魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica36やられたらやり返す!~Trap of a Revenge~
前書き
忙しぃー! もう! 長男に生まれとうなかったわい!
†††Sideシグナム†††
東部アクアベール海に出現したとされる艦隊、その鹵獲任務を請け負った首都航空隊なのだが・・・。
「助けてくれー!」
「ちくしょー! 魔法が使えない!」
「第3小隊は墜落者のフォローに回れ!」
「少しでも距離を取れ! 弾幕の中に留まり続けるな!」
私たちが居るこの空域は今、悲鳴や怒声が木霊している。13隻からなる艦隊は確かにアクアベール海の沖を航行していた。これまでの交戦映像などからして大隊の艦隊であることは間違いなかった。ゆえに航行停止と武装解除と臨検申し込みをしたわけだが、タンカーのように甲板がだだっ広く何も設けられていない艦からミサイルが発射されたことで、我々は臨戦体勢に入った。
『シグナム一尉! 我が隊より4名が撃墜されました!』
部下から思念通話で報告を受ける。今現在、対艦隊戦に参加しているのは私の任されている2213航空隊。それに加え、他4つの航空隊だ。みなが熟練の魔導師だが、空母とミサイル艦の2隻以外の11隻の艦載砲よりハリネズミのように放たれる弾幕に、我々は苦戦を強いられていた。
「くっ、また・・・!」
ミサイル艦の甲板に設けられているおよそ80基のハッチのうち1基が開放され、ミサイル1発が遥か上空へと向かって飛んでいく。アレはおそらく「弾道ミサイル!」という名だったはずだ。迎撃しようにも弾幕の中を突っ切ってミサイルを追い翔けられるだけの速度を私は出せない。
「一体、どこへ向かって放たれているのだ・・・!」
この空域内での通信や思念通話は出来るのだが、地上本部や近隣の陸士隊舎への通信が遮断されてしまっている所為で、ミサイルの到達地点が判らない。ただ北部へ向かっていることだけは判るが、被害が出ているのか出ていないのか、それが判らないため不安で仕方がない。
「シグナム、どうすりゃいい!? このままじゃ全滅しちまう!」
「判ってはいるが・・・!」
戦力が圧倒的に足りなさ過ぎる。六課クラスでなければ、あの艦隊を攻略するのは無理だ。射砲撃も完璧に迎撃され、接近を試みようにも弾幕が厚すぎる。シールドやバリアを展開しても、艦載砲を防ぐことが出来なかった。
「致傷・致死性が無いとはいえ、さすがにこれ以上の撃墜者を出せば・・・」
プライソン戦役に投入された各兵器に搭載されていた兵装は、どれも実弾やエネルギー弾と非殺傷などという効果を有していなかった。しかし艦隊の兵装は、着弾したらバインドで拘束されるという効果を有していた。すずかのバインドバレットのようなものだ。ただ、性能が段違いではあるが・・・。
『現場にて交戦中の各航空隊員へ。こちら海上警備部所属リュッチェンス艦長、アルピナ・ハルトマン一等空佐です。合流が遅れて申し訳ありませんでした。これより本戦闘の指揮を執らせていただきます。現在の状況は確認しています。バインド弾を受けた隊員は、開放した後方ハッチに着艦してください』
リュッチェンスへの着艦は嬉しい話だった。海上であるため、バインドを受けた隊員たちを抱きかかえる隊員たちは、バインドが解けるまで飛び回らなくてはならなかった。私はバインドを受けている隊員を抱える部下たちに「リュッチェンスへ連れていけ!」と指示を出す。
『続いて、敵艦隊に生命反応がない場合、艦載砲での撃沈も止む無しと指令を受けました。こちらで生命反応の探査を行った結果、生命反応は探知できず。それゆえに現時刻を以って艦載砲での攻撃を開始します。加えて各航空隊員は、物理破壊設定での攻撃に移行してください』
組織に属する局員である以上、自由気ままに出来る事など限られてくる。今回の物理破壊設定への切り替えなども、上役からの許可が降りなければならない。しかしその不満もこれまでだ。
「アギト、ユニゾンだ! 一気に決めに掛かるぞ!」
「あ、おう!」
他の隊員たちのフォローに回っていたアギトを呼び戻し、「ユニゾン・イン!」を果たす。生粋の古代ベルカ騎士である私は遠距離・広範囲攻撃があまり得意ではない。しかしユニゾン状態でなら、アギトの補助によって広範囲攻撃も楽に撃てるようになる。
『リュッチェンスより各航空隊員へ。これより艦載砲を発射します。巻き込まれないよう注意して下さい』
ハルトマン一佐からの全体通信が切れ、我々が艦隊より大きく距離を取った直後、リュッチェンスより魔力砲が3発と発射された。その全てがミサイル艦へと向かって行く。
――ヘーラー――
「バリア!?」
『デケェ!!』
並列する空母とミサイル艦を護るための円の陣形を組んでいる艦、その全てを覆うかのように発生したのは半球上のバリア。艦載砲を完全に防ぎきったことで航空隊員たちよりどよめくが沸く。
『艦載砲の次弾発射までの間、航空隊は攻撃を続けてください。強力なバリアとて永久に使い続けるわけではないはずです。見たところ、バリア発生時は艦隊からの攻撃はないようです。協力してバリアを叩き割って差し上げましょう!』
とのことで、我々は一切の攻撃を止めた艦隊への攻撃を再開。バリア展開中はバインド弾による迎撃を行えないようだ。完全に沈黙している。
「アギト、最大火力で行くぞ!」
『おう! 炎熱加速!』
流れ星のように様々な魔力光に輝く射砲撃がバリアに着弾して行く中、私は左手に炎剣を作り出す。そして「こちら2213航空隊、シグナム。高火力斬撃を放つ。注意されたし」と全体通信で警告。
「『火龍・・・一閃!』」
効果範囲から隊員たちが離脱したのを確認。炎剣を伸張させながら振り下ろし、バリアの天辺に直撃させる。
「くぅ・・・!」
『かてぇ! 何だ、このバリア! 火龍一閃でもビクともしねぇって・・・!』
炎剣を持続させるのだが、それでもバリアを破壊できる兆しは見えない。さらに全隊員からの射砲撃が次々とバリアに着弾していくのだが一向に消えない。
『シグナム、火龍の維持が限界だ!』
「判った。爆発させる・・・!」
隊員たちが爆発に飲まれないほどの距離を開けているのを確認。固定されていた炎を解き、炎剣を爆破する。各所から「すげぇ!」歓声や、「うお!?」驚きの声が上がる。が、黒煙の中からはやはり、まったくの無傷なバリアが現れた。
「むぅ、硬いな・・・!」
『・・・ん? シグナム、空母見ろ!』
アギトに言われるままに空母へと目をやると、先程までは何も無かった甲板に「ガジェットⅡ型!?」のような航空機が何十機と列を成し、今まさにカタパルトから打ち出されようとしていた。
『へっ! ガジェットを離艦させることになるなら、バリアも解除されるはず!』
「ああ。その間に全力で叩きこむ!」
そう思っていたのだが、甲板より離艦したガジェットはバリアに弾かれることなく、音も無くスッと通過して来た。
†††Sideシグナム⇒アルテルミナス†††
最後の大隊の罠っぽい事にわざと引っ掛かって、ここミッド北部の廃棄都市区画へとやって来た私たちオランジェ・ロドデンドロンは、私たちを殺害するためだけに投入されたらしい主力との交戦に入った。
「獄火拳!」
私が相手をするのは、炎熱変換資質持ちと思われる拳闘を主とする騎士っぽい、ルインと名乗った男。コイツも変声機か変声魔法を使っているみたいで、声だけで個人を特定するのは難しい。
「よっと!」
ルインが打ち放ってきた拳状の火炎弾を、ビルの外壁を蹴って移動することで躱す。炎拳が着弾した壁は大きく抉られて、爆炎と爆風、そして破片を撒き散らす。どんな仕掛けか、この強烈なAMFの中でも一切魔力が減衰せずに、魔力攻撃を繰り出し続けてきてる。ま、そんなちゃちな単発射撃なんて、飛行魔法が使えない今でも十分に回避できるレベルだから問題ない。
(とはいっても騎士甲冑の維持や身体強化するだけで精一杯だし、防御系や遠距離系の魔法は使いづらい今、いろいろと面倒くさい)
ビルとビルの間を壁を蹴って跳び回りつつ、悠々と空を翔け回りながら私を狙い撃ちしてくるルインを睨み付ける。
(イリス達と共闘しようにも、私たちを隔離するように面倒な結界が張られてる)
半透明だから向こうの状況がまったく判らないということはない。それ以前に私とルインの居る空間の至る所にモニターが展開されていて、イリス達がそれぞれの仮面持ちと闘う様子が映し出されている。
「みんなの苦戦する様を見せつけて、私を焦らせようって? っざけんなコラぁぁぁぁッ!!」
このAMFの中で持続させないと意味がないような魔法はほぼ使えないと思っていい。そんな中で鬱陶しい存在がもう1つ。それはどこからともなく出現する弾道ミサイル。私が隔離されてる区画だけ出なく、イリス達の区画の方にも撃ちこまれていく。そして今来たミサイルは、私の居る区画に向かって落ちてきていた。
「紅狼駆!」
広さが十分にある屋上に陣取った私へと全身に炎を纏っての突進攻撃が、ミサイルと同じく空から突っ込んでくる。ミサイル着弾時の被害がどれだけのものかは判らないけど、結界内を爆炎で覆うようなものなら非常にまずい。こっちは耐え切れるだけの防御魔法が使えないし、騎士甲冑だけの防御力じゃ心もとない。
「(さらに言えば連中は転移スキルで逃げ切れる。だからこそこんなギリギリまで私たちを追い詰められる・・・!)ああもう! 本当に鬱陶しい!」
ルインの突進攻撃を一か八かの「フェアシュテルケン!」打撃強化魔法を発動して、ルインを真っ向から蹴っ飛ばしてやった。
「うごお!?」
「ぅぐ・・・!」
ルインを蹴っ飛ばした右足に酷い痛みと熱さが襲ってきた。直撃時は魔法効果は出ていたようだけど、次の瞬間には効果は消失していた。その反動ダメージが襲ったわけだ。でも蹲って痛がってる暇はない。アイツが再攻撃してくる前に、ミサイルの迎撃を行わないとゲームオーバーだ。火傷している右足に構わずグッと力を込め・・・
――ゲシュヴィント・フォーアシュトゥース――
「てやっ!」
高速移動魔法を発動して、ミサイルへと突っ込む。そしてスキルのエクスィステンツ・ツェアレーゲンを発動。触れた物を問答無用で分解する、凶悪だって恐れられるそのスキルによる打撃技、「ツェアラーゲン・シュラーク!」による拳打をミサイルの先端に打ち込んで、問答無用で分解させてやる。
「貰ったぁぁぁぁーーーーっ!!」
――轟爆花――
そんな声と一緒に私へ飛来するのは大きめな火炎弾6発。アリサのフリンジングボムを思い起こさせるもので、「どうせ炸裂するんでしょ?」というわけで、一番近い火炎弾から人差し指で突いて分解させる。3発目を分解させたところで、残り3発が一斉に爆発した。スキルを今度は全身を覆うように展開して、爆炎のすべてを私の肌に到達する前に分解する。
(管理局法に縛られない今、スキルを対人に使ったらダメだっていう制限はもうない。けど・・・)
チラリと見るのはルシルとアイリが映っているモニター。あっちも仮面持ちの猛攻をなんとか凌いでるけど、いつ敗れてもおかしくない、かなり危なっかしい状況だ。さすがにこのAMFの中、今のルシルとアイリじゃ負けてもおかしくない。ただ、問題はそのタイミングだ。あの2人からの合図が出るまでは私たちは負けてはダメで、むろん勝ってもダメだ。負けた連中が何を仕出かすか判らない。だからルインを速攻で倒すわけにもいかない。
(はぁ、もう・・・! 早く合図が欲しい!)
――炎纏人――
飛行魔法を発動していないから重力に従って落下する中、屋上に立つルインが「いい加減に墜ちたまえ!」と叫びながら全身に炎を纏わせた。遠距離系の攻撃は、私のスキルで無力化されるってことくらいはもう承知のはず。そんなアイツはその炎すべてを両手と両足に集束させていく。
「熱衝打・真式・・・!」
「へえ、そんな魔法も使えるんだ~」
いい考えだ。アレだけの火力と魔力を受け止められるだけのシールドは張れないし、ご丁寧に物理破壊設定での魔法だ。スキルがなければ私はもう何回も死んでいる。
「(熱の所為で屋上の床が溶け始めてる。アレは受けたらダメだな~)ホント、あんた勿体無いよ・・・!」
ルインという仮面持ちの正体はもう気付いてる。そっち方面で攻めて、ちょっと時間稼ぎをして見ようか。私が別の建物の屋上へと足が付くかどうかってところで、「燃え尽きよ!」左掌底を繰り出してきた。両足裏にスキル効果を付加して、床の素材をすべて分解。そのまま階下へと降りるつもりだけど、ルインの掌底が顔面直撃コースで迫ってきていた。
「(ああもう、暑いし熱い!)あらよ!」
両腕で顔面をガードしながら宙で上体逸らしをして掌底を避け、階下へと落下。スキル効果を持続発動させたまま1階まで降りようと考えていたけど、頭上からカッと強い光が降り注いできたから、今居る階層の床に大きな穴を開けて、私はその穴から階下に降りずに今居る階の奥へと向かう。
――火龍炮――
次の瞬間、恐ろしいほどの火力を有した砲撃が穴を通過して行った。数mと穴から離れていたのに「あっつい!」顔を背けるほどの熱波が襲ってきた。私は次に起こり得るだろう事を察知して、ガラスのはまっていない窓から外へと脱出。隣のビルの窓へと突っ込んだ直後に、さっきまで居たビル全体が炎に飲まれて、さらにドロドロに融け始めた。
「本気で殺しにかかってきてるな~」
融け続けるビルの屋上から飛び立つルインを視界に収める。アイツはすぐに私を視認して、私の居るところに突っ込んで来た。40m四方の一室でルインと改めて対峙する。
「なに? 何か言いに来た?」
「あなたの分解スキルは対人には使用できない以上、私に勝つ術は無いはず。ゆえに提案します。大隊に下るか、ここで死ぬか、どちらかを選んでください」
――炎纏人――
全身を炎で覆い、私に熱波と火の粉を浴びせかける。私は「はあ・・・」と大きく溜息を吐いて、ルインをビシッと指差す。
「あのさ、あなた・・・ガリホディンでしょ。ガリホディン・ダムマイアー」
「っ!!」
「気付かないとでも思った? 顔を隠そうが、声、魔法、技、魔力パターンを変えようが、あなたの身のこなしは変わらない。何度あなたと拳を交えたと思ってるわけ? 私は仮にも拳闘の元パラディン。拳闘騎士全員の身のこなしくらいは記憶してる。というか口調も変えなよ、詰めが甘々すぎて驚きだって」
トントンとこめかみを右人差し指で突いて見せる。するとルインは観念したのか、頭部を覆っていた炎だけを解除して、「さすがですね」仮面を外して目出し帽も脱いだ。
「ん。じゃあお話といこうか?」
「いいえ。もうあなたと、あなた方と話すことはありませんよ。投降か死か、その二択だけです。さぁ、選んでください」
――熱衝打・真式――
全身の炎が両手と両足に集束。私がこれまで見てきた炎熱魔法の中でも一、二を争う火力を有してる。脅しとしては効果的だ。私は足元に転がっている拳大の瓦礫をガリホディン目掛けて蹴っ飛ばす。
「猪口才な真似を・・・!」
飛んできた瓦礫を左手で鷲掴んで止めたガリホディンの隙を突き、私は窓から外へと一足飛びで脱出する。背後から「逃しませんよ!」という声と一緒に・・・
――獄火拳――
拳の形をした火炎弾が何発と飛んで来るけど、スキルを全身に付加して着弾前に分解させる。二車線道路を挟んだ向かいの廃屋の屋根へと向かって落下途中、ルシルとアイリの映るモニターへと目をやる。
(ルシルとアイリをユニゾンさせないための攻撃かぁ。向こうも向こうで考えてるな~)
ルシル単独でも魔導師としてなら強いけど、魔術師になって戦うならアイリとユニゾンしないといけない。そうしないと記憶消失を起こしやすくなるからだ。その辺りの調べはしているというわけだ。
「あ・・・」
ルシルに砲撃が直撃して、彼はビルの屋上に突っ込んだ。原型を留めているのは非殺傷設定だからだと思う。ルシルとアイリを相手にしている仮面持ちにも、ルシル殺害命令が下されているだろうに。ルシルとアイリに縁のある誰かかな・・・。屋上でぐったりしているルシルにアイリが飛びついて、追撃から身を賭して護ろうとしていた。とその時、私が、私たちが待ち望んでいた合図が。
(ルシルとアイリの消滅を確認!)
砲撃着弾とほぼ同時、まるで幻だったかのようにルシルとアイリが光となって消滅した。もうこれで手加減することなく、大隊を潰せることになったわけだ。
「何だ今のは?・・・ルシリオンとアイリが消えた・・・?」
ガリホディンもさっきの様子を視界の端に捉えていたようで、その不思議な光景に疑問を抱いた。
「どういうことか教えてあげる。やられたらやり返す。あなた達が散々利用してきた偽者。ならこっちも偽者を掴ませてやる、とね。ここまで言えば、私たちが仕掛けた罠がどういったものかが理解できるでしょ?」
「っ!」
ハッとするガリホディンへと私は突っ込み、両手の平にスキル効果を付加。
「おのれ・・・!」
――烈火泉――
足元に展開されたベルカ魔法陣から噴き出す炎の渦。ルシルのケルビエルと同種の攻防一体の魔法だ。私はソレに構わず両手を突っ込んで炎を分解。渦の中には全身を覆っていた炎を今まさに右手だけに集束していたガリホディンが居た。
「私が、最強の拳闘騎士なのだぁぁぁぁーーーーーッ!」
――熱衝打・真式――
「だったらこんな姑息な状況無しで真っ向から挑んだうえで・・・すぅ・・・私に勝てって話なの!」
――エクスィステンツ・ツェアレーゲン――
繰り出されるガリホディンの右拳を左手で受け止めて、炎を分解すると同時にスキルを解除。間髪入れずに「シュトゥースヴェレ!」と、防御魔法や防護服を貫通して体内に衝撃を打ち込む一撃を放つ。
「ごぶっ!?」
「てや!」
――ゲヴァルト・ツム・アインシュトルツ――
ガリホディンの右肩に踵落としを打ち込んで、彼を顔面から床に打ち付ける。同時にバウンドして跳ねた顎を爪先で蹴り上げて、宙に浮いたところで・・・
「ほいよ!」
――ゾイレ・フェアクナルト――
旋回して遠心力を加えた裏拳を背中に打ち込んだ。空に吹っ飛んだガリホディンから視線を逸らすことなく、「オクスタン・・・」クラウチングスタートの姿勢を取る。
「ズィーガァァァァーーーーーッ!!」
床を蹴って一直線にガリホディンの元へ向かい、本来はデバイス破壊の初撃を彼の顔面に打ち込み、鼻の骨やら前歯やらを折る。続けて2発目を腹に打ち込んだ。彼は直下のビルの屋上に叩き付けられて、そのまま1階まで床をぶち抜いて行った。
「死んでても恨まないでよ? それだけの事をあなた達は仕出かしたんだからさ」
とりあえず、戦闘不能になっているかを確認するためにガリホディンの元へ。彼が開けた穴を降りて1階へ到着。大の字でぶっ倒れているのを確認して、ゲシッと軽く蹴っ飛ばす。
「おっと」
ガリホディンがすくっと立ち上がった。結構全治1年レベルの加減で攻撃を加えたんだけど、ここまでタフだったっけ。というか「髪と瞳の色が・・・!」変わっていることに気付いた。ユニゾンの同調率が良かった所為かユニゾン中、彼の髪の色に変化も無かったから今ようやく気付けた。
「あー、なるほど。道理で魔力パターンが違うわけだ。・・・融合騎とユニゾンしていたなんて・・・!」
「アリサ・バニングスって子もそうだったけど、ワタシとロードが全力を出す前に、ロードを倒すんだから嫌になっちゃう」
「ふ~ん。お前がアリサを拉致った犯人というわけか」
胸の内が怒りで渦巻く。私は構えを取って、「ガリホディンから引っぺがした後、お仕置きしてあげる」と笑って見せた。
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