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許されない罪、救われる心

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40部分:第四話 岩清水健也その六


第四話 岩清水健也その六

「こっちは私達がやるから」
「下駄箱の方をね」
「うん、わかったよ」
 岩清水は温和な笑みを作って述べた。
「それじゃあね」
「早く元に戻さないとね」
「ホームルームがはじまる前にね」
 他のクラスメイト達も手伝い神無の机を元に戻しはじめた。それは壊れたロッカーにしても同じだった。まさにクラス総出だった。
 しかしその中でだ。如月達は動こうとはしなかった。ただクラスの端にいてそこで見ているだけだった。
 そして笑っていた。ほくそ笑んでいた。
「見た?」
「見たわ」
 如月が霜月の言葉に頷いていた。
「あいつのあの顔」
「もう何があったかわからないって顔でね」
「いい気味よ」
 これは文月の言葉である。
「困った顔してね」
「そうそう。もっと苦しんだらいいんだよ」
 長月も言う。
「ああして苦しんでるのがお似合いなんだよ」
「けれどね」
 ここでだった。如月が三人に言った。
「ばれてないのね」
「そうよね、全然ね」
「誰がやったかわかってないし」
 文月と霜月は皆が神無の机をなおしているのを見ながら話した。
「それじゃあこのままやっていってもいいよね」
「そうよね。ばれないんだし」
 そう思えるからこそだった。
「じゃあもっと強気にね」
「派手にいこうよ」
「そうね、それじゃあね」
 如月も頷く。
「まずは部室でね」
「やってやろうぜ」
 長月が頷いて、であった。これで決まった。
 そうしてである。部室でもだった。
 神無のロッカーが荒らされていた。外も中も酷い有様になっていてジャージも引き裂かれ汚されていた。部長の皐月はそれを見てこれ以上はない程の静かな怒りを見せていた。
「うちの部員だったら承知しないわよ」
「そんな筈ないでしょ」
「それはね」
 彼女と同学年の二年生達がその彼女に言う。
「うちの部でこんなことする娘なんて」
「いないわよ」
「そう思いたいわね」
 皐月もまた弥生と同じ顔であった。
「本当に」
「気にし過ぎよ」
「少なくともラクロス部の娘じゃないわよ」
「けれどそれはそれで問題よね」
 その徹底的に汚され壊され落書きされた神無のロッカーを見てだ。皐月は怒った目で話した。彼女は完全に本気で怒ってしまっていた。
「うちの部室に忍び込んでるんだし」
「じゃあうちの学校の生徒?」
「そうなるかしら」
 二年生達はこう皐月に話す。
「そうでないとここまでね」
「しつこくできないし」
「そうね」
 皐月も同級生達の言葉に頷いた。
「そう考えるのが普通ね」
「問題はうちの学校の誰かだけれどね」
「そこまではね」
 二年生の話はここで歯切れの悪いものになった。
 そうしてそのうえで。こうも言うのだった。」
「わからないから」
「調べ出すのも難しいわよ」
「そうなのよね。参ったわね」
 皐月は腕を組んで考える顔になって述べはじめた。
 
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