ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第74話:Iris
イレイズ事件を鎮圧させたエックス達は研修終了日となり、レプリフォースに戻らなければならなくなったアイリスと別れを交わしていた。
「ありがとう。君のおかげで事件を早期解決することが出来たよ。」
「そ、そんな…私はただオペレートをしただけで、戦ったのはエックスやルイン達じゃない…」
礼を言うエックスにアイリスは謙遜するように言う。
「違うよアイリス。確かに戦場で戦うのは私達だけど、君の力があったからこそ、安心して戦えたんだよ。オペレーターのサポートなしじゃあ私達はまともに戦えないしね」
「そうだな。大分協力してもらったしな。だがイレギュラーハンターでの初仕事がこんなになってしまって…悪いことしたな。レプリフォースにいるカーネルに怒られるな、きっと。“妹になんてことするんだ”ってな…。」
「カーネル?でも、レプリフォースに戻っても今回の経験は役に立つはずだよ。」
「確かにね。アイリス、レプリフォースに戻ってもしっかりやるんだよ?」
「ええ、エックス、ゼロ、ルイン…本当にありがとう…お世話になりました」
こうしてアイリスは自分の所属するレプリフォースへと戻っていった。
イレイズ事件からしばらくしてアイリスの初の正式任務があったが、イレイズ事件での経験を活かして、アイリスは手際よくサポートをしていく。
「これで任務は完了だ。サポートご苦労、アイリス」
通信機から上官の声が聞こえると、アイリスは安堵の息を漏らした。
「そうですか、皆さんが無事で何よりです」
アイリスの返事を聞いてから、上官は更に続けた。
「見事なオペレートだったぞ、アイリス。初任務とは思えない、見事な手際だった。流石はあのイレイズ事件を解決へと導いた者の1人だ」
「そんな……。現場が上手く動くのは上官の指揮があってこそですし、イレイズ事件はエックス隊長達が…」
「そんなに謙遜しなくてもいいぞ、君が優秀なのはレプリフォースとイレギュラーハンターでも周知の事実だからな。データ解析やナビゲートで疲れたろう?今日はもうゆっくり休んでいいぞ」
「あ、は……はいっ!!ありがとうございます!!お疲れ様でした!!」
アイリスは通信が切れたのを確認すると、大きく溜め息を吐き、こうしてアイリスのレプリフォース正式就任後の初任務は、滞りなく終了した。
正式な隊員の証であるベレー帽。
アイリスはカーネルと同じように最初からレプリフォースに入隊することに決まっていたが、彼女自身はそれはもっと後のことでもいいと思っていたし、周りもきっと彼女と同じ考えだったのだろう。
元々カーネル同様、製作が頓挫したレプリロイドの片割れであったし。
しかし、イレイズ事件で事態は一変する。
レプリロイドを動かすDNAプログラムが消失し、多くのレプリロイドが機能停止したこの奇怪な事件が起きた当時、アイリスは研修生としてハンターベースに勤務していた。
この事件の調査をエックスとゼロ、ルインが担当することになり、何故かアイリスは3人のオペレーターに任命された。
そして見事に事件を解決し、アイリスはこの功績を称えられ、あっという間にアイリスは正式オペレーターとなった。
と言っても、ここ数ヶ月軍隊であるレプリフォースが出動するようなとりわけ大きな事件も無かったため、正式任務自体はかなり遅れてしまったのだが。
「あの事件はゼロ達が頑張ったから解決したんだけどな……」
事件解決後、直ぐにレプリフォースに連れ戻されてしまったアイリスはあれ以来、3人とは全く会っていない。
噂によれば、エックス達は上層部から労いの言葉を受けただけらしい。
自分はレプリフォースの就任や新しいアーマーを授かったというのに。
まあ本人達は全く気にしてはいないらしいが…。
「何だか自分だけ得した気分だわ…」
自分は安全な場所でオペレートをしていただけだというのに最大の功労者である彼らは労いの言葉だけ、何だか罪悪感が沸いて来た。
部屋に戻る最中、聞き覚えのある話し声が聞こえてきた。
「嫌だわ…レプリロイドが幻聴なんて……」
「何が幻聴?」
「ルイン!?どうしてここに!?」
目を見開きながらルインの方を見遣るアイリス。
何で彼女がレプリフォースに?
「私だけじゃないよ。エックスやゼロも一緒だよ」
確かにルインの後ろを見遣ればエックスとゼロもいた。
「どうしてもお前に言っておきたいことがあったからな。だからここに来たんだ」
「え?」
「レプリフォース正式就任、おめでとうアイリス」
「え?……え……え……?」
慌てふためくアイリスに、ルインはあくまでマイペースに続けた。
「本当はもっと早くに言ってやりたかったんだけど、仕事が終わんなくて遅れちゃった。ごめん」
「そっ、そんな、全然気にしないで……!!お祝いしてくれただけでも嬉しいから……」
謝罪する親友に両手を振ってアイリスは返した。
「それからこれはアイリスの就任祝いだ。受け取れ」
ゼロからぶっきらぼうにアイリスに小さな箱が差し出された。
「え?いいの?」
「勿論だよ。君のために買ったんだ。特にゼロやルインなんか必死に考えたんだよ?」
「余計なことを言うなエックス」
苦虫を潰したような表情を浮かべるゼロにエックスは笑みを浮かべた。
アイリスはリボンを解き、包装紙を丁寧に外して、白い蓋を開ける。
中には、ロケットペンダントが入っており、チャームを開くとエックス、ルイン、ゼロ、アイリスの写真が入っていた。
「これ…」
「そう、あの時の写真。プレゼントは動く時に邪魔にならないようにロケットペンダントにしてみました。」
満面の笑顔で言うルインにアイリスも笑みを浮かべる。
「ありがとう…こんな素敵なプレゼントを……」
「気にしなくていいよ」
「私達も散々助けられたしね。ね?ゼロ」
「ああ…アイリス。あの事件は、きっと俺達だけでは解決出来なかっただろう。お前が居てくれたからこそ、解決出来たんだ。お前はいいオペレーターだ。遠慮することない。自信を持て、お前なら大丈夫だ」
いつも寡黙なゼロが、ここぞとばかりに一気に言葉を並べた。
「(元気づけて……くれてるのよね……)」
ゼロの真っ直ぐな言葉に、アイリスは心が軽くなったような気がした。
「ありがとう、ゼロ。私、頑張るわね」
「ああ」
そして2人で微笑みあった。
「よし、今日はアイリスのお祝いにご飯を食べに行こうか!!」
「ああ、それもいいな。近くに店があったからそこで食べよう」
「行くぞアイリス」
「ええ」
4人は並んで廊下を歩く。
彼らの絆は簡単に消えたりなんかしない。
エックスとゼロは仲良く会話しながら歩くルインとアイリスを見遣りながら足を進めた。
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