クロスウォーズアドベンチャー
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第25話:憤怒
バグラ軍の主力部隊を撃破し、少しの間休息を取ることにした大輔達。
マグナモンは他のロイヤルナイツから今までの出来事を聞いていた。
「ヒカリちゃん、そろそろコトネちゃん達戻ってくるんじゃないかな?」
「うーん…あ!」
後方にゲートが開き、そこからウィザーモン達を迎えに行ったコトネ達が戻ってきた。
「ただ今帰りまちたーっ!!」
「人間界楽しかったーっ♪」
「どうだった?」
「人間界でのデジモンの痕跡は出来る限り消してきた。監視カメラの情報を改竄したり、ネットにデマを流しまくったり、“怪物を見た”と熱心に証言する人の記憶を直接魔法で操作したりしてしまって…大変だったよ」
タイキの問いにウィザーモンは溜め息を吐きながら答えてくれた。
「おかげでちっとも遊ぶ暇が無かったわ!」
「デジモンの存在が現実世界で知られたら大パニックなるもの…お疲れ様ウィザーモンにテイルモン。そうそう、マグナモンも来てくれたわ!無事だったのよ」
ヒカリがウィザーモン達に労いの言葉をかけ、テイルモンにマグナモンのいる場所を指差した。
「マグナモン?え?ちょ、あんた!?左腕どうしたのよ!?」
マグナモンの肘から先がない左腕を見て慌てて駆け寄る。
「リリスモンの爪にやられた。幸い処置が早かったから問題はない…久しぶりだなテイルモン…少し痩せたか?ホーリーリングが本体のドブネズミ?」
「ブチッ、ええ~そうね!最後にあんたに会ったのはどれくらい前だったかしら?あんたも元気そうで何よりだわ、この胃袋ブラックホールの馬鹿騎士クソ犬」
「ほう?言ってくれるなネズミの分際で」
「言ったがどうしたってのよ?ええっ?」
久しぶりの再会をし、昔のように会話するマグナモンとテイルモン。
憎まれ口を互いに叩きながらもウィザーモンとは違う意味で2人の深い絆を感じさせた。
「口が悪いなあの2人。」
「あれがマグナモンとテイルモンの会話さ。僕も久しぶりに聞いたな、あの2人の会話を」
タイキがいつマグナモンとテイルモンが喧嘩をするのかとハラハラしながら見ているが、ウィザーモンは懐かしそうに2人の会話を聞いていた。
「喧嘩友達みたいなもんか」
「そう言うことだ…まあ、それだけでもないんだが。」
「…………」
「テイルモン?」
急に黙りこんだテイルモンにマグナモンは疑問符を浮かべた。
「あんたね、無茶ばっかしてんじゃないわよ………心配したのよ…凄く……ミストゾーンが崩壊したって聞いた時…あんたも死んだんじゃないかって…」
「…………」
よく見るとテイルモンの目が潤んでいる。
心配をかけたようだと流石のマグナモンも気付いた。
「安心しろ、俺は簡単には死なない。俺のしぶとさはお前が誰よりも知ってるだろ」
「ええ、でも…あんまり無茶しないでよ。あんたみたいな奴でもいなくなったら悲しいのよ」
「………悪かったなネズミ」
「うっさい、アホ犬」
最後に互いに憎まれ口を叩きながら笑い合うマグナモンとテイルモンにウィザーモンは微笑む。
「それにしても、僕の研究もようやくここまで進んだのに…結局試すことが出来なかったなあ…」
「?」
ウィザーモンがマントから取り出したのは、何とXローダーである。
「それはっ…!!?」
「Xローダー…大輔達のD-3Xの技術も取り入れているから正確には見た目がXローダーのD-3Xと思ってくれ」
【えええええええ!!!?】
ウィザーモンがあっさりと言い放ち、タイキ達は驚愕した。
「そ…そういうことって出来るもんなの!?」
「確かにXローダーもD-3Xもとてつもなく精巧で一部魔法的な知識も必要とされるが、XローダーとD-3Xはあくまでただの機械だよ。寧ろ優れているのは一部の人間だけが持つクロス・コードを利用するというアイデアだな。デジクロスの無かった時代にこのことに気付いた最初の制作者は正に天才だよ。これでクロス・コードを持つ人間をスカウトして戦力アップ出来ればと思ったんだけどなあ…」
「と…とんでもないことを考えてたのね…」
「(…数百年前のデジタルワールドから飛ばされてきたスパーダモンやアルフォースブイドラモンはデジクロスやXローダーのことは知らなかった…。D-3Xは例外だからいいとして、ジェネラルの伝説はその数百年の間に生まれたことになる。デジモン達を自在に融合させ、次元の道を渡る能力……多分このXローダーを最初に作ったのは…けど…俺の予想が正しければ…そいつは何でこんな物を作って俺達をデジタルワールドに呼び寄せたんだ…?それにあの後、キリハやコトネに確認してみたら、未来の人間界から時間を越えてデジタルワールドに来ていたのは、俺達3人だけだった…!!この符号は一体何なんだ?何かまだ俺達が…ひょっとしたら皇帝バグラモンさえ見落としている絡繰りがこの戦争にはある…?)」
タイキは次々に浮かんでくる疑問に頭を悩ませる中、大輔はテイルモンと会話しているマグナモンに歩み寄る。
「マグナモン…いや、ブイモン」
「大輔…」
「すっげえ…立派になったなあ。お前」
自分のブイモンと比べても分かる。
目の前の自分のパートナーの可能性とも言えるマグナモンの完成された強さが。
「ありがとう。」
その言葉にマグナモンも微笑み、大輔はチラリと大魔殿を見遣る。
「変化なし…と…」
「全く気味が悪いな」
「キリハさん?」
「へっ…!?な…何が!?」
大輔とタイキがキリハの言葉に反応して振り返る。
「奴らの静けさがだ。お前達はそうは思わないのか?俺達に包囲されるに任せて反撃どころか偵察に出る素振りもない。かと言って浮き足立って雑兵が逃げ出すような様子もない…。アルフォースブイドラモンの話から察するに…この戦争をバグラ軍が優位に進められたのは、“赤黒の双頭竜”の捜索でロイヤルナイツの多くが神界を留守にしている間に急襲し、デジタルワールドを多くのゾーンに分裂させることによってナイツを分断出来たからだ。裏を返せばその時点でロイヤルナイツ全員を相手取って、確実に勝てるだけの戦力をバグラ軍は持っていなかったことになる…この1年程の戦争で戦力を消耗し…ロイヤルナイツの約半数までもが連合軍に集結した今、戦局は奴らにとって極めて不利な状態にあると言えるだろう。それが何だ…?この静けさは!俺には皇帝バグラモンの思惑が読めん。起死回生の秘策を隠しているのか…或いは、戦争以外の勝敗以外に何か別の目的があるのか…」
「別の目的…ですか…」
「しっかし…前から思ってたけど、お前現代人の癖によくそんな戦争のことで頭がまわるよなあ」
「ふん、ガキの頃から親父の書斎にあった兵法書ばかり読んでたからな。」
ゼンジロウの言葉にキリハは鼻を鳴らしながら言う。
「「あんたみたいなのもちゃんと親から生まれたのねー」」
2匹のテイルモンの言葉に一同は苦笑か呆れてしまう。
「当たり前だ!もう亡くなったが、一代で巨万の富を築き上げたやり手の実業家で俺は尊敬していたんだ!!が…病気で父が死んだ時に年の離れた兄達が考えたのは少しでも多くの遺産をふんだくっていかに自堕落に生きてゆくかということだけだった…事業を受け継いで発展させてゆくべきだと言った俺は徹底的に蚊帳の外にされたよ。」
「どんだけの無能なんだよそいつら…モガモガ」
「こら、ブイモン」
ブイモンの口を咄嗟に塞ぐ大輔。
「構わん。まあ、無能な兄達のことなどどうでもいいが…今日明日の仮初めの安寧のために、進取の気性を失い…他人にも自分の心にも薄っぺらい嘘を吐いて魂を腐らせていくのが今の時代の処世術だと思うと、無性に虚しく…腹立たしくてな。その点、兵法と言うのは嘘がない。いつ死ぬか分からない時代に大望を抱いた人間の生き様は何処までも真摯だ。そんな折に俺はXローダーの声に導かれてこいつらに出会った。後は言うまでもない。ここで生き、戦い。自分がどれほどの高みまで至れるか挑戦し続け…いつかは死ぬ。俺にとっては理想の生き方だ!」
「(…だが、最近のキリハは少々変わってきた。人間の中にも自分と同じように真摯に自らの生きる道を…探し続けている者がいることに気付き始めている…)」
キリハの言葉にすぐ傍でキリハを見てきたメイルバードラモンが胸中で呟く。
「うんうん、いいなあ青春だなあ。みんな色々な生き方を探し求めている…僕も若い頃を思い出すよ。君もそう思うだろマグナモン?」
「まあな…今でこそ大分落ち着いたけど、昔は俺も無茶苦茶やったもんだ。」
しみじみしながら言うアルフォースブイドラモンにマグナモンも同意する。
「あんたは今でも無茶苦茶でしょ」
「黙れハツカネズミ。下水道に叩き込むぞ」
「マグナモンはともかくアルフォースブイドラモンは今でも充分子供っぽいと思うけど…」
テイルモンと喧嘩をする時を除けば物静かなマグナモンと比べればアルフォースブイドラモンはまだ子供っぽい部分がある。
「もっと若い頃もあったの!ロイヤルナイツになる前はパートナーと一緒にそりゃあ色んな冒険をして…一度や二度世界を救ったりしたもんさ!」
胸を張りながら言うアルフォースブイドラモン。
「またまたそんな大袈裟な…」
「大袈裟なんかじゃないですよぅ!!そのくらいの大冒険の末、その信念と実力を磨き抜いた者でないとホメオスタシスはロイヤルナイツとして選ばないんです!!お師匠様達は本物の勇者なんですよ」
「フフフ…」
「おい、そのにやけ顔とピースは止めろ。そろそろいい歳だろお前も」
にやけながらピースするアルフォースブイドラモンにマグナモンがツッコむ。
「とにかく、ロイヤルナイツはここを含めた数々の並行世界のデジタルワールドの中でも信念と実力を極限まで磨き抜いた聖騎士のみ選ばれる。こいつは並行世界の八神太一…つまりヒカリの兄貴のパートナーデジモンだったんだよ」
「太一さんの!?」
「お兄ちゃんの!?」
「「パートナーデジモン!?」」
アルフォースブイドラモンの正体の衝撃の事実に大輔とヒカリが驚愕する。
「ウォーグレイモンじゃないわけ?」
「こいつはな、テイルモン。デジモンがゲームとして普及されていた世界でアグモンがバグ進化を起こして本来なら高確率でブイモンから進化するはずであるエクスブイモンの派生種であるブイドラモンに進化して今の姿に進化したらしい…本人は何故かもうアグモンとかブイドラモンだった頃なんて覚えてないけどな。」
小声でアルフォースブイドラモンの正体を大輔とヒカリとヒカリのテイルモンに教えるマグナモン。
「じゃあ、アルフォースブイドラモンは並行世界のアグモンなの?」
「そういうことになるな、八神太一とその他の奴らと共に世界をこいつは救った…俺もだけどな」
ヒカリの問いにマグナモンは肯定し、アルフォースブイドラモンは目を細めた。
「そう…この戦争の前にもデジタルワールドは幾度も大きな危機を迎え…そしてしばしば今回のように人間の子供の力を借りて乗り越えてきたんだ。今回もきっとそうなると僕は信じているよ。そして…この戦いが終わった後のことについて今のうちに話しておかなければいけないことがあるんだ。」
「話…?」
アカリが疑問符を浮かべながら尋ねる。
アルフォースブイドラモンの代わりにマグナモンが説明する。
「人間界とデジタルワールドが繋がるのは大抵デジタルワールドが危機に瀕して時空が不安定になった時のみ。今回はデジタルワールドが複数のゾーンに分かれてしまったことが原因だろう。皇帝バグラモンを討ち、全てのコードクラウンが揃えばこの世界は元に戻る。そうなれば時空の繋がりも正され、ゲートは閉じられるだろう」
「つまり…」
「この戦いが、お前達が共にいられる最後の戦いと言うことになる」
シャウトモンにマグナモンは言い淀むことなく伝える。
「なあ、マグナモン。過去の並行世界から来た俺達はどうなるんだ?」
「そうだね、僕達はタイキさん達みたいにはいかないし」
「かつてのデジタルワールドの争乱で並行世界に飛ばされた者もいる。その時は普通に帰れたし問題はないだろ。もし無理ならクロックモンを呼んできてやる」
「クロックモン?」
「コンピュータのタイマーを司る、時の守護者デジモンだ。コンピュータやネットワーク全ての時間と空間を管理している。奴なら元の世界に帰せるかもな…まずは三元士を…」
次の瞬間、空母ホエーモンが吹き飛ぶ。
【何っ!!?】
「敵襲っ!?」
ヒカリのテイルモンが吹き飛ばされた空母ホエーモンを見遣りながら叫ぶ。
「みんなーっ!!敵襲っ!敵襲だよーっ!!」
「だ…大魔殿とは全く別の方向から所属不明のデジモンの大部隊が…!!」
ワームモンとコロナモンとパンダモンが慌てて此方に走ってきた。
「伏兵だと…!?他のゾーンを侵攻していた部隊も全て押さえていたはずだ!!どこに隠れていたと言うんだ…!!?」
「そ…それが何だか…」
「違うんです!変なんです!見たこともない巨大で醜悪なデジモンの軍団と言うか…群れが、ここ以外に大魔殿付近にも出現してバグラ軍の守備隊とも戦っているんです!!」
「…バグラ軍では…ない…?」
「まさかっ…!!」
パンダモンとコロナモンの報告を受けたタイキ達は脳裏に奴の姿が浮かんだ。
「(ダークナイトモン…!!)」
拳を握り締める大輔。
「ど…どうするタイキ!!せっかく包囲したのが…」
「出直して体勢を立て直すような時間ももう無いぞ…!」
ゼンジロウとキリハの言葉にタイキも頷いた。
「うん…行こう!!大魔殿へ!!何か碌でもないことが起きそうな気がする…!俺達は事態の中心にいなくちゃいけない!!」
「頼む!!外の敵は我々ロイヤルナイツで引き受けよう。今回の戦いを導いてきた英雄は君達だ!!皇帝バグラモンを倒し、この世界の平和を取り戻して来てくれ!!」
「フッフーン!任せんしゃい!!」
「なっなっ、何か燃えてキターッ!!?」
「燃えてるぞお前」
アルフォースブイドラモンの言葉にやる気を出すコトネと燃えるゼンジロウ。
そしてそれに冷静にツッコむマグナモン。
隣でシャウトモンはとうとう冒険の終わりの時が来たのだと今更ながらに思い知る。
「(分かってたさ…この戦いが終わればタイキ達は…!そりゃそうだ。あいつらにゃ、人間としての未来が待ってるんだからな…)」
「…大丈夫かシャウトモン?この2ヵ月、DXやX7で何度も戦ってきたからな…」
「へっ…!!誰に向かって物言ってやがる…未来のデジモンキング、シャウトモン様だぜぇ!?(それがどうした…!!最後まで全力で響かせるだけさ…!!)」
「ブイモン、お前もDMやHDMで戦い続けてきたけど大丈夫か?」
「問題ないさ、さっきたらふく食ったからな!!」
ブイモンも闘志を充分に燃やしながら言う。
「さぁ、ブラザーズ!!デンと座って動かねえ向こうの親玉に一泡吹かせに行こうじゃねえか!!!」
最後の戦いに望む今回の戦いの英雄達。
全員が決戦に備えてXローダーとD-3Xを構えるのであった。
後書き
ML大輔は並行世界には行ってないので
ページ上へ戻る