許されない罪、救われる心
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135部分:第十二話 家族その八
第十二話 家族その八
「やっぱり。如月のことを娘だって思ってますよね」
「・・・・・・・・・」
「家族だって。だからですよね」
「だからどうしたのよ」
母の口が歪んだ。
「それで」
「あの、御願いします」
弥生は身体を投げ出すようにして三人に話した。
「如月を許して下さい」
「許す」
「そうしろというの」
「はい、もう一度優しくしてあげて下さい」
如月の為にだ。心から訴える。その横にいる彼女の為にだ。
「もう二度とあんなことはしませんから」
「二度となんだね」
父がその言葉を聞いて応えた。
「あんなことを二度と」
「はい、ですから」
訴えていた。その彼女の為にだ。
「この娘を。もう一度家族に」
「・・・・・・二度としないのね」
母親が言った。
「そうなのね」
「はい、ですから本当に」
「弥生ちゃんはずっとこの家に来てくれてるわね」
母も弥生のことはよく知っている。そしてだった。
彼女を見ながらだ。言うのだった。
「私達にとっては家族と一緒よ」
「有り難うございます」
「弥生ちゃんのことは本当の娘みたいに思ってるし」
そこまで深い関係なのだ。そしてそれは信頼しているということでもある。
それを自分でも感じながらだ。話すのだった。
「その弥生ちゃんの言うことなら」
「そうだな」
父も言った。
「弥生ちゃんが悪いことを言ったことはないしな」
「じゃあ」
「ええ、わかったわ」
「それで」
母も父も言った。
「もう一度」
「家族に」
「有り難うございます・・・・・・」
弥生は二人の言葉を聞いてだ。涙を流した。
そしてそのうえで横にいて俯いたままでいた如月に顔を向けて。それから彼女を抱き締めてだ。その涙を流しながら言うのだった。
「よかったね、如月・・・・・・」
「弥生・・・・・・」
「もう一人じゃないからね。家族の人達もいてくれるし」
「弥生も・・・・・・」
「いるから。少しずつね」
「少しずつ・・・・・・」
「歩きはじめて」
そうしろというのだった。師走や水無が言ったことと同じだった。
「御願いね」
「うん・・・・・・」
如月も弥生を抱き締め返した。弱々しい力で力が入っていないとさえ言えた。しかしそれでもだ。如月は彼女を抱き締めたのだ。
そしてだ。彼女も涙を流した。
「有り難う・・・・・・」
「学校、行くわよね」
弥生は今度は学校の話をしてきた。
「また」
「行っていいのね」
「ええ」
弥生はこう答えた。
「勿論よ。私が決めることじゃないわ」
「そうなの」
「貴女が決めることよ」
「私が・・・・・・」
「そう、如月が」
そうだというのだった。
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