【完結】猫娘と化した緑谷出久
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猫娘と神野区異変編
NO.089 オール・フォー・ワン
前書き
更新します。
黒い液体から次々と溢れ出てくる脳無の群れ。
それと同時に死柄木達にも謎の液体が纏わりついていき、次々と姿を消していく。
オールマイトが手を伸ばすも遅く、すでにヴィラン全員は液体に包まれていずこかへと転移をしてしまった。
「これは!? まさかワープ系統の個性!?」
「俊典ぃ……こいつはやばいぞ! 全部持ってかれちまった!」
「はい……」
無念そうにそう呟くオールマイト。
だが物言わぬ脳無は感傷に浸る時間など待ってくれない。
数体がオールマイトへと引っ付いて足止めをしようとしている。
しかし、オールマイトはそれらすべてを『オクラホマ・スマッシュ』を放つことによってアジト事崩壊させた。
脳無が暴れまわり混乱する現場で、オールマイトは外で戦っているエンデヴァーに声をかける。
「大丈夫かね、エンデヴァー!?」
「俺達の事はいい! 貴様はさっさと向かえ!」
「すまない!」
そうしてオールマイトはもう一つの現場の方へと移動していった。
そして、もう一つの現場である脳無格納庫はすでに無残な事になっていた。
その場にいたヒーロー達もボロボロになって各々に横たわっている。
それを出久の背後にいる男は拍手をしながらも、
「やるねぇ……No.4ヒーロー、ベストジーニスト。僕は全員消し飛ばすつもりで放ったというのに、全員の衣服を個性で瞬時に端に寄せるなんて……かなりの判断力がなければできない事だ。あっぱれと言っておこうか」
「ぐっ……!」
ベストジーニストはその男を見ながらも作戦会議時の話を思い出していた。
必ずブレーンの存在がいると……。
そいつはオールマイトに匹敵する奴だと……。
今回はそいつは現れるかは分からない……。だが、用心深いために表には出てこないだろうと……。
「(話が違う!……からどうしたって言うんだ!? この程度の事は一流は失敗の理由になんて―――……!?)」
なんとか個性を発動しようとして、次いで腹部に強烈な衝撃を受けてベストジーニストは沈黙してしまった。
その男はベストジーニストの個性を「弔とは合わないものだ」と言って「いらない」と判断を下して即座に切り捨てた。
そして、それを隠れて聞いていた一同は呼吸困難になるほどの圧迫感で今にも泣きだし吐き出しそうになるのを必死に耐えていた。
「(なんだ……。なにが起きた!?)」
「(一瞬で全部が掻き消されちまった……!)」
「(逃げなくては―――分かっているのに……)」
「(出久がそこにいるってのに……!)」
「(デクちゃんを助け出せるチャンスだって言うのに……!)」
「(恐怖で体が動かない!!)」
六人はもう体を強張らせてしまっていてまるで石になったかのようにその場から動くこともできないでいた。
そう思っている間にも現場では何かの個性なのか次々とアジトにいたはずの死柄木達が転移してくる。
男は死柄木に顔を向ける。
「また失敗してしまったようだね、弔……。でも、決してめげてはいけないよ。そう、またやり直せばいいんだ……仲間も取り返した。そして君たちの成果である緑谷君は今もこうして僕たちの手の内にある……」
そう言いながらも男は、出久の肩に手を置く。
「そう、いくらでもやり直せるんだ。生きている限りね。そしてそのために僕がいる。すべては、君のためにある……」
そう言って男は―――、いやオール・フォー・ワンは死柄木に手を差し伸べる。
そんな話を隠れて聞いていた爆豪の胸の内は、
「(動け動け! こんなところでへばっているわけにはいかねぇんだよ!! 出久がもうすぐそこにいるんだよ! 動け動け動け動け! 俺が、今度は、助けるんだ!!)」
そしてついに爆豪は恐怖を跳ねのけて動こうとして、だがしかし飯田に手で押さえられていた。
飯田の目には『必ず守る!』という信念しかないが、それでもなんとか押さえられるくらいには動くことができた。
八百万も同時に動こうとしていたお茶子の事を必死の顔で押さえていた。
「(くそ! くそっ!! なにもできねぇのか!? 俺は、また助けられねぇのか!?)」
それで爆豪の脳内でかつての幼き頃に助けられずに見ているだけだった惨めな記憶が蘇ってくる。
それはひどく爆豪の気持ちを乱していく。
今にも暴発してしまうのではないかと言わんばかりに血走った目を見開いて、飯田に押さえられている腕を今すぐにでも払い落としたい気持ちが胸を満たす。
だが、それでもこの恐怖を抱いたままの状態で挑んだところで返り討ちにあって、先ほど脳内を占めた自分たちが無残に殺されてしまう光景が現実になってしまう。
まさに八方塞がりのような状態で全員はその場から動けなくなっていた。
そんな時だった。
「やはり来ているな……」
「ッ!?」
それで全員は恐怖する。
気づかれたのか、と。
だが次いでその場に新たな人物が遅れてやってきた。
そう、ヒーローは遅れてやってくると言わんばかりに、オールマイトがその場へと現れたのだ。
「オール・フォー・ワン! 緑谷ガールも、今まで奪われたものもすべて返してもらうぞ!!」
「また僕を殺すか? オールマイト……」
宿敵同士がついに相まみえたのだ。
「(オールマイト!!)」
オールマイトの登場に爆豪達は希望の光を見た。
だが、そのオールマイト自身は険しい顔になっていた。
「オール・フォー・ワン! 貴様……緑谷ガールになにをした……?」
オールマイトの視線の先には目が虚ろでオールマイトが助けに来たというのに微動だにしていない出久の姿が映された。
オール・フォー・ワンはニヤリと笑みを浮かべながら、
「いいねぇ、オールマイト……その表情……実に愉悦の気分に浸れるよ……」
「なにをしたと、聞いている……!」
「そうカリカリしないほうがいい。ただでさえ少ない寿命が縮むぞ? なぁに、ただ僕の命令に忠実になってもらっているだけだよ」
「洗脳か……ひどい事をする」
「フフフ……僕にとっては誉め言葉だよ。予定は狂ったが、こういう状況になったのは僕としても好都合なんでね」
「先生……」
そこでようやく死柄木が口を出せる事ができた。
オール・フォー・ワンは忘れていたみたいに、
「ああ……弔、そうだったね。ごめんよ、別に君を除け者にするつもりはなかったんだ。ただ嬉しくてね。そうだ、もう今回は逃げなさい……道は僕が作ってあげるよ」
オール・フォー・ワンはそう言って謎の黒い樹脂のようなものを指から伸ばして黒霧にそれを突きさす。
「個性強制発動……!」
その瞬間、黒霧のワープが強制的に展開していく。
「先生は!?」
「僕の事はいい……君たちはさっさと逃げてまた再起を図るんだ」
「させんぞ!!」
「おっと、邪魔立てはしないでくれ、オールマイト!」
「ぐぅっ!?」
オール・フォー・ワンは腕を幾重にも増幅させてオールマイトに向けてそれを放った。
そしてオールマイトはいくつもの建物を破壊しながらも吹き飛ばされていく。
「さて、今のうちだ弔……」
「だが、緑谷は……!」
「本当なら君に預けたいのだがね、まだ僕の用が済んでいないんだ。だから今回は残念だろうが諦めようか弔……まだ利用価値があったら緑谷さんは君に預けよう」
「…………わかった。引くぞてめぇら」
「デクちゃん、また会えるよね……? バイバイ!」
そう言ってヴィラン達全員は黒霧のゲートを潜ってその場を後にしたのであった。
「おのれ! オール・フォー・ワン!」
ヴィラン連合全員が消えた後にその場に残されたオール・フォー・ワンと出久。
そこに吹き飛ばされてからようやく戻ってこれたのか、オールマイトが悔しそうに表情を歪めていた。
「さて、それでは邪魔者もいない……君と僕とのちょっとしたショーでも始めようじゃないか、オールマイト……!」
手を広げながらオール・フォー・ワンはそう宣言した。
後書き
原作と違ってそうそうにヴィラン連合はオール・フォー・ワンを残していなくなりました。
できれば明日にでももう一話更新したいですね。
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