徒然草
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86部分:八十六.惟継中納言
八十六.惟継中納言
八十六.惟継中納言
惟継中納言殿は自然をよくわかっておられる実に多彩な歌人でありました。その中納言殿が経典を読むばかりの仏門の修行をする為に三井寺の寺法師であった僧正円伊殿と共に住んでおられた時のことです。それは文保年間のことでありましてこの頃にこの三井寺は延暦寺と仲が悪くその僧兵達に火をつけられて焼け落ちてしまったのですが中納言殿は僧正殿に寺を焼かれてしまっていたく気落ちされている僧正殿に対して三井寺の僧正であられた貴方のことを寺法師と呼んでおりましたがお寺が焼け落ちてしまったのでこれからはただの法師と呼びましょうと言ったそうであります。これはとても気の利いた慰め方であります。
風流を解していればこうした慰め方もできるのであります。何かを知っていればそれは何処かで生きるものであります。だからこそ知識は重要なのであります。そしてその中でも風流はとりわけここぞという時に生きるものです。中納言殿は風流をわかっておられる方だったのでこうした慰め方ができました。これがわかっていなければこうした慰め方はできないでしょう。風流はまことにいいものであります。わかっていればそれだけここぞという時に出てくれます。これは何も風流に限ったことではありませんがそれでもです。このことでは僧正殿もかなり慰められたことでしょう。このことを思ってもやはり中納言殿が風流を解されていたということはいいことでした。
惟継中納言 完
2009・8・8
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