ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第1話:イレギュラーハンター・ルイン
ルインがDr.ケインと暮らし始めて数ヶ月後。
レプリロイドとしての生活にも慣れてきた頃、自分が転生する前に立てた目標である本物のエックス達に会うという目標の元、イレギュラーハンター入隊試験を受けることにした。
イレギュラーハンターとなるためにはシミュレートルームで仮想エネミーの戦闘試験でハンターランクを決めなければならない。
「それでは準備はいいかい?」
「はい」
試験官の言葉に笑顔で彼女は答えた。
ハンターベースの訓練施設の中で、シミュレートルームは1番広く、実際の事件現場などを再現して訓練する為の場所なので広い方が多くのものを再現出来るのだ。
「状況判断も採点対象に入ってるから、設定内容は教えられないが…」
「はい、大丈夫です。」
試験官の説明にルインは迷うことなく返事をする。
「分かった。ではこれより…試験スタート!!」
精巧な建物の立体映像と仮想エネミーであるメカニロイドが出現し、即座にルインは銃…正確には銃と剣の複合武器の銃形態であるZXバスターを抜くとメカニロイドをショットで的確に撃ち抜いた。
「……動きに無駄がないな…」
感嘆するように言う試験官から見ても彼女は動きに全く無駄がない。
最小限の動作で攻撃を繰り出し、敵の攻撃をかわし、そして隙もない上に見ていて華もある。
動く度に金髪がふわりと揺れ、舞うような戦い方と整った顔立ちも相まって美しく見える。
「こいつで…ラスト!!いっけえ!!」
最大までチャージしたチャージショットを放ち、大型メカニロイドのコアを破壊した。
「…………状況判断力、SA。達成時間、12分26秒31。達成率、91%。減点5。総合点、SA…特A級だな。検討する間でもなく…これはまたとんでもない逸材が現れましたねDr.ケイン?」
「う~む、最初の登録試験で特A級に一発合格なんて、ゼロ以来じゃのう…」
イレギュラーハンター創始者であるケインとしても優秀な戦闘型レプリロイドがイレギュラーハンターに入るのは実に喜ばしいのだが、あまりにも優秀すぎて釈然としない。
そしてケイン直々に試験結果を聞かされたルイン本人はと言うと。
「特A級って…確か(現時点で)1番上のランクでしたよね?」
「うむ、しかも特A級に一発合格などゼロ以外ではお前さんが初めてじゃな」
確か今から100年後のコマンドミッション時代にS級ランクが現れたから、現時点の最高ランクは特A級だ。
「良かった…正直B級がいいところかなと思ってたんだけど…下のランクより上のランクの方が嬉しいや」
自分が思っていたよりも試験で好成績を叩き出せたことに喜ぶルインの無邪気そうな表情にケインも顔を綻ばせてしまう。
このレプリロイドはどういうわけか、レプリロイドの始祖であるエックスと同じくらいにレプリロイドとは思えないくらいに人間臭さを感じる。
戦闘力は高いが、一部のハンター同様にブラックボックスの塊であるために体調不良時はナノマシンを粉薬にしたようなワクチンを摂取しなければならない。
しかしそのワクチンは調合の都合上でとても苦く、苦い物が大嫌いな彼女が最初の体調不良で飲んだ時に沈んでしまい、それ以来は飲ませようとすれば逃げ出そうとするし、幽霊という非科学的な物も怖がるなどレプリロイドとは思えないくらい人間らしい。
「(わしにはアルファやシグマのような息子はいたが娘はいなかったからのう…もしわしが娘を造っていれば……娘がいればこんな感じだったかもしれんのう……)」
「博士?」
自分を見つめながら急に黙ってしまったケインにルインが不思議そうに見つめる。
「ん?ああ、すまんのう。お前さんはこれから特A級のハンターとしてわしの息子であるシグマが率いておる第17精鋭部隊に配属される。大変かもしれんが、シグマと先輩達と共に頑張るんじゃぞ」
「はい、博士!!」
ケインの言葉にルインは力強く頷き、そして翌日の早朝にルインはケインの言葉通りに第17精鋭部隊へと配属され、隊長であるシグマの元に向かっていた。
「(うぅ…シグマ隊長に会うのか…やっぱり緊張するなあ…)」
緊張しながらもこれから自分の上司となるシグマの部屋に向かうルイン。
そしてシグマの部屋の前に立つと、深呼吸を1回して声をかける。
「シグマ隊長。本日をもって第17精鋭部隊に配属されることになったルインです」
「うむ、入れ」
「失礼します」
部屋から低く重厚な声が聞こえ、失礼のないように部屋の中に入るとシグマがルインを見下ろしていた。
「ルインだったな。お前の成績はDr.ケインから聞いている。しかしだからと言って特別扱いはせん。今日から我が部隊の一員として頑張ってくれたまえ」
「は、はい…」
シグマの威圧感にルインは少々気圧されながらも、何とか返事をすると扉の方から声が聞こえた。
「お呼びですかシグマ隊長。エックスです」
「!!?」
「来たか…入れ」
扉が開くとそこには蒼いアーマーを身に纏うレプリロイド…全てのレプリロイドの始祖であるエックスが立っていた。
「(うわあ…本物だ…本物のエックスだ…)」
最早、前世の記憶があまり残っていないために理由は分からないが、本物のエックスを間近で見た感動を抑え切れず、少し体を震わせてしまう。
しかしそれにシグマもエックスも気付くことはなったのが幸いであった。
「ルインが部隊に慣れるまでの世話はエックス、お前に任せる。頼んだぞ」
シグマは自分が慣れるまでの間、エックスに自分の相手をするように言った。
「はい。それじゃあ…ルイン…行こうか?」
「あ、はい!!」
エックスに促されたルインは自分の先輩であるエックスと共にシグマの部屋を後にする。
部屋を後にしたルインはエックスの隣を歩きながらエックスをチラチラと見ていた。
「(本物…本物のエックスだ…)」
理由は覚えていないが、ずっとずっと実物を見てみたいと思っていたから感激も大きい。
エックスもエックスでルインの容姿を見ていた。
現時点の現存するレプリロイドとは違う細身のアーマーを身に纏っているが、腰にまで届く金髪とアーマーの色も相俟って自分の先輩であり、親友の兄妹型ではないかと思ってしまうのだ。
「あの、エックス…先輩ですよね?ケイン博士から話は聞いてますけど…」
「そうだよ。でも先輩は止めてくれないかな?そういうのは少し苦手なんだ…それから敬語はいいよ。」
「うん、分かった」
苦笑しながら言うエックスにルインは頷く。
しかし視線を感じて周りを見れば他のレプリロイド達がチラチラとルインを見ていた。
次々と自分に刺さる視線にルインは微妙に居心地の悪さを感じる。
「ね、ねえ…何かみんな私のことジロジロと見てるんだけど…私…何かやらかしちゃったかなあ?」
自分は何かしてしまったのだろうかと不安になり、エックスを見上げる。
エックスもルインの不安に気付いて苦笑を浮かべながら首を横に振る。
「ああ、違うよ。大丈夫、君は何もしていないよ…多分君の容姿があるレプリロイドに似ているからだよ。」
「え?私に?」
「そう、名前はゼロ。俺の大切な親友で先輩だよ…まあ、君にとっても先輩になるんだけど」
「親友…」
そういえばこの姿の元になったモデルZXはゼロをベースにした姿だから自分がゼロに似ているのは当然かもしれない…。
しばらくエックスと共に通路を歩いて訓練所に辿り着くと、そこには紅のアーマーと腰にまで伸びた金髪が特徴のレプリロイドである特A級ハンター・ゼロがいた。
そしてその隣にはゼロと自分と同じく特A級ハンターであるストーム・イーグリードと呼ばれるレプリロイドもいる。
「ん?おい、エックスの隣にいるのは…もしかしてお前の兄妹型か何かかゼロ?」
「何?」
イーグリードの言葉にゼロはエックスの隣にいるルインに視線を遣ると、ルインはルインでジッとゼロを見上げていた。
「久しぶりですイーグリード。彼女はルイン…今日からこの第17精鋭部隊に配属されることになったんです」
「ほう?いきなり精鋭部隊に配属されるとはな。それで彼女のランクは?何級だ?」
「い、一応特A級です。イーグリード先輩とゼロ先輩と同じ…」
「ほう?」
目の前の少女が自分と同ランクということにイーグリードは目を見開いた。
「それだけじゃないんです。彼女は試験をゼロに匹敵する程の成績で特A級ハンターに一発で合格したんですよ」
「ほう、この娘の容姿といい、完全に女版ゼロだな。まあ、ぶっきらぼうでガサツなゼロと違って性格は対称的なようだがな」
「おい」
横目でイーグリードを睨むゼロだが、ルインがこれから同じ部隊の先輩であるゼロに挨拶をする。
「は、初めまして、ゼロ先輩。これから宜しくお願いします」
「先輩は止めろ。ゼロでいい。後、敬語は止めろ」
「あ、うん…分かった」
ゼロの言葉にルインは慌てて返事をする。
それを見ていたエックスはゼロがそういう言葉使いをされることが面倒だと思っていることを知っているために苦笑していた。
「それにしてもお嬢さんはゼロに似ているな」
「え?そ、そんなに似てますか?」
「うん。その朱いアーマーといい、金髪といい、そっくりだよ」
「は、はあ…」
こうして第17精鋭部隊に配属されることとなったルインは彼らとどのような物語を描いていくのだろうか?
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