酒好きなれど
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第四章
純奈はそのうわばみに狙いを定めた、そしてだった。
ひょうと矢を一本定めた、すると。
矢はうわばみの鼻の先を掠めた、それでだった。
うわばみは意識を失いその場にどうと倒れ動かなくなった、オークの男はそれを見て呆気に取られて言った。
「一体何が」
「はい、急所を撃ちました」
「それで気絶させたのか」
「そうです」
その通りだとだ、純奈はオークの男に冷静な声で答えた。
「うわばみも鼻と口の間は急所です」
「そこを撃つとか」
「死なない程度、気絶する位にです」
「本当に気絶するんだな」
「それで大人しくさせました」
「そうか、しかしだ」
「撃っていませんね」
「矢は掠めただけだったが」
男が観たところそうだったし他の者が見ても同じだ。
「それでもかい」
「そこはです」
「そこは?」
「矢に気を込めてはなったので」
だからだというのだ。
「それがうわばみの口と鼻の間を掠めたので」
「一撃になってか」
「気絶させました、ではです」
「では?」
「この度のことはこれで一件落着とはいかないですね」
「そうなんだよ、うわばみが暴れてね」
それでとだ、オークの男も言うのだった。
「塾もこの辺りもね」
「滅茶苦茶になっていますね」
「しかもだよ」
「居酒屋のお酒もですね」
「肴もふんだんに食ったしな」
「被害総額がかなりのものになりますね」
「健吉君の家が賠償金を払うにしても」
ところがとだ、オークの男は言うのだった。
「それがだよ」
「払えるものではないですね」
「普通の工場で働いている人の家でね」
それでというのだ。
「とてもだよ」
「そうですか、それじゃあ」
「それじゃあ」
「これで足りますか」
ぽん、とだった。純奈は懐から多くの金の延べ棒を出した。それで言うのだった。
「これで」
「なっ、凄い額だな」
「足りないならまだありますが」
こう言って延べ棒をまた数本出した。
「どうですか」
「これだけあれば十分だよ」
オークの男は驚いた顔のまま述べた。
「もうね」
「ではですね」
「健吉君の家の代わりに出してくれるのかい」
「確かにその子に責任がありますが子供ですし」
それにとだ、純奈は答えた。
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