許されない罪、救われる心
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
147部分:第十三話 贖罪その十
第十三話 贖罪その十
その震えを感じ取ってだ。弥生も神無も言ったのである。
「だから。もういいのよ」
「弥生・・・・・・」
だから立ち上がって」
また四人に告げた。この言葉を。
「いいわね、それで」
「う、うん・・・・・・」
四人は弥生の言葉をようやく受けられた。そうしてだった。
涙をそのままに起き上がってだ。神無に向かい合ってまた言うのだった。
「本当に・・・・・・」
「御免なさい・・・・・・」
また頭を垂れる。だが神無はその四人に言った。
「もう。いいから」
「有り難う・・・・・・」
「二度としないから・・・・・・」
「よかったね、皆」
弥生が頭をあげた四人を横から抱き締めた。
「これで。この言葉が言えるのね」
「この言葉って?」
「何なの、それって」
「おかえり」
この言葉をだ。四人にかけたのだった。
「おかえり、皆」
「弥生・・・・・・」
四人はその言葉を受けてまたその目が滲んできた。そうしてだった。
涙をそのままにしてだ。彼女を抱き締め返した。抱き締められる弥生もだ。何時の間にか泣いていた。
五人共涙をそのまま流れるままにして抱き締め合っていた。こうして彼女達は戻れたのだった。
そうして弥生が四人を連れ帰った。神無も家の中に戻った。
するとだった。玄関で声をかけられたのだった。
「おい」
「兄さん?」
「さっきのは何だ?」
極月はこう妹に言ってきた。
「玄関でのあれは」
「あれって」
「あいつ等だったよな」
兄はきつい顔で妹に問う。
「そうだな、御前をいじめてた奴等は」
「ええ・・・・・・」
師走は兄のその問いにこくりと頷いた。
「そうだけれど」
「何で話なんかしたんだ」
極月は忌々しげな顔で言った。
「あんな奴等と」
「それは」
「それでどうしたんだ」
彼は妹に対してさらに問い返した。
「それはどうしてなんだ」
「どうしてって」
「俺は絶対に許さないからな」
兄の言葉は強い。
「あの時だって」
「あの時って?」
「もう少し徹底してやっていればな」
妹に対してだ。こんなことを話すのだった。
「それで終わったのにな」
「兄さん、まさか」
「何だ?」
「あの娘を入院させたのって」
如月が雨の日に襲われてそれで入院した時のことをだ。神無は今わかった。その犯人は今も見つかっていない。警察の対応もなおざりだ。
「そうだったのね」
「だったらどうだというんだ」
兄は開き直ったように妹に言い返す。
「それで。御前の為なんだぞ」
「私の為って」
「御前をいじめていた奴をやっつけたんだ」
こう言うのだった。
「それの何処が悪いんだ」
「悪いに決まってるじゃない」
神無は兄にすぐに言い返した。
「あんなことして。幾ら私をいじめていた娘にも」
「何で悪いんだ、それが」
「誰かを傷つけるなんて。そんなことは」
「それが御前がやられていたことなんじゃないのか」
「けれどお兄ちゃんがそんなことして何になるのよ」
妹は兄のその険しくなった顔を見て言った。
「それで」
「じゃあ御前はいいのか」
「いいのかって?」
「いじめられていても。それでいいのか」
「確かにいじめられてるのは辛いわ」
背の高い兄を見上げて話す。
ページ上へ戻る