前世の知識があるベル君が竜具で頑張る話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
でれ
ゴト………………ゴト………カラカラン…。
ゴト……ゴト…ゴト…………。
「うっせーなぁー! ベル! 何時だと思って…!…………………………ぉん?」
深夜、物音で目を覚ましたベートは、音源を辿り、ベルの部屋に行き着いた。
ベートがドアを開けた。
案の定鍵はかかっておらず、すんなりと入れた。
部屋には誰も居なかった。
ただし、ベッドの上には大量の魔石が無造作に置いてあった。
その魔石はすでにベットから溢れ、ベッドの周りに大量に落ちていた。
それも、すくなくとも中層でしか取れない良質で大きさも悪くない物が。
ベートが見ている前で、虚空から魔石がベッドに落ちた。
「………何してんだあのバカ」
ベートは魔石を脚で掻き分け、ベットを退かし、下から眺めた。
そこには闇があった。
夜の闇とは違う、虚無の闇。
顔の上に落ちてくる子供の拳程の大きさの魔石をキャッチする。
「行ってみるか…」
ベートは虚無に手を入れた。
十五分程遡って。ダンジョン16階層。
「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!」
ベルの振るった大剣がミノタウロスの首を跳ねる。
「もっと! もっとだ! 来いよ牛公!」
ミノタウロスの群れ。
その中でベルは大剣を振るっていた。
黒い大剣はミノタウロスの硬い筋肉をバターのように切り裂いていく。
One Slash One Kill .
一撃で一体を、時には大振りなスイングで数匹同時に斬る。
武器の性能もあるだろうが、何よりもそのテクニックが素晴らしい。
ティオナとガレスに教わった重量級武器の扱い。
それを忠実に守りつつ、フィンに教わった槍術を織り混ぜる。
アイズに鍛えられた目。
リヴェリアに叩き込まれた知識。
ティオネに刻み込まれた体術。
ベートから盗んだ足運び。
それらを重ね、一つに統合する。
十分もすると、30体近くいたミノタウロスは全て魔石と化していた。
大剣を地面に突き刺すと、大鎌を取り出した。
ベルは鎌を一閃し、空間に一メートル程の穴を開けた。
そこへ拾った魔石を放り込む。
「おい。こんな夜更けに何してやがる」
「ぴゃ!?」
驚いたベルが声の方向に魔石を投擲する。
「っぶね……」
声の主が魔石をキャッチする。
「べ、ベベ、ベートさん!?」
ベートがヴォルドールの穴から上半身を出していた。
「こんな夜中になにしてやがる」
「あはははは………ちょっとお金が必要で」
「まぁ、いい。手伝ってやらぁ」
ベートがベルの部屋の床を蹴った。
ピョイ、とベートが穴から出てくる。
着地すると、下着を着けてない胸が揺れた。
ベルがサッと顔を反らす。
ベートの手伝いもあって、ベルは五分程で魔石とドロップアイテムの回収を終えた。
ベートがベルを小脇に抱える。
「ちょ、ベートさん!?」
ベートは片手でエザンディスとデュランダルを手に取り、ヴォルドールの穴に飛び込んだ。
「寝るぞ」
「へ!?」
ベートはベルの鎧を手際よく外すと、再び抱えて自分の寝室に向かった。
「ベートさん! おろしてください!」
「離す訳ねぇだろ」
ベートは自分のベッドにベルを投げた。
「きゃんっ!」
その横にベートも寝転がる。
出ていこうとするベルの手をつかみ、抱きつく。
普段はサラシで抑えている胸に、ベルを押し付けた。
「ちょっ!?」
「騒ぐな抱き枕」
ベルがおとなしくしていると、寝息が聞こえ始めた。
ベルがそっと上を向く。
(ベートさんの寝顔かわいい………)
いつもはカッコいい姉貴分なベートの意外な一面。
この寝顔を知ってるのは僕だけだ、と思ったベルは少し嬉しくなった。
「おやすみなさい。ベートさん」
三日月が照らす中、二人分の寝息だけが響いていた。
翌朝。
「おい。ベル起きろ。メシいくぞ」
「うにゅぅぅっ…」
寝惚け眼のベルがベートに手を取られて立ち上がる。
ベートがベルの手を引いて、ドアを開けた瞬間。
「ぁ……………」
目の前に、ラウル・ノールドがいた。
ラウルは部屋から出てきたベルとベートの格好を見る。
ベートは普段の格好だが、ベルはワンピース。
それも形紐が崩れかけている。
その上ベルの虚ろな目。
ラウルがパクパクと口を開け、何かいいかける。
「ベルがベートさんに食われたッス━━!?」
ページ上へ戻る