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許されない罪、救われる心

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149部分:第十四話 戻ってきたものその一


第十四話 戻ってきたものその一

                第十四話  戻ってきたもの
「そうなんだ」
「ええ」
 弥生は自分の部屋から葉月に携帯で電話をかけていた。淡い赤の部屋でベッドもその色だ。本棚にあるのは参考書や文藝の本である。そうしたものが置かれ今机に座ってそこから電話をしているのだ。
 そうしてだ。葉月に対して言うのだった。
「あの娘、許してくれたわ」
「そう、そうしてくれたんだ」
「四人共心から謝ってくれたし」
 弥生は如月達のことも話した。
「だからね。もうね」
「終わる話だね」
「もう終わらせないといけないわ」
 こう葉月に言った。
「絶対に」
「そうだね。これ以上責めたりしたら」
「よくないわ。如月達も傷ついたし」
「正直ね」
 ここで葉月は言った。電話の向こうで深刻な顔になっていた。
「岩清水君がいつも流す動画あるじゃない」
「あれね」
「あれを観る度に四人を許せないと思ったよ」
「私もよ」
 それは弥生も同じだった。彼女もだったのだ。
「それはね」
「けれどそう思ってね」
「ええ」
「四人を責めるけれど」
「それは間違いよね」
「怒るのはいいさ」
 葉月はそれはいいとした。
「けれどね。それでもね」
「あそこまでするのは」
「間違ってるよ。本人達が心から謝って」
 まずはここからだった。
「それでいじめられていた相手が許してくれたらそれでいいじゃない」
「私もずっとそう考えられなかった」
 葉月は自分の机に座りながら沈んだ顔になっていた。そのうえでの言葉だった。
「あの動画とか観る度に。何があっても当然の報いだと思った」
「若しかしてさ」
 葉月は話をしながらふと気付いた。
「岩清水君ってさ」
「ええ」
「それをわかっていてやってるのかな」
 こう弥生に話すのだった。
「そういうのがわかっていてね。ああして動画を流してるのかな」
「皆の怒りを掻き立ててね。それで」
「そうね」
「その可能性はあるんじゃないかな」
「否定できないわね」
 弥生はこれまでのことを思い出しながら話した。
「それって」
「そうだよね。彼の行動は何か違うよ」
「いじめに怒ってるのじゃないわよね」
「むしろいじめを糾弾する為に相手を徹底的に責めてね」
 葉月はこう分析しだしていた。
「それを自分の絶対の正義にしているんじゃないかな」
「じゃあ如月達は」
「いじめは確かに最低の行為だよ」
 このことには言を持たなかった。
「けれどね」
「それでも。あれは」
「うん、何かおかしいよ」
 葉月はまた言った。
「どうもね」
「あのままだと如月達は本当に死んじゃったし」
 弥生の顔が暗いものになった。
「身体が。もうどうしようもないまでにやつれてて」
「そんなに酷かったの」
「今にも折れそうだったわ」
 そこまでだというのだ。
「もうね。今にも」
「そうだったんだ」
「だから。もうね」
 言葉を一旦切った。それからだった。
 
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