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人徳?いいえモフ徳です。

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三十八匹目

「アイテムボックス?」

僕とクーちゃんの魔法の勉強にメリーちゃんとシャクティが参加しはじめてしばらくたった。

季節はもう秋も終盤。

「うむ。お主らならおそらく使えよう」

アイテムボックスというのは無属性魔法で、簡単に言えばゲームなどの道具袋やストレージだ。

広さは魔力に依存するらしい。

なお……上級魔法に分類される。

「玉藻様、アイテムボックス…は、上級…ですよ?」

「うむ。メリーの言うとおりじゃが、まぁ、シラヌイがどうにかするじゃろ」

丸投げかい。

「ではシラヌイ、こっちにこい」

お婆様に呼ばれる。

僕が教わって、それを噛み砕いてから三人に教える形だ。

「ではアイテムボックスのやり方じゃ」

とお婆様が説明を始めた。

まず指先に魔力を集める。

次に空間を切り裂くイメージと共に指をスライドさせる。

空間の裂け目ができるのでそこにアイテムを入れる。

念じれば裂け目は消える。

アイテムを出す時は同じように裂け目を作る。

というのが手順だ。

うん…雑。

「さぁやってみよ」

無茶振りですねお婆様。

刀印を結んで魔力を込め、振る。

振る。

振る……。

「むぅ……」

できる気がしねぇ……。

「あー…やっぱりまだ早かったかのぅ?」

「ちょっと練習します」

お婆様がクーちゃん達にアイテムボックスを教えてる横で試行錯誤を繰り返す。

空間を裂くイメージをより明確にする。

ビシュッ!

「ぁ……」

思い切り指を振ると、指先から魔力刃が飛んで畳を切り裂いた。

「あー……ごめんなさいお婆様」

「よいよい。気にするな」

アプローチが間違ってるのだろうか…。

空間…そう空間。

お婆様の話し方では、既にある別の空間に干渉し穴を開けてそこをアイテムボックスにしている。

既にある空間。

そこに繋がらない。

ならば空間を創ればいい。

目を瞑る。

虚空に球を想像する。

明確に想像する。

魔力を込めて、手を伸ばす。

真っ直ぐに。

想像した球と手の間には壁一枚。

球が接する面に、手で触れるイメージ。

手を、僅かにつき出す。

パリン、と音がして目を開ける。

「できた」

ガラスが割れたように空間に穴が開いていた。

「これがアイテムボックスか…」

懐からディアマンタイトナイフを出して、入れてみる。

【構成素材:炭素100%】

【状態 共有結合結晶】

【硬度━━━━】

【透明度━━━━】

【重量━━━━━━】

そんな感じの大量の情報が頭に流れ込んできた。

「うぁっ……!?」

思わず声が出てしまった。

「どうしたのじゃシラヌイ?」

「い、いえなんでもありません」

試しにポーションを入れると、全ての素材と分量の情報が流れ込んできた。

「お婆様ー。アイテムボックスに入れた物の情報が頭に流れ込んできたのですが」

「何を言うとるんじゃお主は? そんな訳無いじゃろ」

あ、これ失敗ですかね。

「どれどれ…」

お婆様が俺のアイテムボックスに手を翳す。

「ん?」

お婆様が顔をしかめる。

「シラヌイよ。どういう手順をつこうた?」

「えーとですね」

お婆様にさっきの手順を説明する。

「おいシラヌイよ」

「はいお婆様」

「この異空間、お主の精神空間じゃぞ」

精神空間? なにそれ?

「つまりこの空間はお主の想像の中にある空間という訳じゃ」

「え? これアイテムボックスじゃないんですか?」

「アイテムボックスではないのぅ」

「そうですか…」

アイテムボックスではないのか…。

「でも効果は同じですよね?」

「おそらくな…」

ならいいのでは?

「じゃが情報が多い物じゃとお主が持たぬ」

「気をつけます」

「うむ」

お婆様によってアストラルポーチと名付けられたこの魔法を三人に教えた。

全員使えるようにはなったが、はっきり言って不評だ。

収納時の情報量が多いと頭痛が起こるのだ。

でも、物の鑑定には役立つ。

鑑定魔法以上の精度だ。

「まぁ、使えるならよかろう」

お婆様のこの一言が結論なのだった。








結局アストラルポーチの要領で全員アイテムボックスを使えるようになった。

めでたしめでたし。 
 

 
後書き
この話は後の布石です。 
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