許されない罪、救われる心
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52部分:第五話 エスカレートその八
第五話 エスカレートその八
「ああ、悪いけれどね」
「今は駄目だよ」
「御免ね」
四人がだ。こう彼女に言ったのである。
「ラクロス部の集まりだから」
「同じ部活で水いらずでいきたいのよ」
「だから、ここは」
「悪いな」
「そうなの」
それを聞いてだ。寂しそうだが納得した弥生だった。その時神無の顔はこの世の終わりのようになった。だがそれに気付いていたのは岩清水だけだった。彼は一人教室の端にいた。そこから様子を見ていたのである。
「それじゃあ仕方ないわね」
「そういうこと」
「だからね」
「またな」
四人は神無を取り囲んだまま作り笑顔で応えた。そのうえで彼女を連れて教室に出る。教室を出て扉を閉めるとだ。如月がいきなり彼女の足を踏んだ。
「痛っ・・・・・・」
「痛いじゃないわよ」
痛がる神無の顔を覗き込んですごんでみせる。
「これからもっともっと楽しいことしてあげるんだからさ」
「ほら、来いよ」
長月は彼女の背中を蹴った。
「こっちだよ」
「言っておくけれどね」
「誰かに言ったらね」
文月は髪を引っ張り霜月は耳を引っ張っていた。
「承知しないからね」
「こんなものじゃないからね」
「わかった?」
如月は今度はだ。彼女の脛を思いきりけった。痛がることをわかっていてである。
「これ位じゃ済まないからね」
「う、うん」
痛くて泣きそうになるがだ。必死に堪えて頷いたのだった。
「わかったらこっち来なさいよ」
「ほら、こっちだよ」
「来なさい、家畜以下の立場なんだからね」
「言うこと聞きなさいよ」
そのまま神無をまたトイレに連れ込んだ。そうしてだった。
「ほら、飲みなさいよ」
「食えよ」
ホースから水をかけトイレのゴミ箱のゴミを無理矢理口の中に入れる。そうしたのだった。
ゴミを口の中に入れられた神無はだ。思わず吐き出した。だがここで如月はその彼女の腹を自分の右足で思いきり蹴飛ばしたのだった。
「あぐっ・・・・・・!」
「何吐いてるのよ」
醜い顔で彼女を見下ろしながら言う。
「折角私達が食べさせてあげてるのに」
「そうよ、それで吐くの?」
「失礼な奴よね」
「そんなに私達の御馳走が嫌だったらね」
ここでだ。如月がだ。神無が持っていた弁当箱を取り出してきてだ。その中身をトイレの床にぶちまけたのである。
そのうえでだ。また彼女に言った。
「これ食べなさいよ」
「そんな・・・・・・」
「私達の御馳走が食べられないんでしょ?じゃあ自分の御飯食べなさいよ」
「そうだよ、食えよ」
長月は倒れ伏す神無を散々蹴り回しながら言った。
「自分の弁当よ。食えよ」
「そんな、こんなの」
「こんなのじゃないでしょ」
「自分のお弁当じゃない」
文月と霜月も追い打ちをかけてきた。
「食べたらいいじゃない」
「それとも食欲がないっていうのかしら」
「それはよくないわね」
如月は霜月の言葉に続いてだ。また醜悪な笑みを浮かべた。
そのうえでだ。こんなことを言うのだった。
「それじゃあ食べさせてあげましょうよ」
「食べさせるの?」
「さっきのゴミみたいに」
「そうよ。食べさせてあげましょうよ」
腹を蹴られ今も長月に蹴られ踏まれている痛みで泣き崩れている神無を見下ろしてだ。残忍に笑っていた。そのうえでの言葉だった。
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