許されない罪、救われる心
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21部分:第二話 部活からその十三
第二話 部活からその十三
「私がやるから」
「ああ、それはいいよ」
「こんなの一人じゃできないわよね」
葉月だけでなく弥生も彼女に言ってきた。
「だからね。ここはさ」
「私達も手伝うから」
「有り難う」
蒼白になったままの顔だった。しかしそれでも頷くことはできた。
「それじゃあ今から」
「皆も手伝ってくれるかな」
「よかったら」
二人はクラスメイト達にも声をかけた。
「こんなのこのままにしておけないしね」
「だからね」
「ああ、そうだな」
「それじゃあ」
クラスメイト達もだ。二人の言葉に頷いた。
そのうえで黒板を消して机の中のゴミを処理する。そして机の上の落書きも消そうとする。
だがここでだ。それを消そうとする弥生が困った顔になった。
「これ、油性よ」
「そうね、これって」
「油性よ」
彼女を手伝う女子生徒達もここでそのことに気付いた。
「これ、どうしようかしら」
「シンナーかベンゼンあればいいけれど」
「ああ、それだったらな」
男子生徒の一人が言ってきた。
「俺が倉庫から取って来るからな」
「それで御願いできる?」
「ああ、任せておいてくれよ」
こう弥生達に言うのである。
「是非な」
「ええ、じゃあ御願いね」
弥生はすぐに彼の言葉を受けて言葉を返した。
「それじゃあ」
すぐにその消すものが持って来られる。その中でだ。
ふと弥生はクラスの端にいる如月達に気付いた。そしてだった。
「ねえ如月」
「何?」
「よかったら手伝って」
こう彼女達に言うのだった。
「机の周り掃除してね」
「掃除?」
「ええ、それを御願い」
こう言うのであった。
「椎葉さんの為にね」
「ああ、御免」
しかしだった。如月はその申し出を断るのだった。
「今無理だから」
「無理って何もしてないじゃない、今」
「それがなのよ」
言い繕いだった。もっと言えば嘘になる。
「これがね」
「これが?」
「今から行く場所があるのよ」
こう言ってそれを事実にしてしまう。
「ちょっとね」
「何処になの?」
「先輩のところにね」
そこだというのである。
「今から行かないといけないのよ」
「ラクロス部の?」
「ええ、そうなの」
そういうことにした。嘘に嘘を重ねていた。
「だからね」
「そう、それでなの」
「だから御免ね」
あくまでそういうことにするのだった。
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