ロックマンX~Vermilion Warrior~
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ロックマンX5
第97話:Eurasia City Broken Highway
月のラグランジュポイントに浮かぶコロニー群。
その中でも最も注目すべきは、何と言っても数あるコロニー群の中でも最大質量を誇る超巨大コロニーの“ユーラシア”である。
その名の通り、ユーラシア大陸の技術者の総力を結集して造られた、超巨大コロニーである。
何時もなら地上の風景と何ら変わることのないはずの中の空間が、今日は見る影もなく廃墟と化していた。
倒壊し、粉々になった建造物とレプリロイドの死骸が周囲に散乱していた。
「ええ、仕事終わりましたよ…あっけなくね。」
1体の謎のレプリロイドが何者かと通信を取っていた。
このような惨劇を生み出して起きながら何の罪悪感も感じていない態度にこのレプリロイドはまともな神経を持っていないのは明白だろう。
「ええ、分かってますよ…コロニーはまだ、生きてますよ。いつでも落とせる状態にしてますから…早く合図してくださいよ。結構、暇でね。後はウィルス撒いて…地球に戻るだけですから。」
レプリロイドの通信の相手がそれに答える。
『フフ、見込んだだけはあるな…やるべき事は、しっかりやっているようだな。』
「旦那を敵に回す奴なんて…イレギュラーハンターぐらい愚かな奴じゃないと。ま、俺に出来ることでしたらなんでもやりまっせ、旦那」
『分かった…今から、地球上であれを実行する!!それまで、そこで待機だ。』
あれというのは無論、この地球上から全てを滅するための作戦のことだが、レプリロイドもそれに予想がついたらしく、質問はしなかった。
「しかし…」
『?』
「旦那自ら手を下さなくても…そんなに凄い奴らなんですか?エックスだがゼロ。後、ルインちゃんだったかな?」
『ククク…ある意味な。では、通信をそろそろ切る。報酬は弾んでおこう』
「弾むも何も、報酬は例の最新型のワクチンと“生き残らせて頂く”ことですから、これ以上の報酬なんてあるんですかい?」
『それに加えて快適な生活も保証する、ということだ』
「そりゃどうも。ありがとうございます」
『ゼロ…お前の真の姿を教えてやる…真の敵もな…ククク、ファーッハハハッ!!』
レプリロイドの通信相手の狂笑が誰もいないコロニーの中に響き渡った。
21XX年。
レプリフォース大戦から数ヶ月、地球に平穏な時間が続いていた。
大戦の影響で被害のあったスペースコロニー群の修復も殆ど終わり、残りは月のラグランジュポイントに浮かぶ超巨大コロニー“ユーラシア”の工事のみ。
老朽化が進んでいたため、元々大規模修復の予定があったのだが…。
現在、エックスはハンターベースのトレーニングルームでシミュレーションをしていた。
『これより戦闘シミュレーションによる訓練を開始します。エックス、準備はいい?』
「ああ」
『今からフォースアーマーを転送するわ。プログラムは出来る限り修復したけれど前回のサードアーマーや今までレプリカアーマーと同様、完璧ではないの。性能は以前よりやや落ちるから気をつけて!!』
「了解した。ミッションを開始する」
エックスの体が光り輝き、蒼いアーマーが純白へと変わっていく。
このフォースアーマーはレプリフォース大戦で大破したフォースアーマーを元にエイリアが復元したレプリカアーマーだ。
確かにオリジナルと比べて不完全なところはあるが、実戦での使用は殆ど問題はない。
エックスは即座に復元したフォースアーマーの状態をチェックする。
ヘッドパーツ:特殊武器のエネルギー消費が無限ではなくなり、武器エネルギー消費量が通常の2/3に弱体化。
ボディパーツ:ダメージ軽減能力が2/3から1/2に向上してはいるが、ノヴァストライクの使用が出来なくなっている。
アームパーツ:ストックチャージが使用不可でプラズマチャージショットしか撃てなくなり、プラズマチャージショットは威力こそは変わらないが着弾点に発生するプラズマが1つしか発生しなくなっている。
フットパーツ:エアダッシュ、ホバリングが使用可能など、唯一変化していない。
恐らくフォースアーマー本来の姿であるアルティメットアーマーに変化する機能も失われているだろう。
しかしいくら弱体化したとはいえ、強力な強化アーマーであることに変わりはない。
「プラズマチャージショット!!」
エックスの放ったプラズマチャージショットがメカニロイド達を飲み込み瞬時に爆散させていく。
プラズマチャージショットで敵陣に穴を開けると怯んだメカニロイドを腰からもう手に馴染んだXブレードで斬り捨てた。
「アーマー…出力80%…バスター75%反応速度0.4/ms。命中率98%…」
「わあ…エックス。また強くなったね」
「ええ、エイリアさんが復元したフォースアーマーも問題なく作動しているわ」
「サードアーマーや今までの努力が実を結んだねエイリア!!」
「ええ」
ルインの言葉にエイリアも笑みを浮かべた。
フォースアーマーの基本性能が高いのもあるが、エイリアの努力があってこそ、ここまで復元出来たのだから。
「流石はゼロとルインと並ぶ最強のイレギュラーハンターの1人だね…と言いたいけど微妙なところかな?僕の予想ではこれよりもう少し上回るはずなんだが………プログラムを調整するべきかな…?」
ゲイトの予想ではもう少しフォースアーマー装着時のエックスの性能を上回るはずなのだが、プログラムのどこかに問題があるのだろうかと首を傾げた。
「ただの訓練ではこんな物よ。彼が真の力を発揮するのは誰かを守ろうとした時」
ずっとエックスの戦いを見守ってきたエイリアはエックスが本気を出すのは他者を守る時だというのを理解していた。
「ふうん…一定の条件が揃わなければ本気を出せないとはエックスも難儀だね…後でフォースアーマーのプログラムとエックスのDNAデータの適合率をチェックするから後でデータを僕にも回しておいてくれ。」
「ええ、分かったわ」
「ゲイトさん、ゼロをお願いします」
「勿論だよ」
ゲイトはトレーニングルームを後にすると、ゼロの待っているハンターの武器開発のラボに向かう。
ゼロの不完全なバスターの調整をしなければならないからだ。
「それにしても流石はエックスね。敵に対して的確なタイミングで攻撃を放っている。射撃の精密さと正確さは殆ど芸術の域だわ。復元したフォースアーマーもオリジナルと使い勝手が異なるのに完璧に使いこなしているし…本当に強くなったわ」
エックスの戦いぶりをモニターで見つめつつ、エイリアは思わず感嘆する。
同時に今までの臨時オペレーター時代のエックスのことを思い出して感慨に浸る。
「フォースアーマーとエックスの組み合わせに勝てる敵はまずいないだろうね…あ、エイリア。エックスがシャッターの前に」
「え?もう?早すぎるわよ…今日のトレーニングプログラムは自信作だったんだけど…はあ、また作り直しね…今度はゲイトと共同製作してみようかしら」
自信作のトレーニングプログラムをこうまで簡単に攻略されては少しばかり落ち込むエイリア。
ゲイトとの共同製作も視野に入れ始めたエイリアにルインの顔は引き攣った。
「ゲイトと共同製作したらクリア出来ない人が続出だよ…エイリア、そんなことよりも」
「ええ」
ルインに促されたエイリアはこのトレーニングプログラムのボスの準備を始めた。
「………」
エックスはシャッターの前にいた。
この奥にいるボスはハンターベースのホストコンピュータに蓄積された過去のイレギュラーをエミュレートしたものである事が多い。
『じゃあエックス。トレーニングの締め括りよ』
「ああ」
エックスがシャッターを潜ると、彼の眼前に現れたのは竜を象った真紅のボディを持つ格闘家姿のレプリロイドであった。
「…こいつはドラグーンか?」
『ええ、マグマード・ドラグーンをエミュレートしたわ。あなたとの相性が悪い敵かもしれないけれど、これで最後よ。頑張って』
「了解……」
エックスは前回の大戦でイレギュラーへと身を堕としたかつての仲間の姿を悲しげに見つめながら腕をバスターに変形させ、片手でブレードを構えた。
「波動拳!!波動拳!!波動拳!!」
ドラグーンの掌から放たれる火炎。
エックスはそれをホバリング、エアダッシュ、ダッシュを駆使しながらかわし、バスターをチャージする。
「(ドラグーンは格闘戦に特化したレプリロイドだ。迂闊に近寄ると痛い目に遭う)」
冷静に状況を判断することは、戦士には不可欠な要素だ。
数年前まではイレギュラーを撃つのも躊躇っていた半人前のひよっ子が、今は一流の戦士にまで成長していたことを証明している。
「(ドラグーンの動きが止まったところをプラズマチャージショットとチャージブレードで決めてやる!!)」
エネルギーチャージは完璧だ。
いつでもプラズマチャージショットとチャージブレードを繰り出せる状態を保つ。
しばらくして、相手は飛び道具での攻撃を中断した。
代わりに大きく口を開ける。
多分、炎を放つつもりなのだろうが、その一瞬の隙を、エックスは見逃さなかった。
相手に向かってバスターを突きつけ、プラズマチャージショットを繰り出した。
「プラズマチャージショット!!!」
バスターから放たれたプラズマチャージショットのエネルギーの奔流は凄まじく、直撃を受けたドラグーンは仰け反り、エックスはブレードを構えて突撃し、チャージブレードでドラグーンを両断した。
「やった!!」
「ドラグーン撃破」
「トレーニングプログラム、全てコンプリート!!お疲れ様でした!!」
モニターで様子を見ていたルインは喜び、エイリアは笑みを、アイリスはエックスを労う。
トレーニングを終えたエックスが戻ってくる。
「お疲れ様エックス…凄かったよ」
「凄いわエックス。相性が悪いドラグーンにダメージを負わずに勝つなんて」
戻ってきたエックスを迎えるルインとエイリア。
2人の労いに戦闘中の鋭い表情を普段の柔らかなものに戻してエックスも頷いた。
「ありがとう…でも、勝てたのはドラグーンの波動を操る力を再現出来ていなかったと言うのも大きかった」
エミュレートされたコピーとは言えドラグーンの力量は確かに凄まじかったが、いくらエイリアでもドラグーンの波動を操る能力まではエミュレート出来なかったらしく、攻撃は普通の体術と火炎のみ。
本物のドラグーンは波動の力を使いこなし、アルティメットアーマーと同等の力を発揮したOXアーマーのルインを圧倒する程の実力を持っていた。
それを言われたエイリアは表情を顰めた。
「し、仕方ないじゃない。波動は私達からすれば未知の力なのよ?」
「正直、エックスとドラグーンが何で波動が扱えるのか分からないところがあるからね」
ドラグーンに聞けば何か分かったかも知れないが、ドラグーン本人はイレギュラーとして処分されたために、真実は闇の中だ。
一方のゼロは部屋から持ってきた端末を使ってルナと個人的な通信会話をしていた。
『武器の修理は完了したよ。後少ししたら持っていくよ。』
「すまん、出来るだけ早く持ってきてくれれば助かる。1時間後に戦闘シミュレーションがあってな。出来るだけ万全の状態で挑みたい」
『OKOK、それじゃあ今からそっちに…』
言い切る前に、突如ベース内で警報が鳴り響く。
「っ!?何だ!?」
部屋から出て、通路に出ると凄まじい邪悪な気配を感じ、この邪悪な気配の持ち主にゼロは即座に目星を付けた。
「シグマか!!」
「ん?おい、ゼロ!!バスターの調整を終えてないだろう!!待つんだ!!」
バスターの調整を終えていないにも関わらずに外へ向かうゼロをゲイトが止めようとするが間に合わない。
「まずいな。彼のバスターはまだ調整が完了していない…。聞こえるかなエイリア、エックスの訓練を止めてくれ、ゼロが単独で出撃してしまった」
ゲイトはエイリアに通信を繋ぎ、エックス達の訓練を止めるように伝える。
『いや、大丈夫。訓練は既に終えた。しかしこの感じは…』
『シグマだよ。エイリア、今から転送室に向かうからエネルギー反応の位置に転送お願いね』
『分かったわ』
通信を終えるとゲイトは溜め息を吐いた。
「やれやれ、あんな不完全なバスターはさっさと取っ払って手持ち型の武器に変えればこんな心配しなくても済むのにね」
『まあ、そう言うなよ。変形型のバスターはゼロが長いこと使ってきたんだ。愛着があるんだよ愛着が…俺達技術者が長いこと使ってきた工具や機材と同じさ。って言うかやっぱり不完全なのかよあのバスターは…動力炉とバスターのチップの繋がりが安定してねえようだな』
「久しぶりに会ったけど、相変わらず見事な位に鋭い眼力だねルナ…時々僕は君が怖くなるよ」
『久しぶりだな、ゲイト。今度うちで何かパーツを買うか?』
「この事件が落ち着いたらね」
こうして5回目となるシグマとの戦いが始まろうとしている。
現場に急行したエックスはフォースアーマーを装着し、ルインも高機動アーマーのHXアーマーに換装し、ダブルセイバーを構えて突撃する。
「プラズマチャージショット!!」
「プラズマサイクロン!!」
プラズマチャージショットとプラズマサイクロンでメカニロイドを破壊する。
「感じるか?ルイン」
「うん。シグマだね…あの人の嫌らしい気配がするよ」
「シグマめ…今度は何が目的なんだ…」
拳を握り締めながら歯噛みするエックスにルインは目つきを鋭くして目の前のイレギュラーを睨み据えた。
「シグマ…今度こそ地獄に送ってあげるよ…」
両手のセイバーを握り締めながらルインは憎しみの篭った声を出しながらルインとエックスは疾風の如き速度で建設が進められている女神像へと突き進む。
途中で道を阻むメカニロイドは2人の連携の前では障害物にもならず、しばらくしてエックスとルインは女神像の足元へと辿り着いた。
だがいくら近辺を調べてみても女神像に逃げ込んだはずのシグマの姿どころかエネルギー反応さえ感じられない。
「ねえエイリア。本当にシグマはここに…?」
『ええ、少なくともシグマらしき反応が途絶えたのは、その女神像の座標地点よ。正確にはもっと上の方かしら』
今一度、通信を通じて確認を取るルインに対しエイリアも今ではベテランのオペレーターらしく即座に答えてくれた。
「そっか…結局シグマに上手く巻かれてしまったのかな。ありがとうエイリア。もう少し探索を続けてみて見付からなければ一旦ベースに帰投するよ」
「いや、俺達の前から逃れるつもりなら自分の逃走ルートをエイリアに捕捉されるようなヘマはしないはずだ…今までの奴の暗躍を考えれば…」
ルインの傍らでエックスが口を開く。
今までの事件でのシグマの誰にも気付かれなかった暗躍を思えばいくらエイリアのオペレーターとしての能力が優秀でもこんな簡単に捕捉されるなどおかしい。
『…そうね』
「うん」
今までの事件を思い返したことで2人もまたおかしいことに気付いたようだ。
「奴は何らかの意図があって俺達をこの場に誘い込んだんだ」
「…じゃあやっぱりシグマはこの上にいるの?」
「ああ、多分ね」
上を見上げると、未だに工事中と言う事もあって女神像の周囲には足場が組まれ頂上へは容易に行けそうだ。
『ちょっと待って2人共』
女神像の高い所に向かおうとしたエックスとルインをアイリスが制した。
『どうやら工事現場のガードシステムが不具合を起こしているようなの。不具合を起こしている制御部分の解析によればシグマウィルスに侵食されたガードシステムが誤作動しているわ』
「成る程、やはり奴は間違いなくこの先にいる。」
アイリスの言葉に確信を抱いたエックスは業者の組んだ足場用の壁面を駆け上がっていく。
そしてルインもすぐさまエックスの後を追うが、いきなり足場に仕掛けられたガードウォールがルイン目掛けて迫ってきたのだ。
「え!?」
ルインが上層に辿り着くのと同時に轟音を上げて対面壁へとぶつかるガードウォール。
「急ぐぞルイン!!ガードウォールに押し潰される前に最上層へ駆け上がるんだ!!」
「うん!!」
エックスに向かって頷くとルインはHXアーマーのエアダッシュを活かしながら一気に最上層に駆け上がるのだった。
そうやって2人は何とか最上層へと辿り着く事が出来たのだが、巨大な女神像の顔面部分を臨むその地点でさえもシグマの姿は何処にも無い。
「いない…?」
「気を抜くなルイン…奴はウィルスが本体だからな。奴がその姿を現している時は、目で見たりデータで捉えたり出来るものじゃない。奴の邪悪な気配を感じ取るんだ」
「分かった」
Xアーマーに換装したルインと背合わせになりながら神経を研ぎ澄ましてシグマの気配を探るエックス。
「(そうだ…奴は必ず近くに居る。常に俺達と共に奴は存在し続けてきた。寧ろ…俺達の存在が奴を…シグマを引き寄せているかのように…)」
「エックス…?」
険しい表情を浮かべるエックスにルインは心配そうな表情を浮かべる。
思わず表情に出てしまったのだろう。
エックスはルインを安心させるように微笑んだ。
「ごめん…大丈夫だよ。でもゼロはどこに…」
先に出撃したゼロは何処に…しばらくすると、ゼロが天井から落ちてきた。
「ゼロ!!」
「っ…ルインか…」
ルインが駆け寄ってゼロの状態を見ると酷い怪我であり、腕が切断され、歯を食いしばる姿が必死だった。
だが、苦痛の絶叫や呻きを断じて漏らさないところからゼロの強さが感じられた。
「…俺なら平気だ。バスターをやられて格好悪いけどな…それよりシグマは?シグマはどこだ!?」
「恐らくもうそろそろ現れるはずだ。ゼロ、君はここから離れるんだ。後は俺達に任せて欲しい」
「すまない、エックス、ルイン。後は任せた」
そう言ってゼロは姿を消した。
バスターのチャージをしながらしばらく気配の察知に集中するエックスとルイン。
「「そこだ!!」」
そして目を見開くと同時に女神像に向けてプラズマチャージショットとダブルチャージショットを放った。
それらは女神像に炸裂し、女神像を粉砕する。
表面の部分のみ…だが。
轟音と共に優美な女神像の下から現れたのはシグマの巨顔であった。
「クックククク…愚かなハンター共よ。貴様らの死を以って真のイレギュラーの姿を知らしめてくれるわ!!」
エックスとルインを見下すように睨みつけながら言い放つシグマ。
人型の姿では無い。
どちらかと言えばメカニロイドに近い新たなボディでシグマは浮遊しつつ、2人の方へと迫ってきた。
「プラズマチャージショット!!」
「ダブルチャージショット!!」
ブラズマチャージショットとダブルチャージショットがシグマに炸裂したが、シグマの頑強なボディには傷1つ付かない。
「愚かな!!受けよ!リグレットティア!!」
目から光弾が放たれ、それはエックスとルインに遅い掛かるが、ルインはZXアーマーに換装するとセイバーで光弾を掻き消す。
ルインは事前に武器にショットイレイザーを組み込んでいたのだ。
流石に世界征服の野望を何時までも捨て得ぬだけの事はあり、相変わらずそのパワーは圧倒的だ。
「エックス!!」
「ああ、流石にシグマは強いな。だけど…思った程のものじゃない」
「デッドストーム!!」
立ち上がる2人に対して無数の光弾を嵐のようにシグマが放ってくる。
しかし次の瞬間だった。
「十字手裏剣!!」
PXアーマーに換装したルインが投擲した大型手裏剣が光弾を薙ぎ払いながら、大きく開かれたシグマの口内目掛けて炸裂する。
対象に当たった手裏剣は高速回転し続け、シグマに追加ダメージを与える。
「ぐあああああ!?」
「今だよエックス!!」
「とどめだシグマ!!プラズマチャージショット!!」
フォースアーマーのアームパーツの特徴であるプラズマチャージショットは、それそのものが強大な威力を誇るのみならず、着弾点にプラズマを生じ、一定時間敵に追加ダメージを与え続ける特性を持つ。
口を閉じる暇もなくシグマはプラズマチャージショットをまともに受けた。
十字手裏剣とプラズマチャージショットのダメージに凄まじい轟音と爆炎が立ち上り爆発するシグマ。
「やったの…?」
最初のシグマの反乱から続く因縁に対し漸く訪れた決着だが、そんなはずはないと2人の脳内で激しく警鐘が鳴らされる。
元来史上最強のイレギュラーハンターと称され、これまで何度倒そうがその度にしぶとく甦り、彼らの前に立ち塞がり続けてきた仇敵である。
度重なる戦いでエックスやルインが腕を上げている事を差し引いても、それでもこの程度で終わるような相手ではないのだ。
次の瞬間に、爆炎の向こうに今までにない規模の大量のシグマウィルスが2人の感知器に察知されたのは。
「伏せろエックス!!ルイン!!」
ハンターベースに戻ったはずのゼロがエックスとルインを押し倒す。
「…まさか…」
シグマがこの場所にエックスとルインを誘い込んだのは、彼らを抹殺する為ではない。
「…奴に嵌められた…っ!!」
立ち込める煙を突き破って大量のシグマウィルスがその場を中心に広範囲に散っていく。
物理空間に具現化し飛翔していくものもあれば、ネットワークを通じてサイバースペースに潜り込んでいくものもある。
「…このままでは世界中のレプリロイド達に深刻な影響が…」
「早くどうにかしないと…」
「ん?」
ハンターベースから通信が来たので、エックス達は即座に応対する。
『…こえる?…こ…ら……ンタ…ベース』
3人の通信機からエイリアの声が聞こえてきた。
シグマウィルスの影響で通信障害でも起こっているのかノイズが酷く音声が乱れている。
『エックス、ルイン、ゼロ。応答して』
「こちらエックス。ルインもゼロもここにいる」
『そう。声を聞く限りどうやら無事のようね』
「何とかね。どうやら俺達はシグマウィルスの影響は受けないようだ」
『よかった…』
エックスの言葉にアイリスの安堵した声が聞こえた。
『流石にイレギュラーハンターの英雄達を前にしてはシグマウィルスと言えど、その精神をそう簡単に支配できないという所か…』
『精神とか何を非科学的なことを、彼らは何度もシグマと直接戦ったことで僕達よりシグマウィルスに耐性があるんだろうさ…若しくは何か特別な…うん、実に興味深いねえ。まあ、ともかくそこにいては危険であることに変わりはない。早く戻って来るんだ』
何処か自分を無理矢理納得させているかのようなシグナスの言葉やこんな時でさえペースを崩さないゲイトに苦笑するエックス達。
少ししてエックス達はハンターベースへと転送された。
世界規模のウィルス汚染と言う未曾有の危機。
しかしエックス達はまだ知らない。
これすらもまたシグマにとっては本来の計画のほんの前段階に過ぎないのだということを。
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