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『魔術? そんなことより筋肉だ!』

作者:蜜柑ブタ
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SS12 ラブラブ同棲?

 
前書き
慎二の死を乗り越えて……。


士桜、要素。 

 

 間桐慎二は、死んだ。
 その死は、事故死とされ、本来の死因は公になることはない。
 それは、表沙汰にならない魔術師という存在が戦い、殺し合う、この聖杯戦争では決して珍しいことではないのだと凛は言った。
 件の連続多発ガス漏れ事故や、殺人事件などもそうだ。そうやって情報を歪められて伝えられ、真実は大衆には伝えられない。
「ごめんな、桜…。目の前にいたのに、慎二を助けられなかった…。」
「いいんです…。もう…。」
 慎二の葬儀は、簡素な形で済まされた。
 一応学校のクラスメイトが葬儀に参列したが、その死を悼む者は少ない。その理由は生前の慎二の行いのせいだろう。
 慎二のいない日常は、すぐに当たり前のことになるだろう。そう…初めからそこにいなかったように。


 士郎はボーッと、空き教室の窓から空を見上げていた。
「……まーだ気にしてるの?」
「遠坂…。」
「仕方ないわよ。って…言うしかないわ。」
「分かってる…。そう納得するしかないんだって…。」
「で? これからどうするわけ? 桜がライダーを取り戻した今、桜はあんたのために聖杯を求める。そしてライダーのことだから、桜の命令に従ってあんたに従うでしょうね。」
「俺は、俺の戦いを続けるよ。遠坂も、そうだろ?」
「ええ。ところで、私と同盟を組む気はないわよね?」
「ああ。」
「そう…。」
「遠坂には遠坂の願いがあって。俺には俺の願いがある。それは、きっと同じ願いになることはない。」
「そうね。じゃあ、これからも敵同士よ。」
「貸しのこと忘れるなよ。」
「まったく、がめついわね。」
「お前に言われたかないな。守銭奴。」
「仕方ないじゃない! 宝石って値が張るのよ!」
「…ふ、ふふふ。」
「あ、やっと笑ったわね。」
「そうか?」
「だって、ずっと湿気た顔してんだもん。」
「…ありがとな。」
「礼なんていらないわ。」
 そして、お互いに笑った。





***





「桜? 本当にいいのか?」
「はい…。心細くって…。」
 慎二の葬儀後、桜は荷物を抱えて、衛宮家にしばらく泊まることにした。
 桜からしたら、血のつながりはないものの、兄の慎二がいなくなったことで、ただでさえ広い間桐邸に一人で住むのは心細すぎたのだ。
「それに…、これからはライダーがいます。すぐに先輩の力になりたいから…。」
「これまでの非礼をお詫びします。そして、これからよろしくおねがいします。」
 私服姿で、眼鏡のライダーがそう言って深く頭を下げた。
「いや、そのことはもういいんだ。よろしくな、ライダー。」
「はい。」
「しろーーーう!」
 そこへ、藤村大河が走ってきた。
「ちょっと、とうとう同棲!? それなら式ぐらいあげなさいよ!」
「いや、まだ気が早いって。」
「あら~、予定はあるのね?」
 ぷくくっと、大河が笑った。
 桜は、カ~ッと顔を真っ赤にした。
「俺…聖杯戦争を無事に勝ち抜いたら…、絶対にユーリ兄ちゃんに桜を紹介したいんだ。」
「先輩が会いたいって人ですよね?」
「なになに? 何の話?」
「こっちの話だ。俺、もしかしたらユーリ兄ちゃんに会えるかもしれないから。」
「前々から気になってたけど…、あんたが言うユーリって、男? 女?」
「!」
「男だけど?」
 ギョッとする桜とは裏腹に、マイペースに答える士郎だった。
「なーんだ。もし女だったら、修羅場かもって心配したじゃない。」
「なんでだよ?」
 大河の言葉に士郎は首を傾げ、桜はホッと胸をなで下ろした。
「ユーリ兄ちゃんは俺の尊敬する人だけど。俺が桜以外の異性を恋人として好きになるわけないだろ?」
「!」
 士郎の言葉に、ボンッと桜が顔を真っ赤にした。
「桜。しっかり。」
「う、嬉しい…嬉しい…。」
 ライダーに支えられ、顔を両手で覆った桜がブツブツと呟いた。


 こうして、桜の同棲(お泊まり)が決まった。
 だが。


「認めないわよぉおおおおおおおおおおおおお!!」

 ドドドドドっと、凛が走ってきた。
 隣にいるアーチャーが大きな鞄を抱えていた。
「遠坂?」
「私も住むわ!」
「なんでさ? おまえとは同盟も組んでないのに。」
「いいえ! これは決定事項よ! せいぜい、邪魔させて貰うからね。」
「これ、お土産です。つまらないものですが。」
「あら~、わざわざありがとうね。」
 アーチャーが手土産を大河に渡していた。
「そ、そんなぁ…。せっかくの先輩とのラブラブ同棲が…。」
「桜!」
 凛の乱入に、桜は、フウッ…っと立ちくらみを起こし、ライダーに支えられたのだった。




 
 

 
後書き
お邪魔虫、凛。 
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