ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第96話:Paradise
連絡を受けたルナは目の前に突き出されたトリプルロッド、シールドブーメラン、バスターショットの状態に呆れていた。
「武器の修理を頼みたいんだが?」
「うひゃあ、こりゃあ随分と壊してくれたなあ」
呆れたように壊れた武器を見遣るルナ。
ハンターベースのメカニックであるダグラスに頼んで見たのだが、あまりにも高性能過ぎてダグラスの手には負えないようなので、造った本人に頼んだのだ。
「……正直ここまで見事に壊されると逆に清々しいな」
「直せるか?」
「出来るに決まってるだろ?ところで武器の調子はどうだった?使ってくれたあんたに聞きたいね」
「バスターとシールドの威力と使い勝手は悪くない。ロッドは最大まで伸びるのに僅かなタイムラグがあるからそこを狙われることがあったな」
「あーそっかー。改良しなきゃな~」
問題点があるなら改良しなければならない。
判明した問題点をそのままにするなど技術者として失格だ。
「分かったよ、何とか改良してみせるよ」
「頼む」
武器をルナに手渡し、修理代を差し出すとエックス達がやって来た。
「やあ、ルナ。久しぶりだね」
「おう、久しぶり…元気そうだな」
「あなたは誰?エックスとゼロの知り合い?」
初対面のルインは疑問符を浮かべている。
「彼女はルナ…お前も噂くらいなら聞いているはずだ。ハンターベースにジャンクパーツや武器を売りに来る…」
「あ、それなら私も知ってるよ。敵には危険第一、味方には安全第一がモットーの、ジャンク屋兼武器屋のルナ・アームズだよね」
「ふっ、そうだぜ」
「(いくつモットーがあるんだ?)」
エックスの記憶に間違いがなければ前回、エアフォースの戦艦で聞いたモットーは“依頼とあらば誰であろうと何処にでも”だったはずだ。
「まあ、出来るだけ早く仕上げてやるさ。楽しみにしてな」
それだけ言うとルナは颯爽と去っていった。
「ゼロ、今日はベースのみんなでケイン博士主催の海でのパーティーだよ?準備しないと」
「またか、宴会好きの大ボケ爺め」
悪態をつくゼロにエックスとルインは思わず苦笑した。
「仕方ないよ、まだ暑いしみんなも暑さで気が滅入っていたからケイン博士の心遣いだよ」
「どうだか、大方オペレーター達の水着姿が目当てなんじゃないのか?」
「まだ怒ってたんだ…」
少し前に似たようなことを行い、アイリス達は水着姿になったのだが、ケインと一部のハンターが鼻の下を伸ばしていたためにゼロに叩き斬られそうになったのは記憶に新しい。
「そう言えば今回はエイリアも来るんだよな…少し心配だな」
そのパーティーの時はエイリアは都合が悪くて行けなかったが、今回は来れるようなのだ。
ルインも当時はいたのだが、エックスが近くにいたことと、ルイン自身が特A級ハンターと言うこともあってそんな命知らずはいなかったが。
そしてパーティーは始まり、運良く海岸は誰もおらず、ハンター達が独占する形となった。
アーマーはハンターベースを離れる前に解除しており、全員が水着姿。
寄せる波に足を入れて涼を楽しんだり、水をかけあったりしていた。
「やっぱりいいね~こう言うの」
「あ、うん…」
隣に座ってジュースを飲む朱色のビキニの水着姿のルインを直視出来ず、エックスは顔を逸らしながら答えた。
因みにルインに邪な視線を寄越す輩は一睨みで怯ませ、後で減給を心に決めている。
「こう言うの初めてだけど楽しいわ」
「あ、エイリア……!?」
声に振り向いたエックスは思わず絶句してしまった。
エイリアの水着姿は初めて見たが、想像以上のスタイルの良さに思わず赤面してしまうくらいに破壊力抜群だ。
仕事では纏めていた髪を下ろし、腰にパレオを巻いた黄色のビキニを着ている。
「わあ、エイリア。その水着似合ってるよ。ねえ、エックス?」
「え?あ、うん…似合ってるよ…凄く」
「そ、そう?…ありがとうエックス」
照れ笑いを浮かべるエイリアに周囲の男性ハンター達は感動の涙を流していた。
「ああ、ルイン副隊長とエイリアさんの水着姿を拝めるなんて幸せ過ぎる…」
「2人共、美人でスタイル抜群だしなあ…」
「今までの俺達の幸の薄さはこの幸福のためにあったんだな…!!」
「今までの事件もこの幸福のためにあったと言うのなら受け入れられるぜ!!」
「アイリスさんも中々のレベルだぜ…」
「ゼロ隊長のために頑張ってみましたって感じの水着だもんな…」
「良いなあ、エックス隊長やゼロ隊長…」
「もう俺、機能停止してもいい…!!」
「いや、幸せ過ぎて小突かれただけで死にそう…!!」
「ほう?そうか、ならばお前達のお望み通り楽にしてやろうか?」
【ゼロ隊長、手伝います】
アイリスに邪な視線を向けたハンター達に静かに怒るゼロと女性ハンター達に引き摺られていく。
【でぇやあああああううううううっ!!!!】
向こう側で男性ハンター達の断末魔が響き渡った。
因みにとどめは落鳳波だったようだ。
エックスもエイリアとルインに邪な視線を向けたハンター達の更なる減給を決意した。
「こう言う暑い日にはアイスを食べて涼もうぞ!!」
メカニロイドに運ばせた大型冷凍庫からアイスを出して全員が口に運ぶ。
「やっぱりこの中にかき氷が入ったアイスは美味しいね」
「ええ、大昔からあるアイスらしいけど美味しいわね」
「私は苺味が好きですけどみんなは?」
「梨味!!」
「林檎かしら?」
「グレープフルーツ」
「ソーダかな」
[コーラ!!]
「それも美味しいよね!!」
アイリス→ルイン→エイリア→ゼロ→エックス→ソニアの順番で好きな味を言うと、ルインが同意する。
見事に好みがバラバラだが、それぞれの味を食べたことはあるようだ。
「ふっ、甘いね…このアイスの最も美味しい味はミートソース味だろう」
【ミートソース味!?】
ゲイトの好きな味に全員が驚愕した。
「え゙~?あれって伝説のナポリタン味の再来って言われるくらいの不味さで大不評だったじゃない…」
「正気か…?」
「ゲイト…流石に冗談が過ぎるわよ…」
「そう言えばこのアイスを作っている企業が今度新作のサザエフラペチーノ味を出すって…」
「正気か…その企業は…?前人未到=良い物ではないんだぞ…」
謎の味覚を作り出そうとしている企業に戦慄を覚えながらも取り敢えずパーティーは楽しく終わった。
そして、パーティーを終え、全員が寝静まっている深夜であった。
エイリアはフォースアーマーのレプリカを造るためにプログラムの解析と修復を行っていた。
「ふう……」
解析と修復の作業も良いところまで来たエイリアは溜め息を吐いた。
「やあ、お疲れエイリア。僕からの差し入れだよ」
砂糖とミルクを少し多目に入れたアイスコーヒーの入った紙コップを差し出すゲイトにエイリアも笑みを浮かべながら頂く。
「ありがとうゲイト」
「構わないさ、疲労回復ならケイン博士とドップラー博士の共同製作ドリンクが一番なんだけど…何故か君は嫌がるからね」
「い、嫌よ!!あんなの飲んだら今度こそ死んじゃうわ!!」
ケインとドップラーの共同製作ドリンクと聞いてエイリアの顔が青ざめる。
あれを飲んだら助かってもしばらくは味覚が機能停止を起こす。
「お子様舌だよね、で…何処まで進んだんだい?エックスの強化アーマーの復元は?」
「大体は終わったわ。とは言っても、解析出来ない部分と修復不能な部分があったからどうしてもオリジナルよりは劣るけれど、実戦での使用は殆ど問題ないはずよ」
「大したものだよエイリア。あの稀代の天才科学者であるトーマス・ライト博士の造った強化アーマーを復元するなんて」
「出来れば完璧な物をエックスに用意してあげたいんだけどね。ヘッドパーツは…オリジナルのように特殊武器エネルギー消費を皆無にすることが出来なくて申し訳程度の軽減。でも悪足掻きをしてチャージのエネルギー消費も軽減することに成功したわ。」
「ふむ、オリジナルは確か…チャージ攻撃の軽減は出来ないんだったね…使い勝手は寧ろ以前より向上してそうだ。」
オリジナルのヘッドパーツはチャージ攻撃を行うとすぐにエネルギー切れを起こすために特殊武器の使い勝手はこちらの方が向上してそうだ。
「フットパーツは他のパーツに比べて損傷は酷くなかったから完全に解析、修復出来たわ。ボディパーツは、ノヴァストライクの為のダメージをエネルギーに回す機構のプログラムが修復出来ないくらいに損傷していて…プログラムを完全に外して、歴代のアーマーのプログラムで空きを埋めることでボディパーツの防御力をオリジナルより向上することに成功したの。」
「ふむ」
「そしてこれが今一番悩んでいるところなの」
エイリアがキーを叩くとフォースアーマーのアームパーツが表示された。
フォースアーマーの最大の特徴と言えるプラズマチャージとストックチャージの2種類のアームパーツ。
「プラズマチャージとストックチャージのプログラムも損傷は酷かったけど…どちらかのプログラムを繋ぎ合わせることで何とか片方だけ修復することが出来るの。」
「成る程、これは悩むね…どちらも強力な分、尚更…因みに修復した際の性能はどうなるんだい?」
「プラズマチャージの場合はチャージショットの威力と着弾点に発生するプラズマの威力は変わらないけど、発生するプラズマが1つだけになるわ。ストックチャージの場合はチャージショットを4発撃てる点は変わらないけど、1発の威力はノーマル状態のエックスのチャージショットより低くなるわ」
「ならば、使い勝手の良い方を選択すべきだと僕は思うね。エックスは射撃型だから追撃は苦手なはずだ。追加装備である程度補えるとは言え、やはり一撃の威力を重視した方がいいはずだ」
「成る程ね…分かったわ。なら復元したフォースアーマーのアームパーツはプラズマチャージの方を修復するわね。ありがとうゲイト」
「どういたしまして」
しばらくしてようやくフォースアーマーのレプリカが完成するのであった。
このアーマーは今から約数ヶ月後に起こる未曾有の事態で大きな活躍を果たすことになるとは修復したエイリアは勿論、この場にいないエックス達も知る由もなかった。
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