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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica37-A大隊壊奏曲~Counterblow~

 
前書き
以前のまえがきで、6、7月中に終わると言いました。
が、リアルでの事情がまたトンデモないことになり、守れそうにないです。
事件編は今年中に、エピソードⅤは来春中に終われば・・・いいな~。 

 
†††Sideアインハルト†††

大隊の一員となっていた“エグリゴリ”の1人の手によって、ヴィヴィオさんが拉致されてしまった。それだけでも私の感情はグチャグチャなのに、さらにアインスさんがアリシアさんを殴って気絶させたことで、もう限界を迎えそう。

「な、なにが・・・、一体なにが・・・起きて・・・」

アインスさんが「アインハルト」と私の名前を呼びながら歩み寄ってきました。どうしていいか判らず、でもこのまま呆けて良いとも思えず、勢いよく立ち上がって構えを取る。今は何を信じて言いのか判らないから・・・。

「警戒しなくて良い。これもルシル達オランジェ・ロドデンドロンの計画の内だ」

「ルシルさん達の・・・?」

アインスさんは4つある個室の内、未だに扉の閉まっている個室へと向かって、ノックを3回と打ちました。ギッと扉がゆっくりと開いていき、そこには信じられない光景があった。個室から出てきたのは金色の髪に紅と翠の虹彩異色の少女。

「ヴィヴィオさん・・・!?」

「えっと、はい、アインハルトさん」

私はフラリとヴィヴィオさんの元へと行き、彼女の頬に手を添えて幻ではないことを確認した。柔らかく、温かく、まさしく本物の・・・。

「本当に・・・ヴィヴィオさん・・・?」

「はい、本物ですよ、アインハルトさん」

私の手に自身の手を添えて微笑んで見せたヴィヴィオさん。ヴィヴィオさんが無事で安心したのか腰が抜けそうになったのを、「わわっ!? 大丈夫ですか!?」とヴィヴィオさんが支えてくれました。

「え、ええ、大丈夫で・・・、いえ、待ってください! エグリゴリは確かにヴィヴィオさんを連れて消えました!」

ヴィヴィオさんとアインスさんが少し俯き加減になり、私も気付いたことがあって辺りを見回す。一緒にお手洗いに入ったはずの「イスズ准将はいずこへ?」と聞いたと同時、頭の中で一気に組み上がる今回の拉致の真実。

「まさか・・・拉致されたのはイスズ准将なのですか・・・?」

「はい。正確にはイスズ准将の姿に変身していたルシルさんです」

「ヴィヴィオを大隊にわざと拉致され、プロミスリングで連中の本拠地を割り出す。それがお前たちに告げられた囮作戦の全容だが、それは本来の作戦を隠すための嘘だ」

「はい。実は――」

ヴィヴィオさんが教えてくれました。元よりヴィヴィオさんを拉致させるわけではなく、ヴィヴィオさんに変身したルシルさんを拉致させる作戦だったと。ですがその入れ替わりの機会が難しく、冬季休校明けは常にルシルさんがヴィヴィオさんの護衛に当たるつもりだったそうですが・・・。

「しかし昨日、ルシルとトリシュが大隊に拉致され、異世界にて殺害されそうになったという。だが大隊は2人の殺害に失敗。詳しい話は省くが、それはルシル達が大隊の正体を確たるものにする証拠となった一件となったらしい。その日の内に私と主はやてに連絡をくれたのだ。今日か明日、ミッドを離れるヴィヴィオの拉致や、口封じのためにオランジェ・ロドデンドロンへの襲撃があるはずだと」

ルシルさんはそのための準備を行ったそうです。その結果が今、私の目の前で起きた拉致。大隊は見事にルシルさん達の罠に嵌り、ヴィヴィオさんの姿に変身していたルシルさん、それにユニゾンしたままのアイリさんの2人を拉致してしまった。

「ヴィヴィオ達が指にはめているプロミスリングが発信機だというのを知っているのは、ルシル達オランジェ・ロドデンドロン、お前たちチームナカジマ、私と主はやてとなのは達、そしてハラオウン提督だけ」

「ルシルさんを拉致した人、エグリゴリの1人だそうですけど・・・」

ヴィヴィオさんが床に落ちているプロミスリングを拾い上げました。そして「どうして知ってるんでしょうか?」と私に向き直りました。考えられるのはやはり「内通者がいる・・・!」ということになります。

「ではアリシアさんが・・・!?」

「今日はずっとヴィヴィオの元へと何としても向かおうとしていたからな。怪しさを隠そうともしないのは、真っ直ぐな性格のアリシアらしいが。それに、エグリゴリ――フィヨルツェンがヴィヴィオに扮したルシルを個室から引き出したのと同時、彼女は用を足すことなく個室より飛び出し、デバイスを起動させた。申し合わせたかのように完璧なタイミングだった」

そう言ったアインスさんがアリシアさんを背負ったところで、通信を知らせるコール音が鳴った。アインスさんが「はい」と応じますと、『アインスか? 海上警備部にスクランブルや!』とはやてさんからそんなお話が。

『ミッド海上にて大隊の艦隊が出現したそうや! 現在、リュッチェンスや首都防衛隊が頑張ってくれてる! あと未確認やけど、シャルちゃんらオランジェ・ロドデンドロン隊は行方不明らしい』

大隊がシャルさん達を犯罪者扱いをして、これまでの犯罪者と同様に殺害することを公にしたうえ教会騎士団も、行方を晦ませているシャルさん達をこのまま出頭しなければ敵性と認め、撃破する対象にすると。

『おそらく、シャルちゃん達は今、艦隊がミサイルを放ってる方角に居ると思う。連絡がつかへんのはきっと、大隊構成員との戦闘中+妨害されてるからや。ミサイルの軌道も途中で消失するらしいし、転移か結界の所為やろうな』

「主はやて。ヴィヴィオに扮したルシルが、計画通り大隊に拉致されました」

『っ! そうか、ならこっちも遠慮なく仕掛けようか。アインス、今すぐ艦船ドックへ来て。たぶんやけどなのはちゃん達にも出撃要請が入るかもしれへんし・・・』

「・・・アリシアを大隊側の一員である疑いのもとに拘束しました」

アインスさんがそう報告しますと、はやてさんは少し俯き加減に『・・・そうか』残念そうに漏らしました。が、すぐに顔を上げて、『判った。あんま頼りたないけど、最強の戦力にヴィヴィオ達を託そうと思う』そう提案しました。

「・・・ですが彼女は受けてくれるでしょうか?」

『あの人のスケジュールはルシル君から聞いてる。今日は1日休暇らしいからな。本局に居る内は助けになってくれるはずや。連絡はこっちでしとくから、アインスはなのはちゃん達にヴィヴィオ達を預けた後、ヴォルフラムまで戻ってな』

「判りました。・・・ヴィヴィオ、お前たちをこれからリアンシェルトに預ける」

はやてさんとの通信が切れ、アインスさんがそう言いました。名前に聞き覚えがある。リアンシェルト・キオン・ヴァスィリーサ少将。先のプライソン戦役の際、ミッド全体を巨大なシールドを複数枚で覆って、宇宙より降り注ぐ隕石群を凍らせて防御するという、圧倒的な力を管理世界中に見せつけた方だ。そう、管理局のトップエース、次元世界最強の魔導師、と謳われるあの・・・。

「しかし、頼りたくないというのは・・・?」

「リアンシェルトもまた、エグリゴリなのだ。いつかはルシルの手によって救済されることになるだろうが、局員としての誇りを持っている現状、本局内での事件にはうるさい。護衛を任せれば、新たに大隊が拉致しに来ようが必ずお前たちを護るだろう」

「で、ですが、大隊には同じエグリゴリの・・・えっと、フィヨルツェン?が居るのですよね? もしまた、彼女が来た時、ヴィヴィオさんを引き渡すかもしれません・・・!」

オーディンさん達を殺害できるだけの強さと、世界丸ごと1つを覆えるような魔法を使える魔力量の多さを持つ“エグリゴリ”2人を相手となれば、いくらジークさん達が居ても勝てるはずがない。そんな私の心配にアインスさんは「問題ないだろう」と断言しました。

「奴は確かにエグリゴリではあるが、先ほども言ったように局員としての誇りを大事にしている。腹立たしいことにそこだけは信じられる。エグリゴリとして活動するのは、ルシルと交戦する時だけだ。フィヨルツェンと闘うことにはならないだろうが、局員としてヴィヴィオを護るだろう」

とのことらしいです。これ以上、私が何を言ってもどうにもならないことは確かなので、「判りました」頷いた。

†††Sideアインハルト⇒アイリ†††

マイスターの狙い通り大隊がヴィヴィオの拉致を強行してきた。驚いたのは拉致しに来たのがフィヨルツェンだったってこと。マイスターのことを知り尽くしてるはずの“エグリゴリ”ってこともあって、アイリもマイスターもすごい焦ったけど・・・。

(特にバレることなく転移スキルで拉致られたね・・・)

マイスターは今ヴィヴィオの姿に変身していて、フィヨルツェンの肩に担がれてる状態。自分の意思で意識を遮断してるマイスターに代わって、アイリがマイスターの体の支配権を得てる。本拠地と思しき場所に着いたら、アイリがマイスターの意識を起こす。意識を保っていると、どうしても体が条件反射とかで動いちゃうからね。

(事前に話してたとおり、一度で本拠地へ向かわずに何箇所か経由してるな~)

フィヨルツェンが発信機の役割を持つプロミスリングを外したのは確認してる。やっぱりチーム海鳴の専用回線を使った秘密会議は筒抜けだったわけだね。ま、それを前提に話してたわけだけど。

――トランスファーゲート――

マイスターの中から外界の様子を見る。何度目かの空間の歪みが発生して、フィヨルツェンはスッと歪みへと歩みを進める。視界が一瞬だけ閉じて、次の瞬間にはこれまでの荒野や平原、どっかのビルの屋上とか地下駐車場とかを経由しての・・・。

(今までの雰囲気と違う・・・)

そこは半球上のドーム。照明らしい照明は無いけど、直径20m近い床に大きく描かれたベルカ魔法陣が青白く光ってくれてるおかげで、何も見えないってことはない。そんなドームには女の人が1人、フィヨルツェンの帰りを待ってたかのように佇んでた。

(うわぁ、知ってるこの人。名前はえっと・・・シスター・トルーデ)

シャル達とも面識があったはず。そんなシスター・トルーデがフィヨルツェンに向かって「同志ヴィスタ、おかえりなさいませ」恭しく一礼した。フィヨルツェンのコードネームがヴィスタなんだね。どこの言語なんだろ。

「出迎えありがとう、同志テルコンタル。それにフィアツェーン」

(フィアツェーン?)

よく見れば、トルーデのドリルみたいな巻き毛に包まってる何かが・・・。アイリやアギトお姉ちゃん、リインのような小さな子供が居た。番号を名前とした小さな人。そのことから正体にすぐ行きついた。

(融合騎・・・! 一体誰が・・・!)

ベルカの融合騎を一から作れる技術持ちなんて指で数えられるほどしかいない。アイリが真っ先に思い浮かべたのは、イリュリア技術者の末裔だっていうミミルだ。仮にミミルが大隊側だとして、いつから? メリットは? あと何体作った?って疑問浮かんでくる。

「ヴィヴィオを技術室へ連れて行ってくださいますか?」

フィヨルツェンが肩に担いでいたマイスターをトルーデへと預けた。トルーデはマイスターを大事そうにお姫様抱っこして、「同志ヴィスタは?」って尋ねた。

「現在、オランジェ・ロドデンドロンと交戦中の同志たちの元へのゲートを繋いでください。わたくしも出撃し、ルシリオンを討ってきます」

(シャル達と大隊が戦ってる!?)

こっちはこっちでのんびりしてる暇なんてないみたいだね。フィヨルツェンの参戦はラッキーかもしれない。“エグリゴリ”はどうもマイスター以外の人間を殺すことだけはしないようだし。何せシュヴァリエルのような戦闘狂(アイリ個人の感想だけど)ですら、怪我は負わせても致命傷だけは絶対に負わせなかったもんね。

「判りました。いってらっしゃいませ」

――トランスファーゲート――

トルーデが転移スキルの持ち主かぁ。ここで倒せればいいんだけど、本物のアリサ達がどこでどうしているのか判らない以上はまだ仕掛けられない。フィヨルツェンが歪みの中へと消えていったのを確認したトルーデは歪みを消して、技術室とやらに向かって歩き出した。

「技術室。こちらテルコンタル。同志ヴィスタがヴィヴィオ陛下を連れてきました。これよりそちらに向かいます」

『同志ヴィスタが? 彼女は陛下の拉致には参加しない話だったのでは?・・・まぁ同志ヴィスタも最高幹部の1人でいらっしゃいますから問題ないとは思いますが。・・・判りました。同志メルに伝えて準備しておきます』

ヴィヴィオを拉致した理由を知れそうな予感。だからそろそろマイスターの意識を起こしておこうかな。準備って言うし、その前に身体検査とか行われるかもしれない。そうなったらアイリじゃどうしようも出来ないからね。

『マイスター、起きて。大隊の本拠地に着いたよ』

何度かマイスターの意識に呼び掛けると、『ああ、判った』意識が元に戻ったのを確認して、ここに来てからの事情を説明。マイスターも『フィヨルツェンには焦ったな』って思ってて、アイリは『ね~』同意した。

『ヴィヴィオの姿に変身しているとは言え俺だからな。気付かれるかと不安だったが・・・。俺を置いて、シャル達の元に居る俺の偽者を斃すという話からしてバレてはいないはず・・・』

そう言うマイスターだけど、心の中は不安でいっぱいだってことが判る。ユニゾンしてると感情の機微も判っちゃうから。

『とりあえず、このまま技術室とやらに連れて行ってもらおう』

それからトルーデは、見覚えのある教会関係者や指名手配犯などとすれ違いながら技術室に到着。両側にスライドするドアを抜けて、両壁にいくつものスライドドアがある直線通路に入る。通路の一番奥にあるスライドドアの向こうは、大小さまざまな機材が壁に沿って設けられたホールだった。

「いらっしゃ~い。待っていたわ~」

トルーデを出迎えた人物にマイスターとアイリは目を見開いた。それと同時に、あーやっぱり、っていう感情に至る。トルーデに「はい。同志メル」と呼ばれた女の人は、はやてやアインスと一緒にリインを開発してくれたイリュリア技術者の末裔・・・。

『『ミミル・・・!』』

ミミルの後ろにはウサギ耳を揺らす双子のフラメルとルルスも居る。トルーデが双子にマイスターを預けようとした。するとマイスターは『アリサ達がまだ見つかってないが、仕方ない』って嘆息。

「えいっ!」

「ぐふっ!?」

トルーデの顎に掌底を打って、彼女が大きく反り返った。当然マイスターを手放したことで自由の身に。マイスターは顎を押さえてフラつくトルーデに「てやっ!」追撃の突き蹴りを彼女の腹に打ち込んだ。

「ここはどこですか! それに・・・シスター・トルーデ!? どうして・・・!?」

教会の出入りをしてるヴィヴィオは、トルーデとも会ったことがあるはずだ。ここで彼女の名前を出したところでおかしくない。ただ、ミミル達と会ったことがあるのかどうかはちょっと判らないから、マイスターも名前を呼ばなかったね。

「我が手に携えしは確かなる幻想」

マイスターは誰にも聞こえないほどの小さな声で詠唱。そして足元に虹色に光り輝くベルカ魔法陣を展開した。

「「虹色の魔力光(カイゼル・ファルベ)・・・!」

「間違いなくヴィヴィオちゃんの魔力光ね~」

血液検査なんてされて気付かれる前に、ヴィヴィオしか放つことしか出来ない色の魔力を見せることで疑いを晴らさせる作戦だ。マイスターは魔力を放つと同時、それを隠れ蓑にするように「ステガノグラフィア」を発動した。

『この拠点を丸裸にしろ。最優先は捕らわれているアリサ達の居場所と救出方法だ。行け』

電子戦用術式ステガノグラフィアにそう指示したマイスターに、天使5人がそれぞれ返事してネットワークに潜って行った。

「げほっ、げほっ。ヴィヴィオさん、ここは我ら最後の大隊の本部ですよ」

「大隊の・・・! そんな気はしてましたけど・・・。どうしてわたしを拉致したんですか?」

マイスターはヴィヴィオを演じて、ステガノグラフィアからの報告が入るまでの時間稼ぎをするためにそう聞いた。ミミルは「そうね~」豊満なおっぱいを持ち上げるかのように腕を組んで、マイスターとの間にモニターを展開して、「アレに乗せるつもりなのよ、大隊は~」映ったものを指差した。

「聖王のゆりかご・・・!?」

『うそ! だってあの艦はもう宇宙の塵になったはず!』

どっかのドック内に鎮座してたのは、プライソン戦役時に起動した“聖王のゆりかご”とまったく同じ艦。でも「なんか小さい・・・?」マイスターの言うように一回りも二回りも小さい気がするね。

「ええ、そうよ~。およそ半分のサイズに変更して~、小回りを効きやすく、速度も4割り増しなのよ~」

「その言い方だと、あなたがゆりかごを造ったみたい・・・」

「万が一、オリジナルのゆりかごが使えなくなるような事態に陥った時のために造っておいたの~」

満足そうに笑顔を浮かべるミミルにマイスターは「でもわたしにはもう、聖王核は無いです!」そう言った。“ゆりかご”を動かすには必要な物は、すでにヴィヴィオから失われてる。拉致したところで意味は無い気がする。

「それをどうにかするのが私たち技術部の仕事なのよ~」

「ごめんなさい、ヴィヴィオさん。これもまたミッドの平和の為なの」

トルーデ、それにフラメルとルルスがマイスターを囲うように陣取ったその時、「おや? これはこれは、ヴィヴィオ聖王陛下ではないですか!」入り口とはまた別のスライドドアから渋い男の人の声が。マイスターがそっちを見ると、そこには紳士然とした服装の二足歩行ネコが居た。

『ジ○リ映画の男爵みたいだね』

『男爵の方が遥かにイケメンだがな』

『うん。それはアイリも思う』

身長は60cmほどで、おそらくネコ男爵も融合騎の1人。フラメルが「エルフテ」そう名前を呼んだ。ベルカ語で11って意味だし、融合騎で間違いないね。そんなエルフテがマイスターの元へと歩み寄ってきた。

「な、なんですか・・・?」

「いやいや。こうしてお会いすることが出来て、光栄の至り」

エルフテはマイスターの右手を取ってその甲にキスした。マイスターの胸に渦巻く感情は、本物のヴィヴィオにしたらぶっ殺す、だった。

『マスター! この施設の全体図を発見です(*゚▽゚)ノ』

『監視カメラをすべて管理下に治めたよ ( ̄∀ ̄)』

『最優先事項はココ(≧∇≦)』

『ついでに開放方法も調査済みなの~\(^o^)/』

『魔導装置で生命維持を行いつつ、幻術特化の融合騎が、対象の意識を幻術世界に閉じ込めて目を覚まさせないにしてるそうです。ですので倒しましょう∠(^-^)』

ステガノグラフィアが施設の全体マップと、その融合騎とやらの画像がマイスターの脳内と、アイリの居る空間に表示された。本拠地は地下7層構造で、技術室があるのは地下1階。で、アリサ達が居るのも技術室みたい。フロアのおよそ半分が技術室区画のようで、格納庫も含まれてるためかなり大きい。

『マイスター。このエルフテっていうのが、その融合騎のようだけど・・・どうする?』

『当然叩きのめす! ステガノグラフィア、解放準備!』

指示すると同時にマイスターがエルフテの手を握った。エルフテは「おお、握手ですね! 嬉しい限りです!」なんて言って、握手したマイスターの右手を上下に振った。

――纏い流るるは紫電の防具(シャンディプリア)――

マイスターは下級雷撃系防性術式を、ヴィヴィオの魔力光のままで発動。雷撃系魔術や電気変換魔法によくある雷撃を体に付加するっていう効果の攻防一体術式だ。魔術としての雷撃を直で流されたエルフテは、声を上げることなく真っ黒焦げになった。死んではいないと思うけど、あれだと何日かは行動不能だと思う。

「「「「っ!!」」」」

エルフテを潰したマイスターは、『ステガノグラフィア、今だやれ!』アリサ達を捕らえてる装置の解除を指示した。同時にこの中で一番厄介な転移スキル持ちのトルーデを、マイスターは次の標的にした。 
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