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ポケットモンスター〜翠の少年の物語〜

作者:V・B
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第二話

 
前書き
どうも、単純に一週間に書く量が倍になってる事に昨日気付いたV・Bです。無理になったら、なんか考えます。 

 


「…………」

 翌日、いつもよりあまり寝れなかった僕は、重い瞼を擦って無理矢理起きると、父さんから、

「ミツル、今日の昼からジムに行ってみなさい。センリさんが待ってるはずだから、お願いしてみるといい」

 と言われたので、家の中でソワソワそながら本を読んだりして時間を潰し、昼ご飯をいつもよりほんの少しだけ多めに食べて、意気揚々とジムの前までやってきた。朝起きて父さんから話を聞いてからのこの間は、今までの中で一番長い五時間だった。
 
「…………うぅ」

 しかし、今ここでジムのドア眺めているこの時間も、まあまあ長く感じる。
 ドアを叩こうと手を伸ばしては引っ込め、伸ばしては引っ込め、何だかんだでずっと扉の前でウロウロしていた。
 ろくな友達の一人もいない位人見知りな僕は、知らない場所に入って行くのに、かなり怖気付いてしまう。

「…………はぁ」

 なんとも情けない自分に嫌気が差して、一人ため息をつく。でも、これが僕。
 臆病で、身体が弱くて、自信が持てない。今だって、自分の長年の夢だったポケモントレーナーになれるかもしれないってのに、この有り様。
 しかし、このままではいけない、今度こそと思い、意を決して扉に手をかける。

「あ、あのう……ごめんください……」

 僕は自分に出来る精一杯の勇気を出して、扉を開く。


 ─トウカジム─

 
 ジムの中に入って目に飛び込んできたのは、床一面に敷かれた畳だった。寝転がると気持ちよさそう、と一瞬思ったが、すぐにその畳が、所々ボロボロだったり、逆に綺麗になっていることに気づく。
 ジムの内装といえば、各々のジムリーダーが扱うポケモンのタイプをイメージしたものにしている。しかし、パッと見では、これと言った特徴は見えない。
 しかし、このジムのジムリーダーがセンリさんと言うだけで、この内装には納得がいってしまう。
 特徴が無いのが特徴と言われるノーマルタイプ。それを自在に使いこなす、世界有数のノーマルタイプの使い手。

「……ん、挑戦者か?すまない、今挑戦は受け付けてないんだ」

 それが、トウカジムジムリーダー、センリさん。
 この街で、僕が家族以外で唯一尊敬している人だ……見た目はちょっと怖いけど。
 センリさんは脚立に登って、入り口からよく見える高いところに、『日進月歩』と達筆で書かれた額縁を掛けようとしていた。

「えっと……あの……ちょ、挑戦じゃなくて……僕、ミツルっていうんですけど……」

 そんな人と初めて相対した僕は、かなりしどろもどろになりながらも、なんとか答えていた。

「……あぁ!君がミツル君か!話は聞いてるよ」

 センリさんはそう言うと、脚立から降りてきて、僕の前まですたすたとやってきた。近くで見ると、僕よりずっと背も高く、やはり見た目は怖かった。サングラスを掛けたら、良くドラマとかで見る黒い服の人に見えそうだった。

「初めまして、私の名前はセンリ。この街のジムリーダーをさせてもらってる」

 しかし、息子くらいの年齢の僕に丁寧に挨拶して、握手を求めて右手を差し出すセンリさんは、見た目からは想像ができないほど誠実さに溢れていた。

「あ……えっと、ミツルです。今日はよろしくお願いします……」

 ハキハキとしたセンリさんとは裏腹に、僕は少し縮こまりながらセンリさんに習って右手を差し出し、握手を交わす。ゴツゴツとした、大きな手だった。

「さてと……確か、シダケタウンに行くのにポケモンを持っておきたいって話だったかな?」
「は、はい……僕、あんまり身体が強くなくて……それで、環境の良いシダケタウンに行こうって話になりまして、でも、一人で行くのも寂しいので……という訳で」

 そんなセンリさんに対して、オドオドとしてしまう僕。

「それでな……本来であれば初心者用のポケモンを与えるべきなのだが……今手元には居ないんだ」
「……へ?」

 少しだけ申し訳なさそうにするセンリさんに、少しだけ嫌な予感がしてきた。貰えない、なんてことになってしまったらどうしようか。

「ただ、貸すことの出来るポケモンはいる。だから、これから草むらに実際に行って捕まえてもらおうと思う」

 センリさんは、実にいい笑顔だった。僕は、内心ほっとしていた。危惧していたことにはならなくてよかった。

「そうですか……と言うことは、草むらに居るポケモンならどんなポケモンでも良いってことですか?」
「あぁ。一応、モンスターボールは五個あげよう」

 センリさんはそう言うと、懐から小さい状態のモンスターボールを五個、僕に手渡してくれた。赤と白の二色のツルツルした丸いボールだ。これでポケモンを捕まえることが出来るのだから不思議だ。

「あ……ありがとうございます!」

 僕はお礼を言うと、モンスターボールをポケットの中に仕舞った。

「さて……本当ならジムリーダーである私が着いて言って指導するべきなのだが……実はこの後すぐにホウエンリーグで会議があってな……」
「……へ?」

 中々に気分が高揚してきていた僕だったが、センリさんのその一言を聞いて、再び嫌な予感がしてきた。しかし、先程とは違って、今度はかなりハッキリした嫌な予感だった。

「これからここに私の息子が来るんだ。あいつに教えてもらうといい」

 センリさんは、少しだけ申し訳なさそうな顔をしながら、中々とんでもないことを言ってきた。

「え……っと、センリさんの息子さん、ですか?」
「ああ。名前はユウキ。君の二つ上だよ」

 センリさん、僕はそんなことを聞いてる訳では無いんですよ、と言いたくなったところをぐっと抑える。
 正直な話、僕には同年代の友達なんてものはいない。むしろ軽く虐められてるぐらいだ。理由としては、外で遊ばない上に性格。
 そんなだから、僕自身も同年代の子供にそこそこの苦手意識を持っている。

「あんまり友達のいない奴だったからな……仲良くしてくれると有り難い」
「あ……そ、そうですか…………」

 嫌な予感が倍増してく。
 最早会話が無くなる予感しかしない。
 だけど、一人で捕まえに行く、なんて言う無謀な挑戦はしない、と言うかするべきじゃないのは、周知の事実。多分、センリさんの息子さんなら、その辺りは大丈夫……な、はず、で、あって欲しい。
 僕がそんな淡い期待をしている、そんな時だった。
 ガチャリ、という音とともに両開きの扉が開く。






 

「うーい、親父ー、来たぜー……って、誰?」








 これが、僕の後の親友にして最大のライバルとなる、ユウキ君との出会いだった。

  
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。この作品、主人公のキャラが木曾の方と全く違うので、実はかなり試行錯誤しております。ルビサファ及びORASの攻略本見ながらがんばります。

それでは、また次回。 
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