許されない罪、救われる心
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166部分:第十五話 許される心その七
第十五話 許される心その七
「喫茶店のね」
「あの時にですか」
「じゃああの時先輩も」
「マジックに」
「ええ、いたわ」
その通りだというのだった。
「実はね」
「そうだったんですか」
「あの時お店におられたんですか」
「それで私達の話を」
「盗み聞きするつもりはなかったけれど」
このことも断った。
「それでもね。聞かせてもらったわ」
「あの、それで」
如月は怯える目でだ。皐月に問い返した。
「私達に話って。何ですか?」
「私達もう部活は」
霜月も如月と同じ目で話す。
「ですから」
「貴女達の今を聞いたのよ」
皐月は四人のすぐ前まで来ていた。そしてそこで立ち止まって話すのだった。
「それをね」
「今っていいますと」
「私も。許せないと思ってたわ」
このことは弥生と同じだった。それはだ。
「けれど今はね」
「今は」
「いいわ」
微笑んだのだった。
「もう。貴女達も苦しんで。辛い思いをしたわね」
「・・・・・・・・・」
「顔を見てもわかるわ」
その四人の顔をとも言った。
「部活にいた頃は。そんな悲しい顔をしていなかったから」
「・・・・・・・・・」
「いじめられるのがどれだけ辛いかはわかっていたわよね」
かつて三年生の部長にされていたことも話した。
「そうだったわよね」
「・・・・・・はい」
「それは」
このことは確かにわかっていたことだった。四人は沈黙から戻ってだ。小さい声で頷いたのだった。首も小さいが確かに動いた。
「わかってました」
「けれど」
「それで椎葉さんをいじめて。糾弾されて」
皐月はこのことも話した。
「辛い思いしたわよね。心も身体も攻撃されて停学にもなって」
「それは」
「私達が」
「ええ、悪いことをしたわ」
それは間違いないとも言うのだった。
「許されないことをね」
「・・・・・・はい」
「あの娘にとても酷いことをしてきたわ」
「ですから」
「それは」
「罪は罪よ」
皐月の言葉は厳しいものだった。
「報いはあって当然よ」
「ですから」
「けれどね。それでも限度があるのよ」
弥生と同じことをだ。皐月も言うのだった。
「それがね。あるのよ」
「そうですよね」
弥生も皐月のその言葉に頷いた。
「それはやっぱり」
「そうよ。見ていたわ」
「御覧になられてたんですか」
「ええ、見えるものだから」
それでだというのだった。
「だからね」
「それで先輩も思われたんですか?」
「あれはもう糾弾ではないわ」
その域を超えているというのだ。そうした見方をしているという意味においてだ。皐月もまた弥生と同じ考えを持っているのだった。
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