ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第63話:Rebirth
VAVAとの死闘で大破したルインの魂は不思議な空間を漂っていた。
あの戦いで受けたダメージによってボディだけではなく魂の損傷も激しく、ダメージを癒すためにルインの意識は眠ったままである。
「起きろーーーっ!!!!」
「ふにゃあ!?」
しかし、その眠りは横から飛んできた現実の世界なら確実に近所迷惑クラスの怒声によって終わりを告げた。
隣にはかつて自分をこの世界に転生させた女神と。
「女神殿、ルインはまだ回復していないのですぞ…?少し乱暴では?」
完全に回復していないルインを強引に叩き起こした女神に流石のライト博士も呆れ顔だ。
「め、女神様!?それにライト博士まで…何でここにいるの!?」
女神だけならまだしも何故ライト博士がいるのかさっぱり分からず、ルインは混乱してしまう。
どうやらこの空間では前世の記憶は復活するらしい。
「そりゃあ、この世界の重要人物だし、君のことを知ってくれている人がいれば色々とやりやすいでしょ?ライト博士は現時点では亡くなっているから、絶好の相手だと思わない?」
「な、成る程…」
確かにライト博士は100年前の人間で既に故人だから協力を得られれば心強い。
「でも、私はVAVAとの戦いで死んじゃいましたし」
「壊れたボディは私とライト博士が直すから全然問題なしだよ。これから滅茶苦茶に苦労するであろうルインちゃんにプレゼントがあったりする」
「プレゼント…ですか?」
「ふふふ…おいで、電子の妖精ちゃん!!」
女神がパチンと指を鳴らすと、現れたのはロックマンゼロ4に登場するサイバーエルフの幼体である。
「サイバーエルフだ!!しかも赤ちゃん!!可愛い…」
[ミ…ミミ…]
体を擦り寄せてくるサイバーエルフの可愛らしい姿にルインの動力炉があった部分が跳ね上がる。
「この子の性能は基本的にロックマンゼロ4のサイバーエルフと同じ。エネルゲン水晶や食べ物をあげれば育つよ。ただエネルギーを使い果たすと赤ちゃんに戻っちゃうから気をつけてね。」
「はい」
「ルイン、この子の名前はどうするかね?」
ルインの腕にいるサイバーエルフを優しく見つめながらライト博士が尋ねてくる。
「えと…名前かあ……」
[ミ?]
「う~ん。簡単には決められないし…向こうでエックス達と再会したら一緒に決めます!!ところで私が死んでからどれだけ経ちましたか?」
「あ、完璧な女神である私ともあろうものがすっかり忘れていたよ。ただいま、ドップラー博士の反乱の真っ最中で、エックス君とゼロ君がヴァジュリーラFFとマンダレーラBBの超濃いコンビに負けて、今はクリスマス☆エグゼキューション中」
「は?クリスマス…?」
女神の説明に疑問符を浮かべるルイン。
それを見て、ライト博士は頭を抱えそうになる。
「女神殿、もう少し真面目に説明して頂けませんかな…?ドップラーと呼ばれるレプリロイドが造り出した戦闘型レプリロイドのナイトメアポリスのヴァジュリーラFFとマンダレーラBBにエックスとゼロが敗れ、今から約10時間後にエックス達が処刑されてしまうのじゃ」
「な、何ですって!?エックス達が負けて処刑される!?」
「私達が君の元に来たのはそういう訳なの、君の魂はまだ完全に回復仕切っていないけど、このままだと2人が死んでしまう。病み上がりで回復仕切っていない君を戦場に送り返すのは心苦しいんだけどね…」
女神の言葉にルインは力強い目で女神を見つめながら口を開く。
「全然へっちゃらです。エックス達は私が死んだ後も滅茶苦茶頑張ったんですよ?私だって頑張らないとエックス達に申し訳ないです」
「ルイン…ありがとう…エックスを…私の息子を頼んだよ…」
「任せて下さい!!」
「そうそう、ルインちゃんにもう1つプレゼントがあるんだよ」
女神はルインに手を翳すと、ルインの体が蒼い光に包まれる。
「これは…?」
「病み上がりの君を送り出す訳だし…せめてこれくらいはね。新しいアーマーを与えるよ。エックス君の力を持つアーマー…Xアーマーをね」
光が消えるとルインはまるでエックスを彷彿とさせる蒼いアーマーを纏っていた。
「Xアーマー…ですか」
「基本的な運用法はZXアーマーと変わらないよ、でも武器はXバスターのみ、このアーマーの最大の特徴はダブルチャージ!!フルチャージショットを二発放てるようになるの、エックス君が使っていたセカンドアーマーのアームパーツの欠点である地面では接地していないと発射出来ないのを解消した優れもの!!最後のアーマーのOXアーマーはお楽しみってことで」
「そ、そうですか…」
「では、ルイン。今は一刻を争う。急ごう」
「はい!!」
ルインはライト博士と共に現実の世界に向かい、残された女神は現実の世界を見守りながら呟いた。
「それにしても意外だね、まさか漫画版要素が此処まで濃く出るなんて…まあ、ルインちゃんがいる時点でどうなるか分かんないしね…どうか、この世界に生きる子供達に幸多からんことを…」
普段のおちゃらけた雰囲気は消え、祈るように呟く彼女は正に女神であった。
しばらくして、ルインのメンテナンスベッドの隣に青い光が現れた。
「わしが女神殿の力で現世にいられるのは僅かな間だけじゃ…ルイン、目覚めるのじゃ…」
ライト博士から放たれた光がルインを包み込み、内部の機構を変えていく。
すう、と感じる重力と、体の隅々まで染み渡る感覚。
外界の情報が津波のように押し寄せる。
自分は戻ってきた……かつて生きていた時は何事もなく見逃していたそれらも、今の自分には処理しきれないほどの量に感じられる。
視覚
聴覚
触覚
味覚
痛覚
全てがはっきりとし始める。
ルインの瞳に光が宿り、ゆっくりと起き始める。
体を動かすのは本当に久しぶりで魂がまだ癒えていないためか、体が重く、そして関節が所々ぎこちなさを感じる。
現世に戻ったことで徐々に抜け落ちていく前世の記憶。
前世の記憶の大半が抜け落ちたことでルインはようやくライトの方を見遣る。
「体の調子は微妙だけど…そうは言ってられないよね。ありがとうございますライト博士。」
自身の体を修復してくれたライト博士に礼を言うと、ライト博士も微笑んだ後、表情を引き締めた。
「君の仕組みを女神殿から聞いていたから出来たことじゃ…ルイン、エックスのことを頼む。」
「任せて下さい、エックスは私の大事な人だから絶対に助けます。」
ルインは幼体のサイバーエルフを連れて部屋から飛び出し、まずはケインの元に向かおうとするが…。
「え?何…これ?」
研究所のモニタールームの前には何故か重傷のレプリロイド…タイガード達がいた。
「ルイン!?お前さん…目覚めたのか…?」
今まで眠っていたルインの状態を誰よりも知っていたケインだが、今はそれどころではない。
「ある人に直してもらったんです!!それよりも彼らは…」
「おお、そうじゃった…」
ケインがルインからタイガード達に向き直ると、ナマズロスがケインの拘束を解いた。
「Dr…こ…これを…受け止…」
「「これは…」」
バッファリオがふらつきながらも差し出した物にケインとルインは目を見開いた。
「エックスの…パワーアップ用、パーツ…データ…だ」
「俺達も…持ってるぜぇ…」
バッファリオに続いてマサイダー達もエックスのパワーアップパーツのデータを差し出した。
「何処でこれを…そんなにボロボロになって…」
データをケインに差し出したタイガード達はダメージによって吐血しながら崩れ落ちた。
「大丈夫か?お主ら…確か…古巣へ行ったのじゃ…」
そこまで言ってケインは気付く。
タイガード達がボロボロになっている理由に。
「お主ら…元同士としてではなく…反逆者として戻ったのか……エックスにそのデータを渡すため……敵の真っ只中に戻ったのか…未来への…希望の……ために……今、直してやるぞい!!ルイン、病み上がりですまんが手伝っ…」
『ぐわぁ!!』
「ん!?」
「この声は…まさかホーネック!?」
ルインがモニターを見遣ると、時間稼ぎをしていたホーネックが攻撃を受けていた。
『来るなよ!俺が時間を稼ぐ!!安心して直してもらえ!!』
「ホーネックっ!無理じゃ…って、ルイン!お主、何処へ行くんじゃ!?」
モニタールームを出ようとしているルインに気付いて呼び止めるケイン。
「決まってるじゃありませんか、イレギュラーハンターとしてちょっとイレギュラーのお掃除しに行きます。」
「む、無理じゃ!!病み上がりの上に調子が悪そうではないか…またお主が死んだら…」
「もう簡単には死にませんよ。それに私はイレギュラーハンターですから」
ルインの目に宿る決意の光にケインは押し黙り、ルインはHXアーマーに換装するのと同時に飛び出した。
飛び出したルインはダブルセイバーをチャージし、交互に振るった。
「ダブルプラズマサイクロン!!」
2つの電磁竜巻がメカニロイドを引き寄せ、吸い込まれたメカニロイドを瞬く間に斬り刻んでいく。
「ルイン!?」
「久しぶりだね、ホーネック。後は私に任せて!!」
ホーネックを強引に下がらせて、ルインは久しぶりの戦闘を開始するのであった。
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