許されない罪、救われる心
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39部分:第四話 岩清水健也その五
第四話 岩清水健也その五
「そうしてやろうぜ」
「よし、それならね」
「そうしてやりましょう」
文月と霜月も歪んだ笑顔で頷く。だが彼女達は気付いていなかった。そんな彼女達を一人の男が見ていたことにだ。そしてその傍に仕掛けられているものがあることも。気付いていなかった。
そしてだった。その次の日。また起こった。
「ちょっと、またなの」
「これはかなり酷いね」
教室に入ってだ。弥生と葉月は神無の席を見て顔を顰めさせていた。
「ここまでするなんて」
「誰がこんなことを」
見ればだ。神無の机は徹底的に荒らされていた。周りにもその中にもゴミがぶちまけられ詰められておりそして落書きだらけだった。その落書きも醜い罵倒ばかりだった。
それを見てだ。二人もクラスの面々も顔を顰めさせているのだ。
「これはもうね」
「いじめだよね」
葉月は顰めさせた顔で弥生に話した。
「間違いなくね」
「しかもここだけじゃないんでしょ?」
「うん」
葉月は弥生の言葉にこくりと頷いてから述べた。
「そうだよ。下駄箱もね」
「そこもこんな感じなのね」
「暫くないと思ったら」
それでも今は、なのだった。
「こんなことをするなんて」
「誰かしら」
弥生はその相手が誰なのか真剣に考えだしていた。
「それが問題だけれど」
「クラスの誰かかな」
「それはないと思いたいけれど」
彼女にしてはだ。クラスメイトがこんなことをしないと思いたかった。だが心の中でその可能性を否定できない自分にも気付いていた。
「それでも。これは」
「とりあえずなおそう」
こう弥生に告げた。
「こんなの放っておけないし」
「ええ、じゃあ」
「椎葉さんもそれでいい?」
葉月はここでこの日はじめて神無に声をかけた。彼女は二人の後ろで顔を青くさせてそのうえで立ちすくんでいた。何も言えなかったのだ。
「なおして」
「う、うん」
その青い顔でこくりと頷く。
「それじゃあ」
「私達も手伝うからね」
「それでね」
「有り難う」
二人に対して礼を述べた。
「それじゃあ今から」
「そうしよう、ホームルームがはじまる前にね」
「すぐに」
「僕も手伝うよ」
そしてだった。岩清水もここで出て名乗り出た。
「三人じゃ手が足りないだろうし」
「あっ、岩清水君」
「手伝ってくれるの」
二人は彼の顔を見て少し驚いた顔になって言葉を返した。
「大変だけれど」
「それでもいいの?」
「いいよ」
穏やかな笑みを作っての言葉だ。
「それじゃあすぐにね」
「ええ、シンナーも借りたし」
「消毒もしてね」
「下駄箱もね」
岩清水は下駄箱についても忘れていなかった。
「そっちも何とかしないとね」
「じゃあそっち御願いできる?」
「下駄箱は岩清水君が」
二人は下駄箱と聞いて彼に頼むことにした。
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