ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第55話:Return
ゼロ達はナイトメアポリスと戦っていた。
バッファリオ達はワームによる強化が無くなったことで弱体化していたが、それでも彼らは持てる力で必死に抗う。
そしてそんな中、エックスは夢の中で偽りの平和を噛み締めていた。
「エックス」
「ん?君は…ルイン?」
「こんなところで寝てないで散歩しようよ。こんなに良い天気なんだからさ」
優しく微笑んで見下ろしてくるルインが手を差し出すとエックスはその手を取って立ち上がり、一緒に歩き出した。
「ふふふ」
「そんなに走ると危ないよ」
「だって嬉しいんだもん。エックス達はちゃんと約束を守ってくれた。こんなに平和で優しい世界を創ってくれたんだから」
無邪気に笑うルインにエックスは微笑みながら周囲を見渡す。
「俺もこの平和が好きだよ」
「そっか…でもこれは何?」
冷たい声にエックスが前を向くと、穏やかな光景から一変して荒れ果てた光景が広がる。
「な…っ!?これは一体…?」
「これは…エックスに待ち受ける未来だよ」
一方、現実の世界ではバッファリオが冷凍ビームでマンダレーラBBの右腕を凍結させる。
「これで片手はもう使えまい!!」
「何故、手が使えぬ?」
力を込めるだけでバッファリオの氷は容易く砕かれてしまう。
「ば…馬鹿な…!?」
驚愕するバッファリオはマンダレーラBBの張り手で吹き飛ばされる。
「ぐっ」
「チィッ!!小賢しい!!」
そしてヴァジュリーラFFのビームサーベルをタイガードはビームクローで何とか受け止めるものの、蹴り飛ばされる。
「おめえにゃ、借りがあったなーっ!!」
奇襲をかけるホーネックだが、ヴァジュリーラFFに直前に気付かれる。
「役立たずがっ!!」
即座にサーベルでホーネックの左肩を斬り落とす。
「くあ…っ!!」
「ホーネック!!(くそ…ナイトメアポリス…予想以上だ…)」
ゼロ達は傷付いても立ち上がり、戦い続ける。
後ろには守るべきものがいるからだ。
そして夢の中ではエックスとルインが見つめあっていた。
「この荒れ果てた世界は君が生きる世界。」
「ここが俺の生きる世界?なら、あの理想郷は?」
「あれは戦いの果てに君が築いた世界。でも君はあの世界にはいられない。君も私も…理由は私達の手が血で穢れ過ぎてしまったから」
「俺達の手が穢れてる…!?」
ルインの言葉に目を見開くエックスだが、ルインは構わずに言葉を続ける。
「だって私達は今まで沢山のレプリロイドを倒してきた。彼らはもうあの理想郷には行けない。だから奪った私達もあそこには行けない。私達が住めるのはこの荒れ果てた世界。そして私達は鬼となって生き続けなければならない…でも怖がらなくて良いの。私が君の傍にいるよ。私がずっと君の傍に…さあ、行こう…私が君を守ってあげるから…」
「俺は…あそこへは戻れない…俺の進むべき道は修羅の道…身も心も修羅に…鬼になるだけ…」
「大丈夫だよエックス…怖がらないで…私は君の味方…に…?」
エックスにバスターを向けられるのと同時にルインの体に風穴が開いた。
「エックス…何を…!?」
「それがお前の手だったのか…甘い愛を見せて心に出来た隙に付け込む…卑怯この上ないぞ!!」
「…………」
体を貫かれたルインはふらつきながら険しい表情でエックスを睨む。
「確かに俺は修羅の道を歩んでいる。しかし俺は鬼にはならない。俺の大事な仲間が俺の心を支えてくれる!!例え一緒に戦えなくても本物のルインも俺の心を支えてくれる。だから俺は絶対に…鬼にはならない!!」
「……クククッ、流石だなエックス。わざと寄生されることでこちらの手の内を暴くとはな」
ルインの姿をしたものが、冷酷な笑みを浮かべて本当の姿を見せ始めた。
「そうか、貴様が…貴様が裏についていたのか…シグマーーーッ!!!」
セカンドアーマーを装着し、チャージショットをシグマに直撃させる。
それは現実の世界にも反映され、建物からチャージショットが壁を貫いて飛び出した。
それを見たホーネック達は戦いの最中であることを忘れて固まる。
「ククク…」
「ふはははは…」
突如笑い出すヴァジュリーラFFとマンダレーラBBだが、ホーネック達の視線は吹き飛ばされた建物から目を離せない。
「その目…貴様らにも分かっているはずだがな…」
「お主達の英雄は“ワーム”に取り憑かれ、暴走した挙げ句に…」
「「自滅した!!!」」
その言葉にゼロは鼻で笑う。
「フンッ、電子頭脳も虫だからそんな寝惚けたことしか言えないのか?分かるんだよ…あんな粗悪チップ如きでは抑え切れない。地獄を見て来たことで叩き上げられたあいつの心はな!!」
そして姿を現したエックスは既にバスターのチャージを終えており、何時でもチャージショットを撃てる状態である。
「俺は…鬼にはならない!例え修羅の道に身を落とすことになってもだ!!」
渾身のチャージショットが放たれ、そのままヴァジュリーラFFに向かっていく。
「お前程度の攻撃が通用するとでも…いや…このパワーは…?」
尋常ではないエネルギーを感知したヴァジュリーラFFは危機感を抱いて盾を構えるものの、エックスのチャージショットは盾ごとヴァジュリーラFFの左腕を粉砕した。
「な…っ(これがエックスの真の“力”か…)」
「帰ってドップラーに伝えろ。例えお前の後ろに誰がいても関係ない!!貴様らの悪事は根刮ぎ叩き潰すとな!!」
「うむ、伝えておこう」
ヴァジュリーラFFを支えながらマンダレーラBBは頷いた。
「やいやい!逃げようってのか!?」
「どう解釈しても構わんよ。我らはドップラー様に確実な勝利を捧げる為に戦っている。0.1%でも確実性が失われるのなら新たなる強化を以て任務を遂行するだけ」
転送の光に包まれ、ヴァジュリーラFFとマンダレーラBBはハンターベースから去ろうとする。
「てめえ!!逃げんなあっ!!」
飛び掛かろうとするホーネックをエックスは手で制する。
「良いんだよ…今の状態で深追いするわけにはいかない…ゼロ…大丈夫か?」
「この程度のダメージなら問題ない。全く、無茶しやがって」
どうにかナイトメアポリスの襲撃を凌いだエックス達は喜びを分かち合う。
「二度と鬼には戻らねえだと?眠てえことを言いやがるぜ。俺が引き戻してやるさ…お前を鬼にな…」
そんなエックス達の姿を冷たい目で見ている者がいることに気付かずに。
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