| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

『魔術? そんなことより筋肉だ!』

作者:蜜柑ブタ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

IF もしも他のサーヴァント達が復活したら? あと死人無し(臓現などは例外)

 
前書き
タイトル通りです。 

 



「ぼーずーー! しょう…、グハッ!」

「うっせぇよ、ランサー。今、空豆剥いてんだよ。」

 いつものランサーの襲撃を、いつものようにデコピン一発で撃退する士郎であった。
「懲りないですね…。いっつも士郎さんに負けてるのに。」
 縁側で一緒に空豆剥いてた桜が呆れてそう言った。
「こ、この命ある限り…、絶対に坊主に勝つ!」
「そうか…。じゃあ、また粉々にしてやるよ。」
「そりゃ勘弁…。」
 拳を握って見せた士郎のマジ顔に、ランサーは、即座に降参だと手を上げた。

 第五次聖杯戦争。
 その勝者となった士郎。
 士郎の願いは、叶った。
 異性界の住人であるユーリとの再会は果たされたのだ。
 しかし、ただ再会だけを望んでいた士郎の願いは、聖杯が勝者の願いを叶えるために蓄積させていた魔力を余らせてしまい、ついでという形で士郎の願いを叶えることとなった。
 それが、サーヴァント達との再戦だ。
 結果……、サーヴァント達がマスター無しで受肉することとなり、おかしな、ドタバタな日常が始まることとなったのだ。


 毎日懲りずに勝負しに来るランサー。

 筋肉魔法の強化のため、戦いに付き合わされるバーサーカー。

 柳洞寺に料理のお裾分けに行くたび、大魔法を放ってくる筋肉嫌いのキャスター。


 最終的にセイバーともに生き残ったサーヴァントとなり、そして受肉したアーチャーは、そんな士郎の日常にめまいと頭痛を感じていた。
 しかし、彼にとって頭痛のタネは、上記の者達だけではない。おそらく一番の頭痛のタネは……。

「士郎! 貴様、ますます肉体に磨きがかかっているようだな! さあ、我にその成果をみせるがいい!」
「お前も好きだな…。」
「何を言うか、たわけ! この我を負かし、そして魅了しておいて、おいそれと逃げられると思うてるのか!?」

 筋肉に力と美を見出せる価値観の持ち主だった、ギルガメッシュ。コイツも生き返った。
 毎回、衛宮家に押しかけてくるたびに、士郎の筋肉を見せろと言ってくるのだ。コイツ…。
 その都度、結構危ないラインの言葉を吐くのだから、聞いてる側はゾワゾワもんだ。(※好きな人は好きだろう)
 終いにゃ…。
「触らせろ!」
 などと言い出す始末だ。
「やめろ。」
「っ! 士郎、貴様、王の手をたたき落とすな!」
「お前のさわり方は変なんだよ。」
「士郎さん…。士郎さんの身体は…、全部私のです!」
「いいや、小娘! 此奴の肉は我のモノだ!」
「アホ。桜のだ。」
「士郎さん!」
「チッ…。」
 桜が涙を飛ばしながら士郎に抱きつき、ギルガメッシュは、舌打ち。

 ……なんだ、この図?

 アーチャーは、頭痛のあまりに屋根の上で黄昏れながら、士郎の令呪からのパスを通じてイヤでも入ってくる情報に、いっそ狂ってしまいたかった。きっと今なら、バーサーカークラスで召喚できそうなぐらい、気を狂わせたい。

 そんな時、家のチャイムが鳴った。
 見ると、お皿の束を持った葛木と、葛木の後ろでガタガタ震えているキャスター(私服)がいた。
「宗一郎様…、宗一郎様ぁ…、どうしても来なきゃいけなかったんですか?」
「いつもおかずを持ってきて貰っているので、皿を返しに来ただけだ。」
「でも宗一郎様…! アイツ(士郎)、絶対目的はおかずのお裾分けじゃなくって、私の魔術の攻撃だと思うのです!」
「そうだとしても、衛宮からのお裾分けはありがたい。」
「そうですけど…。」
「なんだ…。皿を返しに来ただけなら、玄関先にでも置いていけばいいだろ。」
「アーチャー!」
 アーチャーが玄関先に飛び降りた。
「手土産あるのでな。」
「わざわざすまんな。」
「さ、さあ! もう用事も済ませましたし、帰りましょう!」
「いや、まだ衛宮に挨拶をしていない。」
「いやですぅううううう!」
「お前はここにいろ。」
「宗一郎様! 置いていかないでぇぇぇ!」

「何の騒ぎだよ?」

「いやああああああ!!」
「そして、会っていきなり悲鳴かよ。キャスターか。」
「衛宮。いつもすまない。皿を返しに来た。」
「あっ、そうなのか? ありがとうございます。」
「あと、手土産も持ってきた。」
「焼き菓子だ。」
 アーチャーがさっき受け取ったケーキ箱に入った物を見て言った。
「わざわざどうも。なんだったら、夕飯食べて行きます? 空豆が安売りしてて、大量にあるんですよ。今日は、空豆パーティー。」
「ふむ…。ならごちそうになろうか。」
「宗一郎さまあああああああああああああ!!」

「うるさいわねぇ、おばさん。」
 そこへ、バーサーカーと共に、衛宮家に遊びに来ていたイリヤがやってきた。
「おば…、い、イヤアァァァ! 筋肉ダルマぁぁぁぁ!!」
「私のヘラクレスになんてこと言うの? ねえ、シロウ、酷いよこのおばさん。」
「おばさん言うな!」
 怒られても動じないイリヤに、キャスターがギャイギャイ怒った。
「ひでぇな、坊主! 俺も誘えよ! ビール買ってくるのに!」
「じゃあ、ランサーも食ってけよ。」
「よっしゃあ!」
「ふん、駄犬が。」
「ギルガメッシュはどうする?」
「豆ごときで動く我ではないが、たまには良いだろう。味わってやる。せいぜい王の舌を満足させる品を用意せよ。」
「んじゃ、決まりだな。」

「なーによ、なんかいつも以上に賑やかね。」
「ランサーに、英雄王…、そしてキャスターまで…。」

「なんだ、遠坂か。どうした?」
「何って、いつも通りよ。」
「で、セイバーが持ってるソレは?」
「いつもご馳走になってるので、凛が腕によりをかけておかずを作ってきてくれました。」
「ば、ち、違うわよ! 私は、士郎の中に封印したアヴェンジャーの封印の確認もかねてね…。」
 笑顔で言うセイバーに、気恥ずかしくなったらしい凛が、慌てて建前となる言葉を吐こうとした。
「おい、キャスター。令呪使ってアサシンも呼べよ。」
「…仕方ないわね……。小次郎!」
「ーーーはい。おや、士郎殿。」
「飯食っていけよ。」
「では、馳走になります。」
「アーチャー! 今日はメッチャ人いるから、手伝えー。」
「そんなことは言われんでも分かっている。」
「じゃあ、私も手伝うわ。セイバーは、出来た料理を運んでくれる?」
「はい。」
「ライダーも手伝ってね。」
「はい、桜。」

「おい、桜、いつまで衛宮の家に…、ってなんだ!? この大所帯!」

 そこへ慎二。
「あら、あんたも来たのね?」
「よかったら、慎二も食っていけよ。ついでだから。」
「ついでとはなんだ、ついでって!」
「兄さん、今日はご馳走ですよ。」
「…そうか。べ、別に良いぞ。食べて行っても。」
 コホンッと咳払いした慎二がそう言った。

「うひゃ~、今日はすっごい大所帯ね!」

「お帰り、藤ねえ。」
「士郎~。お腹すいた!」
「今から作るから待っててくれ。」

「……………………はあ…………………、なんだこの日常は?」



 アーチャーは、割烹着を着ながら、ボソッと呟いたのだった。



 これは、そんな日常。
 あり得たかも知れない、世界線。

 
 

 
後書き
もしもの、ドタバタな日常の世界線です。 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧