許されない罪、救われる心
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116部分:第十一話 迎えその五
第十一話 迎えその五
「それでも。今も来てましたし」
「そうね」
「病院の中でも私を見てひそひそ言ってますし」
「ええ」
「皆知ってますし、私のこと」
こう話すのだった。
「けれど。看護士さんは」
「その時の貴女だったらね」
「その時のですか」
「ええ、その時の貴女だったら私も許さなかったわ」
水無は微笑んでだ。如月にこう話したのだ。
「けれど今はね」
「今は」
「その時の貴女じゃないでしょ」
如月に話すのだった。
「今の貴女は」
「その時の」
「傷ついてるわよね」
それはその通りだった。今の彼女はだ。身体だけではなかった。その心もであった。傷つき最早ぼろぼろになってしまっていたのである。
「そうよね」
「はい、それは」
「今は癒したらいいわ」
優しい微笑みと共の言葉だった。
「ゆっくりとね」
「ゆっくりとですか」
「そう、ゆっくりとね」
こう言ってまた微笑むのだった。
「今の貴女はね」
「どうしてそこまで」
如月は水無のその言葉を聞いて呟いた。
「言ってくれるんですか。私に」
「だから。今の貴女はね」
「今の私は」
「そうしないといけないと思うから」
「そうしないと」
「誰でも過ちは犯すわ」
それはだというのだ。
「けれど。そこからどうするかなのよ」
「そこからですか」
「そう、。貴女は報いを受けたわ」
このことも話す。その報いのこともだった。
「それもかなり酷くね」
「・・・・・・・・・」
「今の貴女を見ればわかることだから」
そうだというのである。
「身体だけでなく心も傷ついているわね」
「それは」
「話も聞いてるし」
彼女のその事情もだという。聞いているというのだ。
「貴女が何をしてきたか。何を受けてきたか」
「そういうこともですか」
「聞いたわ。貴女は確かに酷いことをしてきたわ」
それはだというのだ。
「けれどそれ以上にね」
「それ以上に」
「酷い目に遭ってきたわね。その傷は癒されるべきなのよ」
「酷いことをしてきてもですか」
「さっきも言ったけれど人は過ちを犯すものよ」
そうしたものだというのだ。
「だからね」
「だから私は」
「そう。今はゆっくりとね」
こう話すのであった。
「それでね」
「わかりました」
こんな話をしてだった。水無は如月の傍にいつもいるのだった。そしてだ。医師の師走もだ。時間があれば彼女の傍にいてくれていた。
この日はだ。岩清水達がいないのを見計らってだ。如月を外に出した。そうしてそのうえで水無と共に彼女に病院の庭を歩くのだった。
病院の庭は晴れていて白い光に満ちている。緑の芝生は晩秋でもう枯れようとしている。だが緑が残りまだ美しさが残っていた。
その中を歩きながらだ。如月に言うのだった。
「どうかな、うちの病院の庭は」
「ここのですか」
「うん、ずっと病室にいてもよくないからね」
如月にこう声をかけるのだった。
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