前世の知識があるベル君が竜具で頑張る話
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そーま
ギルドの指導室。
「他の派閥のサポーターかぁ……」
リリがお休みをください、と言った翌日。
僕はリリの事を、サポーターの事を、ソーマファミリアの事を調べる事にした。
「うーん……あんまりお勧めはできないかなぁ……」
「そうですか…」
「それにソーマファミリアっていうのも………ねぇ……」
ん? ソーマファミリアは何か問題あるのだろうか。
「なにか問題のあるファミリアなんですか?」
「うーん…ソーマファミリアって、とってもちぐはぐ…っていうかずれたファミリアなのよね」
ずれた? 何が?
「ソーマ様って完全な趣味神なの。それなのにファミリアの人数だけ見れば…」
エイナさんがファミリアのリストを見せてくれた。
これはファミリアと何系か、規模、ホームの書かれた物で、冒険者になるために来た人に渡される公開資料だ。
「ほら、ここ」
エイナさんが指差す所は、ソーマファミリアの構成人数欄。
「うわっ…多いですね…」
ロキファミリアより全然大きいファミリアだ。
「うん。飛び抜けて強い人はいないけど、それなりに戦える人が多いよ」
ふむ…均一化されたそこそこの戦力…。
かなり強いファミリアなんだな…。
「それと、個人的に気になってる事があるのよ」
「気になってる事? エイナさん個人がですか? ギルド職員としてですか?」
「どっちもなんだけど…。ソーマファミリアって、なんだか仲間内で争ってるような気がするのよね…」
「争ってる? 同じファミリア内部で? 内部抗争ですか? トップが変わるとか?」
「そういう話は聞かないわね。争ってるっていうのもそういうのじゃなくて、稼ぎを争ってるのよね…」
ふーん…内部抗争ねぇ…。
手を組んで、伸びをする。
状況は…だいたいわかった。
「ふぅ……あんまり良くないな…」
「ベル君?」
「ソーマファミリアってお酒売ってましたよね?」
「え? うん。神ソーマの趣味のお酒造り。その名もソーマ」
酒神が作る神酒か…。
それはきっと………”さぞかしおいしいことだろう"。
ここからは聞く相手が違う。
「エイナさん。ありがとうございました」
あ、そうだ。
「ソーマってどこで売ってますか?」
黄昏の館。の談話室。
ソファーに寝転がっているロキの対面に腰掛け、テーブルにソーマを置く。
「ロキ。この酒とこれを作った神について知ってる事全部教えて」
「マジか……それ一本でベルの1日の稼ぎ飛ぶはずやぞ」
「ロキの話聞くためなら、1日の稼ぎくらい安いと思うけど?」
「はぁ…そないな事せんでも、可愛い子供のお願いや。聞いたるわ」
「じゃぁソーマはいらない?」
「要るッ!」
わっかりやす……。
「じゃぁこのソーマは別の取引材料にしようかな」
預けていたアレを返して貰おう。
「で? ソーマの事やったか?」
「うん」
「じゃぁ、話したるわ」
side out
そやなー。あれは何年前の事やったかなぁ…
うーん…まだリヴェリア達が居らんかったから、15年以上前の事やったかなぁ。
うん。まぁ、そんくらいや。
こん酒との出会いはウチがフラーッと入った居酒屋での事やった。
パラパラとメニューを見た時、ふっと目に入ったんや。
やけに高い酒やなー。
そんな事を思いながら、気になって頼んでみたんや。
マズかったら暴れたろ思っとった。
おいおい。そんな顔すんなや。
流石のウチも冒険者のやっとる酒場で暴れんわ。
そんなことしたら一発で天界送還。
最悪酒場の慰み者や。
話がそれたな。
出てきた酒を飲んでみた。
世界がかわったわ。
今まで飲んできた酒は酒やなかった。
そう思わせた。
このウチにや。
や、この言い方じゃ伝わらんな。
神に。神にそう思わせたんや。
ウチはその酒に夢中になった。
気づけば一本開けて財布がカラや。
恐ろしいと思うた。
神をも酔わせる酒に恐怖したんや。
でも、それよりも。
また飲みたい。
ウチの中の何かが、また飲ませろって叫ぶんや。
その後は、オラリオ中探し回って、ありったけのソーマを集めた。
でな? そんなかでおもろい話聞いたんや。
コレ、失敗作らしいで。
ウチはそれを聞いて居てもたってもられんくなってな。
ソーマん所に突撃した。
え? 追い返される?
ははははは!
そうやなぁ…普通そうやろなぁ。
でも、追い出されんかった。
なんでやと思う?
うん。そう合っとるで。
藻抜けの空や。
人ッ子一人おらん。
薄気味悪いホームやったで。
探索して、飽きて帰ろ思うた時やった。
居ったんよ。あのアホ。
『いらっしゃい』
なんて抜かしおった。
こっちに目も向けんで。鍬もって畑耕しとった。
ウチが何言うても空返事や。
その癖、ウチがソーマをくれって腰曲げたらなんて言うたと思う?
おぉ!? なんでわかったんや!? ベルお前天才か!?
まぁ、でも。ベルのよりもウザかったなぁ。
ほら、こんな感じや。
だが断る。
ってな。
そこから紆余曲折あって、色々話した。
それでわかったんや。
あのバカなぁ、ファミリア経営する気ゼロや。
趣味さえできればそれでええ。
せやから、無い頭使ったあのアホは考えた。
賞品を用意して、団員に金を集めさせようってな。
あーん? にッがい顔しとるなぁベル。
もうわかったやろ? 賞品の正体。
ソーマや。神の方やない、酒のソーマ。
それも、成功品のな。
失敗作でも神を夢中にさせる酒。
その成功品。
そんなん子供達には毒や。
子供達はまた飲むために金を集める。
ひっどい話やろ?
えぁ? ギルド?
いやいや、ギルドは手ぇ出せへん。
ヤバい物つかっとらんもん。
やから、ギルドも黙認しとる。
まぁ、ロイマンのオキニっちゅぅ理由もあるやろうけどな。
まぁ、でも。それが救いでもある。
ソーマは所詮酒や。
酔いはいつか、必ず覚める。
多分、正気に戻っとる団員は多いんちゃうか?
上位団員は酔いが覚める余裕も無いやろうけどな。
あ! おい待てベル! 何処行く気や!?
やめろやめろ! ファミリアへの内部干渉はルール違反やで!
ええい! いいから座れっちゅーに!
ふぅ…なんや今のバカ力…。
ベル。例のサポーター、ソーマファミリアやろ。
ええか。ベル。
忘れろ。
それが一番や。
お前も傷つかん。全部これまで通りや。
………そんな睨むな。
あん? ソーマを動かすアイデア?
アホか。そんなん有るわけないやろ。
ッ!?
待て待て。自分一回落ち着け。
何する気や。
……………………………………ほう?
正気か?
くく…はは……ははははははははは!
うん! わかった! 好きにしたらええよ。
ウチは何も止めん。
そのサポーターも好きにせぇ。
せやから。ベル。
「がんばりやぁ」
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