許されない罪、救われる心
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179部分:第十六話 向かうものその十
第十六話 向かうものその十
「椎葉がああ言ってるし」
「実際にいじめされていた相手が言うんだったら」
「いいんじゃないのか?」
「そうよね」
「もう」
こうしてだった。何人かが岩清水の周りから離れたのだった。
そしてさらに何人かがだった。
何と如月達のところに来た。そのうえで言うのだった。
「やっぱり。これ以上は」
「もう止めよう」
「いいじゃない、もうね」
「やることないわよ」
「何でかな」
岩清水はそんな彼等に対しても言うのだった。顔はにこやかだがやはりそこには何かがあった。
その顔でだ。今は神無を見ていた。そうしてである。
「あんなことをされてそれでも言えるって」
「言えるわ」
はっきりと返す神無だった。
「見ていたから」
「やたれたんじゃないかな、見ていたんじゃなくて」
「いえ、見ていたわ」
またこう言う神無だった。
「この娘達がやられていたことを」
「その前にやられていたじゃない」
「私がこの娘達にやられていたことよりもずっと酷いことをやられていたのを見ていたわ」
今度はこう言う神無だった。
「ずっと」
「そんなの当然じゃない」
「いじめをしていたから?」
「そうだよ。本当にそう言うのがわからないんだけれどね」
「わからなくていいわ」
それならばと。神無はまた話した。
「それでも私は」
「そうだよ。もう」
「いいじゃない」
「ねえ」
「これで」
彼女の方に来た面々はだ。神無のその言葉に頷く。
そしてだ。そのうえでまた話すのだった。
「責めるのは止めよう」
「幾ら何でもこれ以上はね」
「しなくていいじゃない」
「止めようよ」
だが岩清水の周りに残っている面々もだ。言うのだった。
「何でだよ」
「こんな奴等何で庇うんだよ」
「そうよ、徹底的にやればいいじゃない」
「とことんまでね」
「そうだよね」
岩清水は彼等の言葉を受けたうえでだ。それをバックにしてまだ残る。
そしてである。また言うのであった。
「絶対に許したらね。いけないから」
「貴方がそう言っても私はもういいわ」
神無は岩清水と対峙していた。もう彼女は引かなかった。
そしてだった。弥生はだ。何時の間にか涙を流していた、他の三人と同じくそうなっていた如月の横に来て彼女に告げた。
「あのね」
「あの?」
「そう、私だけじゃなくなったから」
「皆が」
「戻ってきてくれたからね」
こう彼女に優しく囁くのだった。
「これまでみたいなことはなくなるから」
「そうなの」
「だから行こう」
「行くの」
「そう、行こう」
また如月に囁く。
「いいわね、それで」
「うん」
「長月達もね」
如月だけでなくだ。三人にも声をかけたのだった。
「これからだから」
こう言ってだった。彼女達を導くのだった。四人は今ようやく自分達が壊してしまったものを元に戻しはじめていた。これがはじまりだった。
第十六話 完
2010・10・25
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