徒然草

八十．人ごとに

八十．人ごとに
　誰でもそうですが自分とは縁がなさそうな話に首を突っ込みたくなる傾向があるようです。お坊さんがお侍のようなことをしたり弓の引き方も知らない武士がさも仏門に通じているような顔をして連歌をしたり音楽を嗜んだりします。そういうことは怠けている自分の本来の仕事よりも一層馬鹿にされることでしょう。
　お坊さんや神主に限ったことではなく政治家や公卿の方といった上の方々まで取り憑かれたように戦を好む人が多いです。しかし例え歴戦であろうともその勇気を称える人はいないでしょう。何故なら幸運が重なり敵を次々と倒している時は勇者という言葉さえ出て来ません。武器を使い果たし、弓がなくなろうとも最後まで降参することなく気持ちよく死んだ後にはじめてそういった言葉が貰えるのです。生きている人はそういった武を誇るものではありません。戦とは人のやるべきことではありません。鷲や獅子のようなものがやることです。武術の後継者でもない限り好き好んでやっても意味がありません。そう』考える次第であります。武なぞ誇ってもそこには何もありはしないのです。これもまたわかっている人は実に少なく嘆かわしいことであります。そのようなものを誇ったとしても本当に何にもなりはしないというのにです。


人ごとに　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　２００９・８・２