許されない罪、救われる心
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67部分:第六話 暴かれた時その十一
第六話 暴かれた時その十一
「クラスでは爪弾きにされて」
「部活は退部させられて」
「そうなったら終わりじゃない」
「学校にいられないわよ」
「止めよう、本当にな」
長月もその細い眉を顰めさせて言う。
「このままやってたらマジやばいからな」
「うん、確かに椎葉はむかつくけれど」
「これ以上やったらこっちが終わるから」
「だからもう」
「そうよ。もう止めよう」
如月も怯えていた。彼女にとっては皐月の言葉が一番怖かった。
「これ以上やったら本当にばれるからね」
「うん、止めよう」
「これでね」
四人はこれで本気で止めるつもりだった。実際にこれ以降彼女達は神無に対しては無視はするが何もしようとしなかった。しかしである。
その声をかえたりもしない四人を見たふりをしてだ。岩清水がまた言った。
「どうしたの?」
「えっ?」
「どうしたって?」
「確か君達同じ部活だよね」
ここから話すのだった。気付いたように演じて。
「そうだよね」
「そうだけれど」
「それがどうかしたの?」
「どうして挨拶しないのかな」
こう言うのだった。
「声をかけたり話すこともしないし。何かあったの?」
「別に」
最初に否定したのは如月だった。
「何もないけれど」
「本当に?」
岩清水はここでも何も知らないふりをして如月のその言葉に問うた。
「本当に何もないんだ」
「そうだよ、何もないよ」
長月が少しいらいらしたものを感じて言い返した。
「別によ」
「そうかな。本当かな」
「何が言いたいんだよ」
ただでさえ不安になっている時だ。今の言葉に苛立ちを覚えた。そしてそれは長月だけではなかった。
「そうよ。言いたいことあるんなら言いなさいよ」
「何が言いたいのよ」
「だから。どうして挨拶とかしないのかな」
再びこのことをシンプルに問うてみせた。
「それはどうしてかな」
「だから別に何もないわよ」
「さっきから言ってるじゃない」
文月と霜月も眉を顰めさせていた。
「何かつっかかるけれど」
「何もないって言ってるじゃない」
「本当に?」
今言ったのは岩清水ではなかった。弥生である。四人と岩清水が話をしているのを聞いてだ。それで五人のところに来たのである。
「それ本当に?」
「えっ、ええ」
弥生が出るとだ。如月は急に弱くなった。
「そうだけれど」
「そうなの。何もないのね」
「そうよ。何もないわ」
少し焦った顔で言い繕う。
「だから気にしないで」
「だったらいいけれど」
「そうだね」
岩清水は今度は弥生に対して言った。
「じゃあいいよ、それでね」
「訳わからないけれど」
如月はまだ不安な面持ちだった。
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