マイ「艦これ」「みほ3ん」
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EX回:第71話<挺身>
前書き
司令たちはブルネイ軍の内火艇で水上集落から岸へ戻る。だが艦娘負傷の知らせに一同は沈黙していた。
「ごめんよ、ごめん」
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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)
EX回:第71話(改1.3)<挺身>
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私たちの居る桟橋の前に軍用の内火艇が横付けされた。
やや緊張した面持ちながらキビキビとしたブルネイ軍の隊員が降りてきて敬礼した。
英語は駄目なのだろう、直ぐに日系の通訳が翻訳する。
「ブルネイ海軍です。日本の皆様を街の岸壁までご案内いたします」
私たちも敬礼した。ブルネイ司令も応える。
『帝国海軍ブルネイ泊地の司令だ。よろしく頼む』
多分、そのようなことを答えたに違いない。彼は現地語が喋れるんだ。
私たちは彼らに案内され艦娘たちと共に内火艇へと乗り込んだ。全員が乗り込むのを確認して隊員がサッと確認した。合図と同時に船は桟橋を離れた。
「しかし龍田さん2号が負傷とは。大丈夫なのか?」
「……」
私の言葉に誰も答えない。
もちろん心配しているのは私だけではない。ブルネイ司令も、そして艦娘たちだって。あの技術オタクみたいな参謀までが心配しているのだ。
船は夜の大河を進んでいく。時折、警察や軍関連の船とすれ違う。まだ川全体が混乱した雰囲気だ。
戦闘の最終的な状況がまったく分からない中で水上集落の各所で燃え盛る炎が私たちを赤く照らす。それが一層の不安を増すようだった。
船内の重苦しい雰囲気に耐えられなくなった私は、つい寛代が何か受信するのではないかと期待するのだが、今のところ陸での動きは無いのだろう。彼女も、ずっと黙っている。
(ピピピ……)
そのとき、あのイケメン護衛官が何かを受信したようだ。彼は携帯受信機を取って、どこかと通話をしている。
やがて通信を終わった彼が片言の日本語で口を開いた。
「伝達を……戦況について」
ブルネイの司令は頷く。直ぐに通訳が入る。
「金剛さんたちが渡河中にも何度か敵の攻撃を受け、そのたびに回避と応戦を繰り返しました」
私は言った。
「やはり護衛をつけて幸いだった」
「また『王宮男性』たちに攻撃してきた敵を美保の龍田さんや日向さんがよく防ぎました」
(手練のあの二人なら心強いな)
事後報告ながら私はホッとした。
彼は続ける。
「ブルネイの比叡さん(2号)と龍田さん(2号)も、まさに身を挺して防いでくれました」
「……」
ブルネイの司令は黙っていた。私は返す言葉が無かった。
だが彼は呟くように言った。
「技師から聞いたが量産型の龍田さんは生まれつき武術の心得があったらしい」
「そうなのか」
艦娘とは奥が深いな。
「ブルネイの龍田さんは、同じブルネイの比叡さんを守ろうとして負傷しました」
「……」
緊張する一同。だが彼は続けた。
「幸い、轟沈は免れました」
その言葉に、場にいた一同から安堵のため息が盛れた。
「その後は美保の飛行艇の攻撃によって敵を押し返しました」
「なるほど」
私には技術参謀の顔が思い浮かんだ。
続けて彼は微笑んだ。
「秘書官……あの女性が上陸後に直ぐに車を手配して龍田さん(2号)は秘書官と共に直ぐにブルネイの鎮守府へ搬送されました」
(彼女には、いろいろお世話になるな)
私はホッとした。ブルネイの司令も安堵している。
私はふと寛代に聞いた。
「他の艦娘は、まだ現地の……岸に居るのか?」
「……」
やや間があってから寛代は黙って頷いた。
私は川面を見渡していった。
「まぁ、戦闘は終わっているし、このブルネイ軍の内火艇なら、さほど時間もかからないだろう」
「……」
こちらを見上げて指示を待つ彼女に私は伝える。
「私たちが到着するまで、美保の艦娘たちには待機するよう指示だ」
彼女は黙って頷くと、ブツブツと通信を始めた。
まだ船内には重苦しい雰囲気が漂っていた。実際には数分だったかも知れないが、その場の誰もが、実際より長く感じただろう。
「ごめんよ、ごめん」
暗い河を見つめながら船縁に寄りかかって呟く伊勢が印象的だった。彼女は量産型だからな。仕方がない。
「そんなに気を病むな」
ブルネイ司令も、彼女に近寄り肩を抱く。こういうことが自然にできるのが彼の特技だ。他の指揮官がやったらセクハラになるだろう。
そんなブルネイ司令に寄りかかって身を預ける伊勢。戦艦なのに、とても小さく見えた。
(なんとか支えてあげたいな、この娘も)
美保の日向とは経験値が違うとは言え、姉妹が逆に感じられる。
私は量産型の彼女たちが不敏に思えた。
いきなり生まれ出て演習とは言え、直ぐに戦闘に参加させられたんだ。
(かと思えば息つく間もなく今度は実戦に近いゲリラ戦に巻き込まれた)
ここが軍隊である以上は量産型であっても艦娘は兵士だ。能力の有無を言わさず戦闘に駆り出される彼女たち……その運命のイタズラを今は、ただ恨むしかないのだろうか?
(艦娘とは言え彼女たちの置かれた境遇は、あまりにも苛酷だ)
……だが厳しいが、これが現実だ。
軍隊である以上、配置された位置を死守する以外に選択肢はない。ポジションを外れること即ち死と同じだ。それが兵士の運命。指揮官とて例外はない。
「まともな人間なら、気が狂うな」
私は呟いた。対岸の街の夜景が、ゾッとするほど輝いて見えた。
(何のために私は、そして艦娘たちは戦うのか?)
私は船内の艦娘たちを見て、ハッとした。
(私たちは孤独ではない)
艦娘たちと指揮官……そうだ。鎮守府の隊員は、まさに一蓮托生なんだ。
このブルネイの伊勢のように一時的に躊躇したとしても誰も咎めはしない。足りない部分は、お互いに支え合えば良い。それが同志なんだ。
私の美保鎮守府への着任だって偶然ではないのかも知れない。お互い足りない者同志であっても。それが仮に指揮官と艦娘たちであっても何を躊躇う必要があるだろうか?
お互いに壁を無くして、本音で心を通じ合わせること、それが一蓮托生だ。
(そう思えば私はまだまだ遠慮がある。むしろブルネイの司令を見習うべきか)
そんなことを考えた。
やがて対岸の桟橋が見えてきた。
「テイトクぅ」
「司令ぇ!」
(比叡2号と金剛だな)
いつもは避けたくなる金剛の呼び掛けにも、なぜかホッとした。
(思わず大声で返事をしたい気分になるな)
さすがに理性が、それを止めた。私は苦笑した。
だが直ぐに、こっちの船内から大声で艦娘たちが叫ぶ。
「オーイ!」
「ぽいぃ!」
青葉さんと夕立だった。この二人には遠慮なんて言葉は無縁だろう。
(軍隊として、或は美保の龍田さん的にも、彼女たちの行為は好ましくはないのだろうか?)
だが、その掛け声に俯いてたブルネイの伊勢も顔を上げた。
(いや船内だけじゃない)
敵に攻撃されて意気消沈していたような桟橋周辺の誰もが、艦娘たちに励まされるような気持ちになったに違いない。
「今夜、この場ではオッケーだな」
私は微笑んだ。
出来るとか、出来ないとか、新しいとか、古いとか。そんなことは、どうでも良い。私たちは同志。そして艦娘と一蓮托生、それで良いんだ。
手を振る艦娘たちが、とても輝いているようだった。
以下魔除け
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後書き
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。
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