が行き届き非常に奇麗だった。そこで二人並んで座布団に座ってコーラにポテトチップスを食べながら観た。
劇が終わった頃にはもう夜になっていた。正道はその暗くなった窓を見ながら竹山に対して述べた。述べながらもポテトチップスはまだ食べていた。
「終わったけれどな」
「どうだったかな」
「面白いことは面白いな」
まずはこう答えた正道だった。
「やっぱりな」
「そうだよね。面白いよね」
「劇もいいよな」
「うん」
竹山もポテトチップスを食べつつ彼と話していた。
「だから名作なんだよ」
「それに音楽もな」
「気付いたよね」
「ああ」
今度は正道が頷いた。
「かなりな。いい感じだな」
「どんな感じかわかったかな」
「大体がわかったけれどまだ充分だな」
こう竹山に答えた。
「まだな。だからな」
「どうするの?それで」
「ちょっとダビングできるか?」
竹山に申し出てきた。
「この助六。いいか?」
「うん、いいよ」
竹山はすんなりとその申し出を受け入れたのだった。
「もうすぐにできるよ」
「すぐにか」
「それ自体はね。けれどね」
「けれど。何かあるのか?」
「いや、また観たいなんて」
竹山が言うのはこのことだった。相変わらずポテトチップスを食べながら正道に対して言うのであった。かなりリラックスした調子だが話していることは真面目だ。
「随分と熱心だなって」
「音楽はしっかりしていないと駄目なんだよ」
正道もまた真面目そのものだった。
「だからな。何度も聴いて」
「それで音楽を考えていくんだ」
「これをアレンジすればいいんだよな」
「うん」
また答える竹山だった。
「そうだよ。歌舞伎じゃなく演劇用にね」
「演劇用か」
その言葉を聞いて考える顔になる正道だった。
「そういう感じか」
「アレンジとかは経験ある?」
「結構得意な方だ」
脇に寝かしてあるギターに手をやりつつ述べた。
「そういうのもな」
「よかった。経験あるんだ」
「ああ。これをアレンジするとなるとな」
「和楽器はうちの学校にあったっけ?」
「あってもうちのクラスに使える奴はいないぜ」
ただあるだけでは駄目なのが楽器なのだ。使えなければ何の意味もないのである。
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