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ポケットモンスター〜翠の少年の物語〜

作者:V・B
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第四話

 
前書き
どうも、新生活がスタートしてバタバタしまくっております。バイト探さなきゃ…… 

 

 この世界には、トレーナー同士でポケモンとポケモンを闘わせる、『ポケモンバトル』という文化がある。世界的に見てもメジャーな文化で、バトルを生業とするトレーナーも多い。
 だが、当然ながらルールのようなものも存在していて、相手のポケモンが命の危機に陥るようなことにならないようにする必要がある。
 しかし──それはあくまで、トレーナー同士のバトルの場合。
 審判も、観衆も、ルールもない野生のポケモンとのバトルでは──命を落とすポケモンもいる。自分のポケモンも、野生のポケモンも。

「だっ、大丈夫っ!?」

 しばしその光景に目を見開いていた僕は、はっと我に返り、倒れているポケモンに走り寄り、そっと抱き上げる。
 全身に打撲や切り傷が付けられていて、呼吸も浅かった。素人である僕が見ても、危ない状態だというのはすぐに分かった。

「これは……持ってるキズ薬じゃ無理だ。すぐにポケモンセンターに運ばねぇと」

僕の後ろからそのポケモンの様子を見ていたユウキさんも、焦りを混ぜた声色でそう言った。

「ここからだと……コトキタウンのポケモンセンターが近いな。行くぞ!」
「はいっ!!」

 ユウキさんは懐からポケナビを取り出し、地図の確認をしたかと思うと、一目散に走り出した。
 僕もそのポケモンを助けるために、コトキタウンへと走って行った。
 





─コトキタウン ポケモンセンター─







 僕とユウキさんは、待合室で待っていた。
 何をしてても落ち着かない僕は、電話を使って父さんに事情を説明していた。

『そうか……野生のポケモンが……』
「うん。だから、今コトキタウンのポケモンセンターに居るんだ。もしかしたら、帰りが遅くなるかも……」
『気にするな!ポケモンを助けようとしてるんだ!存分に助けてきなさい!!』

 画面の向こうの父さんは、そう言ってニッコリと笑ってくれた。

「……ありがとう。それじゃあ、また後で」
『おう』

 僕はそう言って受話器を置くと、ソファに腰掛けていたユウキさんの元へ戻る。

「親父さん、なんて?」
「気にするなって。だから、僕もここで待ちます」

 僕がそう言うと、ユウキさんは、そっか、と、手に持っている何かの機械に目を落とす。

「ユウキさん、それは……?」
「あぁ、ポケモン図鑑だ。ポケモンにかざせば、そのポケモンの細かいデータが一瞬で登録される、ハイテク機械だとさ」

 手招きされたので、横から覗き込むと、さっき僕達が連れてきたポケモンが映し出されていた。

「ラルトス……ですか」

 ラルトス、気持ちポケモン。
 人やポケモンの感情を、頭のツノでキャッチする力を持つポケモン。敵意を感じ取ると、隠れてしまう。
図鑑には、そんな説明文が書かれていた。

「ああ。個体数のそんなに多くないポケモンらしいからな……最初は、他の野生のポケモンの仕業かと思ったんだが……」

 そう言いながらラルトスが連れていかれた治療室の扉を見つめるユウキさん。その顔は、どこか言いにくそうなことを考えているように見えた。

「……ラルトスは天敵の少ないポケモンなんだ。ラルトスを襲うポケモンなんて、聞いたことない」
「…………つまり?」

 僕はユウキさんが何を言いたいのかわからなかった。

「多分……あれは人間の仕業だ。しかも、幼い子供」
「……へ?」

 だから、ユウキさんから突拍子もないセリフがでた時、本当に困惑してしまった。

「ラルトスってポケモンは、幼い時はかなり弱いからな……格好の餌食だったのかもな……」
「……トレーナーの誰かがやったって事?」
「しかも子供のトレーナー、だな。ベテランのトレーナーなら、野生のポケモンとは必要な時しか戦わないし、な」

 ユウキさんはそう言うと、ポケモン図鑑を懐にしまった。

「まぁ、犯人探しは、よっぽどの事がない限り無理だろうな。ざっと見渡したけど、証拠らしい証拠は無かったし」
「……そんな…………」

 どうしようもないと言われてしまったら、そこに関しては諦めるしかない。

「だから、俺たちにできるのは、ラルトスが無事になるように祈ることだな」
「……ですね………」

 しかし、僕らは祈ることもままならなかった。
 僕とユウキさんが二人して手術室の扉を見ると、手術中のマークが消灯した。

「「あっ……」」

 思わず二人して声を漏らしてしまった。そして、二人同時に立ち上がる。
 手術室の中からはジョーイさんが出てきた。少し疲れている様子だが、顔には安堵の色も見えていた。

「ジョーイさん!ラルトスは!?」
「安心して下さい。もう二、三日入院すれば、元気になりますよ」

 その言葉を聞いて、僕は足の力が抜けそうなほど安心してしまった。しかし、何とか踏み止まる。

「良かった……」
「ああ……」

 二人してホッと息を吐く。ジョーイさんはそんな僕らを見て、実に嬉しそうな顔をしていた。

「今は面会は出来ないので、また明日の昼頃にでも来て下さい。それじゃ、失礼しますね」

 ジョーイさんはそう一礼すると、隣に立っていたラッキーと一緒に立ち去って行った。

「さてと……ポケモン捕まえるのは明日、ラルトスの様子を見てからにしようか。もう夜遅いからな」
「…………はい」

 僕は後ろ髪を引かれる思いで、手術室の扉を見る。どうしても、あのラルトスのことが気になってしまった。

「……そんなに気になるなら、今日はここに泊まるか?」
「えっ……?」
 
 そんな僕を見ていたユウキさんが、僕にそんなことを提案してきた。

「トレーナーならポケモンセンターには無料で泊まれるし、安全だから大丈夫だろ」
「えっ……でも……」
「もう夜八時だし、こんな時間から外歩く方が危ねぇよ」

 ユウキさんはそう言うと、受付の方にすたすたと歩いて行く。

「あ、家族の人には連絡しとけよー?」

 最後に一言そう言うと、受付の人と話し始めてしまった。

「…………えー?」

 いきなりのことに呆気に取られてしまった僕は、ユウキさんが部屋を確保するまで、その場から動けなくなってしまったのであった。



 
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。大変申し訳ありませんが、今週から『男艦娘 木曾』と各週毎に交互に投稿していきます。やること多すぎてもうね、時間なかったんです。その分、より内容を濃くしていけたらなと思います。

それでは、また次回。 
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