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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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第12話:Electromagnetic Power Plant

エックスはマンドリラーが占拠したシティ・アーベルの電力の約7割を賄っている巨大発電所付近に来ていた。

「シティ・アーベルの都市部が停電している…マンドリラー…何故彼までこんなことを…」

『エックス、同僚の凶行に戸惑う気持ちは分かるけど、あなたがそうして迷っている間にも苦しんでいる人々がいるのを忘れないで』

迷っているエックスにエイリアがオペレーターとして厳しく言い放つ。

しかしこの発言はエックスの背中を押すためのもので、エックス自身もそれを理解している。

ここに来る途中にエイリアによってゼロが入手したボディパーツのプログラムが転送され、防御力が飛躍的に向上したエックスはイーグリードのDNAデータを組み込んだバスターを見つめる。

顔見知り、知り合い程度の自分と違ってゼロにとってイーグリードは新人時代からの古い戦友なのだ。

それを討ったゼロの心境は図り知れない。

VAVAがカメリーオを破壊したことも知らされた。

カメリーオの電磁迷彩機能を引き抜いた後、何処かへ消えてしまったと言う。

VAVAが何をしたいのかは分からないが、あまり良くないことは確かだろう。

エックスは複雑な心境で同僚が占拠した発電所に向かい、施設内に入ると墜落したデスログマーが目に入った。

『どうやらデスログマーの落下による衝撃の影響で施設内の機能がいくつかが停止したようね…ゼロには悪いけれどこれは好機だわ。機能が復活する前に奥に進んで』

エイリアのオペレートを受けながら途中で向かってくるメカニロイドにはチャージショットを喰らわせ、あるものには…。

「ストームトルネード!!」

イーグリードのDNAデータから得た特殊武器を放つ。

バスターから放たれた小型の竜巻は大型のメカニロイドを切り刻んでいく。

「(これもいい武器だ。)」

ある程度距離を詰めなければ当てられないファイアウェーブよりも使い勝手がいいのでこれを攻撃の要にして、エックスは発電所の奥へと向かっていく。

メカニロイドの迎撃をしながら奥に向かうと広い部屋に出たが、照明は落ちており変電器の駆動音以外何も聞こえなかった。

中に入った途端に背後の扉が閉まり、閉じ込められたとエックスが悟った時には一転して部屋の照明がついた。

一瞬眩しさに目が眩み、エックスは天井を見上げると目を見開いた。

「何だこいつは…!?」

透明なゼリー状のような膜に覆われた巨大な機械。

顎に当たる部分には巨大な電極がついており、そんな異形が変電室の天井に浮いていた。

「何だあれは…?メカニロイド…なのか?」

『そのゼリーのような膜を持つメカニロイドは恐らくサンダースライマーよ。1個の細胞をどこまで巨大化出来るのかと言う実験の産物。でもサンダースライマーの維持には大量の電気が必要なのと制御不能のためにプロジェクトもろとも凍結処分が下されていたはずだったんだけど…どうやらマンドリラーが発電所を占拠した際に解放されたようね…サンダースライマーを倒すには膜の中にある機械部分を攻撃するのよ。何とかあの膜を突破して攻撃を当てて』

エイリアの説明を聞いたエックスは即座にストームトルネードをサンダースライマーに喰らわせる。

膜が竜巻によっていくらか削られるが、スライマーを倒すには至らない。

出来るだけ敵から離れなければならないとダッシュやジャンプを駆使して変電室を駆け回るが、撃ち返す間もなく電撃が襲ってくる。

しばらく走り回った末に相手の攻撃が止んだのを見計らってエックスはバスターを連続で撃ち込んだ。

ファイアウェーブもショットガンアイスもストームトルネードもカメレオンスティングも。

しかしいずれの攻撃もゼリー状の膜を貫通しきることなく消滅してしまった。

「くそ!!一体何の細胞で出来てるんだあれは…!?」

悪態をつきながら諦めず撃ち続けるが、相手は堪えた様子が無く、それどころかその巨体で突撃してきた為にエックスは慌てて回避する。

あの巨体の体当たりをまともに受けたら押し潰される。

このままではバスターはともかく特殊武器のエネルギーが尽きてしまう。

「(ストームトルネードは後1発しか撃てない…なら、危険だがこれしかない!!)」

エックスは意を決してバスターに変形させた腕をサンダースライマーに突っ込むと腕に走る痛みに顔を顰めながら、最後の1発を放つ。

「ストームトルネード!!」

内部で放たれた竜巻により膜が弾け飛び、露出した機械部分にショットを連射して破壊し、サンダースライマーの残骸が辺りに転がる。

「………」

この世に生を受けた瞬間に凍結処分させられた実験機の残骸に哀れみを覚えながらも、エックスは先へと進むと十字に分かれている通路を見つめる。

左の通路の奥から淡い光と共に懐かしい感覚がする。

エックスは左の通路に進むと奥には白衣の老人のホログラムが映るカプセルがあった。

『このカプセルにはアームパーツを遺しておいた…カプセルに入り、腕に装着すれば、お前のチャージショットが強化され、より強力なスパイラルチャージショットが放てるようになり、特殊武器のチャージも可能になる。そしてこれはルインの最後のアーマー解除プログラムじゃ…あの子に渡して欲しい……』

フット、ヘッド、ボディに続く最後のパーツ。

「…分かりました。パーツとプログラムチップを受け取りましょう」

カプセルの中に入り、アームパーツがエックスの腕に装着されたことでファーストアーマーが完成し、続いてルインのアーマー解除プログラムチップを受け取る。

『エックス…戦いとは辛く虚しいものじゃ……だがそれによって得られる平和の…笑顔の素晴らしさを忘れるでない…』

「…はい。ありがとうございます。あなたのおかげで、俺はこうして、ゼロとルインと一緒に戦える。この御恩を返せるかは分かりませんが、決して忘れることはありません。」

エックスは白衣の老人に頭を下げるとマンドリラーの元へ向かう。

何もない通路を抜けるとタービン室の扉に辿り着き、エックスがそれを力任せに開けると室内は暗かったが、何かが中にいるのは分かった。

暗い天井付近で七色に明滅するランプが縦一列に見え、それが合図であったように広い部屋の照明が点灯し、天井の太いパイプを掴んでぶら下がる巨大な猿の影が浮かび上がった。

「此処にいたのかマンドリラー…」

エックスは苦い顔でかつての同僚の名を呼んだ。

来ると分かっていたスパーク・マンドリラーは、静かに床に降りてエックスに問いかけた。

「…シグマ隊長が狂ってると思うかいエックス?」

シグマの名を聞いてエックスの顔が更に険しくなる。

「奴はもう隊長なんかじゃない…イレギュラーだ!!」

「なあ、エックス…」

怒るエックスにマンドリラーはボリボリと頭を掻きながら言った。

「隊長が正しくて お前が間違ってると思ったことはないか…?」

「…………」

マンドリラーの言葉にエックスは思わず目を見開いて閉口してしまう。

「俺も考えるのは苦手だ…答えは戦えば分かるかもしれんな…」

表情の無い顔に何か遠くを見るような目をしながらそう語ると、マンドリラーは腕のドリルの出力を上げた。

エックスもアームパーツによってパワーアップしたバスターを構え、予めチャージしていたことで即座にチャージショットをマンドリラーに放つ。

マンドリラーはそれを翻すとその巨躯と普段の態度からは想像できないような俊敏な動きで接近すると、その豪拳でエックスを殴り飛ばした。

“豪速拳の雷王”の異名を持つマンドリラーの恐ろしさは接近戦の強さではなく、その俊敏さにあるのだ。

瞬間速度だけなら、かつての精鋭揃いの第17精鋭部隊でも“時空の残鉄鬼”ブーメル・クワンガーに次ぐ速度を誇るレプリロイドである。

「ぐっ…!!(反応仕切れなかった…や、やはりマンドリラーは速い…!!)」

強化されたアーマーはマンドリラーの一撃に耐えはしたが、エックス自身に相当のダメージを与えた。

「…壊す気で殴ったんだがなぁ…」

あの一撃には渾身の力を込めて繰り出したにも関わらず、強化されたアーマーのおかげとはいえ耐え抜いた。

明らかにエックスのステータスが以前と比べて飛躍的に上がっている。

「マンドリラー、どうして君はシグマに従うんだ…?ただ、シグマが正しいと思っただけじゃないだろう…?」

起き上がったエックスに尋ねられたマンドリラーは少しの間を置いて口を開いた。

「う~ん、まあいいか…話しても。俺もペンギーゴとか程じゃないけど人間に不満があったんだよエックス?」

「人間に不満…?君が…?」

マンドリラーが言い放った“不満”と言う単語にエックスは目を見開く。

「ほら、俺って電気の力を使うから他のレプリロイドより燃費が悪いだろ?そう設計したのは人間なのに取り込む電気量を制限されちゃってさ。俺を造っておきながらこれだよ。だからさ、シグマ隊長に従うのは隊長が正しいと思うからだし、俺をその制限から自由にしてくれた隊長に恩を返そうと思ったからだよ」

そう言うとマンドリラーはもう1発喰らわせようとするが、今度は回避して最大までチャージしたチャージショットを放つ。

エックス「スパイラルチャージショット!!」

大量の拡散弾を束ねたチャージショットが放たれた。

まともに受ければやばいと判断したマンドリラーは即座に体を捻って回避し、避けられたスパイラルチャージショットは壁を容易くぶち抜いた。

新たなチャージショットのスパイラルチャージショットの威力に目を見開いたが、エックスは少々訝しげにバスターを見遣る。

エネルギーチャージが臨界点に達そうとした瞬間、バスター内部でエネルギーが四散した。

「(まさかバスターにリミッターが取り付けられているのか…?)」

確かにあれ以上の出力を出したら下手な場所では大惨事になるだろう。

今度はショットを連続で撃つことでマンドリラーを更に壁際へと追い詰めていく。

かつて同僚だったためにマンドリラーの弱点は知っており、特にこれから使う武器はこのような狭い場所で真価を発揮する。

「喰らえマンドリラー!ショットガンアイス!!」

バスターから極低温のアイスショットが放たれた。

マンドリラーは上に飛び上がって避けるが、この攻撃はそれでは終わらない。

ショットガンアイスは壁に当たると部屋の中に無数の氷の礫をばら撒いた。

いくつかは部屋の壁に当たってその箇所を凍結させ、そしてマンドリラーの体に当たった礫はそのまま張り付いて徐々にマンドリラーの体を凍結していく。

「ペンギーゴの技を…!?」

戸惑うマンドリラーの体をショットガンアイスの氷が侵食していく。

電気を武器とするマンドリラーの体は極端な熱の変化に対応仕切れないのだ。

動きが鈍ったマンドリラーにエックスは再びショットガンアイスを至近距離でマンドリラーに撃ち込むと、あっという間にマンドリラーは氷の彫像となって地に落ちた。

「終わったか?」

エックスは氷に閉じ込められたマンドリラーに近づこうとしたが、マンドリラーを閉じ込めた氷に罅が入るのを見てバスターをチャージさせた。

「ぶるぅあぁぁぁぁぁ!!」

吠えながらマンドリラーは自力で氷を破壊して起き上がり、今のショットガンアイスでかなりのダメージを受けたはずなのに戦闘体勢に入る。

ここは流石は特A級と言った所だろう。

起き上がったマンドリラーがエックスに殴り掛かるが、ダメージにより速度が低下しているために今のエックスなら容易にかわせる。

エックスはマンドリラーの拳をジャンプてかわすとチャージを終えたバスターを向ける。

「これで終わりだマンドリラー!!スパイラルチャージショット!!」

現時点の最大出力のスパイラルチャージショットを放ち、マンドリラーの動力炉をぶち抜いた。

動力炉をぶち抜かれたマンドリラーはうつ伏せに倒れて、機能を停止させた。

「……何とか倒せたか…」

エックスはマンドリラーのDNAデータを回収すると簡易転送装置でハンターベースへ帰還する。 
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