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永遠の謎

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9部分:第一話 冬の嵐は過ぎ去りその三


第一話 冬の嵐は過ぎ去りその三

 それでだ。彼はさらに言うのだった。
「だが。繊細だ」
「浮世離れしているところがあるうえにか」
「その御心がか」
「すぐに傷つかれる。感受性も強い」
 太子のこの性質もわかっていたのだ。
「それがいい方向に向けばいいのだが」
「ではそれではだ」
「軍人としての教育を続ければどうだ」
「それはどうだ」
「それはもうしている」
 既にしているというのであった。
「やはりな。一国の王となられる方だ」
「軍を率いる存在だからな」
「やはりな」
「だからだ」
 このこともわかっている王だった。はっきりとだ。王はそのまま軍の最高司令官となる。国家元首がそうなのはどの国でも同じなのだ。
「それでだ」
「そしてその御心を強くされるのだ」
「いいな」
「それでだ」
 こう話してだった。ローゼは考える顔になった。
 そのうえでだ。こうも話すのだった。
「殿下は音楽や芸術もお好きなような」
「それはいいな」
「そうだな」
「確かにな」
 友人達は太子のその嗜好を聞いて顔を明るくさせた。
「本もお好きだったな」
「そうだったな」
「そうだ。山や森を歩かれるのもお好きだ」
 それもだというのだ。
「だからだ。そうしたこともだ」
「やっていけばいい」
「教育に入れるのはいいことだ」
「その通りだな」
「そう考えている。だからこそな」
 ローゼはとにかく太子のことを考えていた。軍人出身として厳格ではあった。だがそれでもだ。彼は太子のことを真剣に、かつ忠実に考え心配していたのだ。 
 それで彼に音楽や芸術を見せ山や森を歩かせもした。彼はそのことには目を輝かせ非常に熱心であった。しかし己の好きではないものにはだ。
「殿下、それでは駄目です」
「わかっています」
 軍に関することはだ。顔を曇らせるのだった。
 教練もだ。暗い顔で浮けるばかりだった。ローゼが幾ら言ってもだ。
「それは」
「ならもう少し熱心にです」
「はい」
 ローゼのその言葉に頷きはする。だが顔は暗いままである。
 とかく己が好きなことには熱中するがそうでないものにはとんと関心を示さない。彼は太子のその性格にさらに憂慮を覚えた。
 そしてだ。さらにであった。太子は時としてこうも言うのである。
「あの、先生」
「何でしょうか」
「父上と母上は今日は」
 両親を見なかったのでだ。不安な顔になって彼に問うのだった。
「何処に行かれたのですか?」
「御公務でお忙しいのです」
 それでだというのだ。
「御二人は今は」
「そうですか」
「王、そして王妃としての務めです」
 彼はこう語ると同時に太子に対して王の務めも教えていた。
「ですから」
「わかりました」
「殿下、お父上もお母上もお忙しい方なのです」
「それはわかっています」
「それは御承知下さい」
 こう言いはするがだ。彼は納得しないものも感じていた。
 こうした教育が続いていた。その中でだ。 
 太子はよく乗馬をした。これは見事なものだった。
 
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