許されない罪、救われる心
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
14部分:第二話 部活からその六
第二話 部活からその六
「あいつ。そうでしょ?」
「嫌な奴って?」
「そうよ、先輩や男子に媚売ってさ」
見れば神無は自分の席でクラスの男子生徒達と話をしていた。内気な彼女だが容姿のせいか男子には人気があるのである。
「あんな風に」
「人気があるだけでしょ」
「わざと媚売ってるのよ」
「そう?私にはそうは見えないけれど」
「じゃあ弥生にはどう見えるのよ」
「だから人気があるだけよ」
弥生にはそう見えていた。そしてそれは真実でもあった。
「それだけじゃない」
「弥生は何もわかってないのよ。いい?」
如月は口を尖らせてだ。弥生に対して話した。
「あいつね、同じラクロス部だけれど」
「ええ」
「そこでも部長にいきなり気に入れられてね。マネージャーやってるのよ」
「マネージャーは部活には絶対に必要じゃない」
「違うわよ。媚を売ってなったのよ」
またこう主張するのだった。
「それでなのよ」
「媚、媚っていうけれど」
弥生は如月の今の棘のある言葉に違和感を感じていた。そうして怪訝な目になってそのうえで彼女に対して言うのであった。
「あのね」
「あのねって?」
「あんた椎葉さんと話したことないわよね」
言うのはこのことだった。
「そうよね」
「そうだけれど」
「それで何でそう言えるのよ。話したことない相手をそう悪く言うのってよくないわよ」
「だって本当に嫌な奴なのよ」
あくまでこう主張するのだった。
「本当にね。見てればわかるわよ」
「私だって見てるわよ。ただね」
「ただ?」
「話したこともない、しかも知ってすぐの相手にそういう無視とかするのって絶対によくないわ」
また咎める顔になった。目もそうなっている。そのうえでの言葉だった。
「いじめじゃないの、それって」
「いじめじゃないわよ」
いじめと言われるとだった。如月も反論した。自分が先輩にいじめられていたから、それでその言葉にはついつい無意識のうちに反応してしまったのである。
「そんなこと絶対に」
「じゃあ無視とか止めたら?」
弥生の目が怒ったものになった。
「そんなことは」
「それは」
「止めた方がいいわよ」
また咎める目になった。
「絶対にね」
「けれどあいつ本当に嫌な奴だから」
「じゃあ聞くわ。本当に嫌な奴だったとするわ」
弥生は如月があくまで聞こうともしないのを見てだ。仮定の話をした。そうしてそのうえで彼女に対して問い返したのである。話術の一つだ。
「それでいじめたり無視していいの?」
「それは、その」
「あんたいじめられて苦しかったんじゃない」
言葉は自然に強いものになっていた。
「そうよね、辛かったわよね」
「それはそうだけれど」
「じゃあ止めなさい」
その強い言葉で告げた。
「そんなことは」
「けれど」
「同じになったら終わりよ」
弥生はこうも言った。
「自分を苦しめていた相手とね」
「苦しめていた相手と」
「わかったわね。如月そんなことする娘じゃないじゃない」
弥生の言葉が優しいものになった。親友を気遣ってである。
ページ上へ戻る