許されない罪、救われる心
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71部分:第六話 暴かれた時その十五
第六話 暴かれた時その十五
屋上に向かう。岩清水はそこに皆を案内していった。
そしてその屋上ではだ。如月達が神無に対して話していた。四人と一人に別れてだ。雲が次第に増えていく空の下で話していた。
「あのさ」
「わかってるわよね」
四人は眉を顰めさせて神無に言う。
「あのこと言わないでよ」
「誰にもね」
「誰にもなの」
「そうよ、もうあんたには何もしないから」
如月が強張った顔で彼女に告げる。
「だからね。あんたも言わない」
「いいよな、それで」
長月も神無に言ってきた。
「机に落書きしたりトイレでボコったこともな」
「絶対に言わないでよ」
「他のこともね」
文月と霜月もだ。強張った顔で神無に言ってきた。
「わかってるんでしょうね」
「本当にもうあんたには何もしないから」
「そういうことよ」
如月が最後に言った。
「だからよ、あんたも言わない」
「いいよな、それで」
「そういうことでね」
四人で言うのだった。神無し口止めして何とかばれないようにしたかった。しかしである。彼女達は自分達しか見えていなかった。
そしてであった。屋上の扉のところにだ。岩清水がいたのである。そしてそこには彼が連れて来たクラスメイト達もいたのである。
彼等は話の一部始終を扉の陰から聞いていた。それもしかとだ。
岩清水はその彼等にだ。四人に聞こえないように小声で問うた。
「聞いたよね」
「え、ええ」
「確かにね」
弥生と葉月が強張った顔で話す。
「こんなことって」
「まさか。彼女達が」
「僕も信じられないけれどね」
岩清水は仮面を被ってそのうえで話していた。
「こういうことだったんだね」
「あれは全部あの娘達がやったの」
「嘘じゃないんだ」
「本人達が言ってるからね」
岩清水はまだ信じたくはない彼等に告げた。
「間違いないよ」
「如月はそんな娘じゃないのよ」
「他の三人もだよ」
それでもだった。彼等はまだ言った。
「それが。何でよ」
「何でそんなことを」
「それはわからないよ」
岩清水はここではこう言っただけだった。
「けれど事実は事実だよ」
「それはないって思ってたのに」
弥生は唇を噛みながら呟いた。
「如月、許せない」
「そうだね、許せないね」
弥生の目に怒りの炎が宿り葉月のそれも鋭いものがあった。
「そんな娘だったなんて」
「許したらいけないね」
「そうだね。それじゃあだけれど」
岩清水の仮面は善人の仮面である。その仮面を着けたまま話す。
「これからはね」
「これからは」
「どうするっていうんだい?」
「いじめは許したらいけないよ」
彼は素っ気無くこの世の摂理を話した。
「そういうことだよ」
「ええ、こうなったらもう友達じゃないわ」
「絶交だよ」
まずは二人が言った。そして他のクラスメイト達もだ。
「道理で四人だけ動かなかった筈だね」
「本当にね」
「こうなったら私達も」
「絶交よ」
「もうクラスメイトでも何でもないよ」
「おっと」
皆の怒りが沸点に達したところでだった。岩清水はわざと、だが偶然を装ってそのうえで扉を開けてみせた。そうするとだ。
扉の一番傍にいた弥生は四人をまともに見た。見ればもうそれで制御が効かなくなった。彼女はすぐに如月のところに来てだ。右手を思いきり横に振った。
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