戦国異伝供書

「だからな」
「それでよいですか」
「我等は」
「左様ですか」
「うむ、よい」
　それでというのだ。
「だからな」
「政の時はですな」
「我等は殿のお傍にいて」
「そこで殿をご覧になればよいですか」
「その様に頼む」
　幸村はまた十勇士達に話した。
「その時はな」
「そしてですな」
「他家のことを調べる時は」
「その時はですな」
「我等はですな」
「うむ、見に行ってもらう」　
　その他の家々をというのだ。
「頼むぞ」
「それでは」
「その時はです」
「我等もすぐに」
「動きます」
「そして敵の隅から隅まで調べてきます」
「頼むぞ、忍の者も多くいればな」
　優れた者達がというのだ。
「それでじゃ」
「大きな力になる」
「左様ですな」
「だからですな」
「我等もですな」
「武田家に必要ですな」
「不要である筈がない」
　それこそというのだった。
「お主達程の者達がな」
「ではそのお言葉に応えて」
「そしてです」
「そのうえで、です」
「働かせて頂きます」
「是非共」
「そうさせてもらいます」
「ではな」　
　幸村も応えた、そしてだった。
　幸村主従もまた政に励んだ、晴信はその彼等を観つつ山本に話した。
「源次郎の下におる者達じゃが」
「十勇士ですな」
「あの者達は皆忍の者であるな」
「左様です」
　山本は晴信にその通りだと答えた。
「そのことは」
「そうじゃな、ではじゃ」
「それではですか」
「あの者達に佐久や木曽を調べさせるか」
「そして小笠原家のこともですな」
「村上家についてもな」
　この家もというのだ。
「つまり信濃の全てをな」
「そうしてですな」
「それぞれの豪族達の隅から隅まで知ってじゃ」
　そしてというのだ。
「それからじゃ」
「ことを進めていきますな」
「敵を知ることじゃ」
「孫子にもありますな」
「そして己を知る」
「そうしてこそであるからこそ」
「源次郎の家臣達には働いてもらうか」
　即ち十勇士達にというのだ。