ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第42話:Destiny
ギリギリまで隠していた切り札によってカウンターハンターから勝利を手にしたのをシグマはモニターで見ていた。
「…かつて、この世界を二分する2人の優秀な科学者がいた。1人はその頭脳を平和のために使い、1人は己の欲のために用いた。奇しくも2人は最後に互いの最高を自負するロボットを造り上げ…それぞれ何処かへと封印された…出来ることなら最高同士の戦いを見てみたいものだ」
シグマの呟きが玉座の間に響き渡る。
そして場所はコロシアムに戻り、残る相手はゼロとシグマのみとなり、機能停止をしていないサーゲスの方に向かおうとした。
「サーゲス、俺の勝ちだ。シグマとゼロの居場所を教えてもらうぞ」
「お主の勝ち…くくくっ…くかか…ひひひ…」
「ん?」
突如笑いだしたサーゲスにエックスは表情を顰めるが、サーゲスは狂ったように笑う。
「ヒャーハヒヒヒヒッ!!」
「何が可笑しい?こんな状況で笑うなんて気でも狂ったか?」
「くくくっ…笑わずにはおられんわい!!わしらを倒したくらいで勝利を確信するとはな!!この勝負はわしの勝ちじゃ~っ!!」
「何だと!?」
「これがわしの切り札じゃ!!」
そう言ってエックスに見せたのは何かのスイッチ。
「このスイッチを押せば宇宙にあるキラー衛星から一斉に世界各国への攻撃が行われるのじゃ!!」
「止めろ!!」
スイッチを押そうとするサーゲスを止めようとするエックスだが、それよりも速く動いた存在がいた。
セイバーによる斬撃がサーゲスのスイッチを弾き飛ばして、そのスイッチを踏み砕く。
「数に驕り…戦いの術を怠り、その挙げ句潔さまで失ったのか?みっともないぜ。そうは思わないか?英雄さん」
「………」
スイッチを踏み砕いたのはゼロであり、ゼロはエックスに振り返って尋ねるものの、エックスはただ無言でゼロを睨み付けるだけだった。
「やれやれ…嫌われてるな」
セイバーをバックパックに戻すと、サーゲスがゼロに向かって喚き始める。
「今なら無礼は許してやる!!早くエックスを倒すんじゃ!!」
「安心しろ、必ず倒してやるさ。それを貴様は…」
エックスを指差すと左腕をバスターに変形させるとチャージを始める。
「ゼ…ゼロッ、何のつもりだっ!!」
「アジール達とあの世で見てるんだな!!」
躊躇することなくサーゲスに向けて放たれるチャージショット。
「きっ…貴様ーっ!!その“力”を与えた恩を忘れたかーっ!!」
そしてチャージショットはサーゲスに直撃し、跡形もなく粉砕した。
「悪いな…覚えていない」
笑みすら浮かべるゼロにエックスは拳を握り締めた。
「(仲間を倒した…ゼロが…)」
「エックス…俺は元々貴様の仲間だったらしいが、今の俺にはそんな記憶はない。あるのは貴様を倒すと言う“使命”だけだ。下手な策など一切使わずに力で貴様を捩じ伏せる。しかし、貴様が戦わずに背を向けると言うならば…躊躇わず…斬る!!」
鋭い眼光でエックスを射抜くゼロの姿に、エックスはその姿が自分の知るゼロと被り、エックスにも覚悟を決めさせた。
「分かってるさ、ゼロ。君が望むのなら俺は戦うよ!!君をシグマの呪縛から救えないのなら…俺は君を倒すことで君の魂を…誇りを救う!!俺の全身全霊を以て!!」
両腕のエネルギーがチャージされていき、フルチャージ状態となり、ZXセイバーも何時でも使える状態だ。
「…結構だ!!」
エックスの言葉に不敵の笑みを浮かべてチャージを終えたバスターを構える。
「その痛々しい姿に引導を渡してやろう。今すぐにな!!」
「うおおおおおっ!!!」
同時に放たれるチャージショット。
2人のチャージショットの威力は互角のようで拮抗状態が続く。
「(ダブルチャージでケリを着けてやる!!)」
ダブルチャージショットは一撃の破壊力はファーストアーマーのスパイラルクラッシュバスターに劣るが、チャージショットを2回連続で放てるために初撃を防いでも二撃目で敵に痛打を与えることが出来る。
「喰らえーっ!!」
放たれる2発目のチャージショットがゼロに向かっていく。
「ダブルチャージか!だが、エックス!!ダブルチャージはお前の専売特許じゃないんだぜ!!」
ゼロのバスターも2発目のチャージショットを放ち、エックスのチャージショットと激突する。
「ゼロもダブルチャージを!?」
「その通り…と言いたい所だが、それも不正解だ!!俺には第3の武器があるんだぜ!!これが俺のダブルチャージウェーブだ!!」
セイバーを抜いてエックスに向かって衝撃波を放つ。
「くっ!!」
エックスも咄嗟にセイバーを抜いて衝撃波を受け止める。
「ほう、そいつは確かルインの武器だったな。近接武装のセイバーと遠距離武装のバスター…武装の差はないようだ…面白くなってきたなエックス!!」
ダブルチャージウェーブはエックスにあまり有効ではないと悟ったゼロは今度はショットによる連射で攻めてくる。
「バブルスプラッシュ!!」
チャージバブルスプラッシュの泡のバリアでゼロの攻撃を防ぎながら距離を取るエックス。
同時に両腕のチャージもしていく。
「良いぞエックス!俺の性能を限界以上まで引き出し…お前も限界以上の性能を引き出せ!それこそが俺達が造られた理由なんだ!!」
「(そんなことないと俺は思いたいけどね…でもこの一撃一撃が俺達の言葉でもあるんだ…悲しいなゼロ…こうやって戦っている時だけしか今の俺達は分かり合えなくなってしまったなんて…でも俺は逃げない。君をシグマの呪縛から救えないなら…俺は君を倒す…それが俺達を助けてくれた君に出来る精一杯のことだから!!)ゼロおおおおおっ!!」
ゼロのチャージショットをかわしてエックスはダブルチャージショットの一発目を放つ。
「何!?」
チャージショットを放った直後を狙われたゼロはギリギリで防御出来た。
そしてエックスの左腕がバスターに変形する。
「チッ!!舐めるなよエックス!!」
ゼロが二発目のチャージショットを放つが、エックスはチャージしているセイバーを構えてバスターを後ろに向け、そのままチャージショットを放ってエアダッシュを使用した。
「でやああああっ!!」
「何!?俺のチャージショットを砕いただと!?」
チャージセイバーでチャージショットを粉砕し、その超加速を維持したままゼロにチャージセイバーの一撃を叩き込もうとするが、ゼロも流石と言うべきかセイバーで受け止める。
「っ!防がれたか…!!」
「っ…バスターを推進力に使うとは見た目とは裏腹に型破りな野郎だ…!!」
ゼロは両腕に走る痺れに表情を顰めるが、エックスは拳を構える。
「だが、俺の攻撃は終わっていない!!昇竜拳!!」
「舐めるなよエックス!!アースクラッシュ!!」
重装甲を誇るバイオレンすら一撃で葬った必殺技をゼロは腕の痺れを無視して技の完全発動前にエックスの拳に自身の拳を叩き付ける。
互いに凄まじい威力を誇る技同士の激突によってエックスとゼロは衝撃によって弾かれる。
「ぐっ!!」
「チッ!なるほど、バイオレンがあっさり破壊される訳だぜ……だが、嬉しいぞエックス」
両者共にぶつけ合った拳に触れるが、ゼロが不敵の笑みを浮かべる。
「え?」
「話を聞き、あそこで会った時のお前は“甘ちゃん”と言う印象が抜けなかったが…認めよう。お前は俺の最大の宿敵に値する相手だとな…さあ、怒れ!戦え!!それでこそ俺の“存在意義”がハッキリする!!」
ゼロの放った衝撃波をエックスは跳躍して回避し、観客席の方に降り立つ。
「良い反応だエックス!!」
ショットを連射するゼロに、エックスはダッシュで攻撃を回避するが、ダブルチャージショットを放ち、それによる時間差攻撃でエックスを吹き飛ばす。
「ぐっ!!」
「さあ、これをどう避ける!?」
チャージしていたら逃げられるためにショットを連射してくるが、エックスはエアダッシュでそれを回避する。
「良いぞ!その調子だ!だが、俺の最強の技に耐えられるか!?アースクラッシュ!!」
昇竜拳との激突の際は互いに不完全な発動で終わってしまったが、今度は完全な形で繰り出されたアースクラッシュの衝撃波がエックスを襲う。
「ぐわああああああっ!!!(耐えるんだ!アースクラッシュは確かに威力は凄まじいけど、発動後の硬直も長い!!今だ!!)」
アースクラッシュ発動後の硬直を狙ってエックスはゼロにチャージショットを放つ。
「しまった!!」
アースクラッシュの硬直を突かれたゼロは何とか直撃は避けたが、ヘッドパーツのクリスタル部分に掠ってしまう。
「外した…いや、まだだ!!」
二発目を放とうとした時、ゼロに異変が起こる。
突如頭を抱えて苦しみだしたのだ。
「うわ…あああああっ!!」
「ゼロ…?」
エックスがゼロの異変に疑問符を浮かべるが、ゼロが膝を着いた時にその理由が分かった。
アーマーと髪の色が自分の記憶にある配色になり、目も正気のあるものに戻っている。
「エッ…クス…?」
「ゼ…ロ…ゼロ!!」
覚悟は決めていた。
しかし先程の一撃が自分の良く知るゼロを取り戻したと言う奇跡に思わずエックスはバスターを解除してゼロに駆け寄る。
「ゼロ!正気に戻ったんだな!?」
「エックス…俺は一体何を…?それにお前…その傷は…?」
「良いんだゼロ…後はシグマを倒すだ…」
次の瞬間、ゼロのバスターからチャージショットが放たれ、エックスに直撃した。
「な…俺は…何を…?」
崩れ落ちるエックスを見て、自分の意思とは無関係に動いたバスターとなっている腕を見つめる。
「う…ぐ…っ」
無防備、しかも零距離でチャージショットを喰らったエックスは傷口を押さえて呻く。
「エ…エックス……ぐあ…っ!?」
エックスの状態を気にするゼロだが、それよりもゼロに異変が起きる。
ヘッドパーツに埋め込まれたイレギュラー化チップが再び機能を取り戻してゼロを洗脳し始めたのだ。
「(そ、そうか…ゼロのさっきの攻撃はヘッドパーツに埋め込まれたチップのせいか…ならそれを壊せば…)っ!?」
ゼロの意識は再びチップに支配され、アーマーも漆黒に、髪の色も銀色に変化してエックスにセイバーを振り下ろすが、ギリギリのところで回避する。
しかしセイバーがヘッドパーツに掠り、これがとどめとなったのかヘッドパーツの機能が停止し、ヘッドパーツはノーマル状態となる。
「これならどうだ!!」
「何!?」
ゼロはエネルギーを収束させた左手の指をエックスのアーマーにめり込ませる。
「アースクラッシュの全エネルギーを貴様の体内に一気に流し込んでやる!!」
「ぐあああああっ!!?」
ゼロの最強の一撃のエネルギーを一気に流し込まれるエックスは激痛に叫ぶ。
「大地を切り裂く“龍”が駆け回る感じはどうだ?」
エックスのアーマーは崩壊していき、次第に限界を迎えて大爆発を起こした。
爆風によってエックスのアーマーが吹き飛んで地面に転がっていく。
「エックスは死んだ…これによって俺の“使命”は終わった…さて、これからどうするか…使命を終えた以上ここにはもう用はないが……やることがないと言うのは思った以上につまらんものだな…エックスとの戦いはかなり楽しめたが…」
「まだだ…ゼロ…」
「何!?」
振り返ると、ダメージはあるが五体満足のエックスが立ってゼロを睨み付けていた。
2人の戦いはまだ終わっていない。
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