許されない罪、救われる心
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164部分:第十五話 許される心その五
第十五話 許される心その五
「幸せにならないと駄目だから」
「そうなの」
「私達は」
「幸せに」
「そうよ。だから今はね」
弥生は微笑みを戻した。そのうえで四人にまた言った。
「食べよう」
「あっ、お菓子を」
「それをよね」
「ええ、そうよ」
その通りだというのだった。
「だからね。食べましょう」
「ええ」
「それじゃあ」
「今から」
四人も頷いてだ。そのうえで食べるのだった。彼女達が好きなそれぞれのお菓子をだ。だがその味はだ。不思議になことに甘くなかった。
「おかしいね」
「何が?」
「甘くない」
如月はこう弥生に言ったのだった。
「甘くない。急に甘くなくなったけれど」
「そうなの」
「何か塩の味がするね」
その味になっているというのだ。
「どうしてかしら」
「うちも」
「私も」
「私のも」
三人もだった。同じだった。
「甘くないよ」
「段々塩の味がきつくなって」
「おかしいよね。これって」
「ううん、おかしくないわ」
弥生の微笑みが優しいものになっていた。そのうえでの言葉だった。
「それはね」
「おかしくないの?」
「拭いて」
こう告げた如月だった。
「今はね」
「拭いてって」
「目を拭いて」
こう四人に言った。
「さもないともっと甘くなくなるわよ」
「え、ええ」
「じゃあ」
「目を」
「お菓子は甘いものよ」
弥生はこうも告げた。
「だからね。目を拭いてね」
「うん、それからまた」
「食べるから」
四人は何とか目を拭いてそのうえでまた食べるのだった。そしてその姿をだ。ある人が見ていた。それからだった。
次の日だ。登校するとまた岩清水が仕掛けてきた。しかし四人のところには弥生がいた。葉月も見守っていて何かあると動こうとしていた。
その二人を見てだ。クラスメイト達の何割かは動きを止めていた。そのうえで話すのだった。
「あの二人がいると」
「ちょっとなあ」
「何かしにくいし」
「そうだよね」
「ちょっと」
こう言ってだった。踏み止まるのだった。
そして神無も何も言わない。最初から何も言わなかった彼女だがだ。このこともここで次第に皆に見えてきていたのだ。
「椎葉さんが動かないし」
「それなら何か」
「もういいんじゃ」
「そうよね」
こんな声が広まりだしたのだ。クラスでも次第に何かが変わってきていた。
そしてその日の放課後。弥生が家に帰ろうとする四人に声をかけてきた。
「ちょっと」
「えっ」
「どうしたの?弥生」
「ちょっといいかしら」
こう四人に言ってきたのである。
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