永遠の謎
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10部分:第一話 冬の嵐は過ぎ去りその四
第一話 冬の嵐は過ぎ去りその四
ローゼも軍人であるから当然乗馬は慣れている。しかしその彼が見てもだった。
「殿下、お見事です」
「これでいいのですね」
「はい」
共に馬に乗りだ。隣同士になって話すのだった。
「馬はお好きですか」
「はい、好きです」
そのまだ少年ながら美貌を感じさせる顔で答える太子だった。
「何か。乗っていると」
「乗っていると?」
「騎士になった気がします」
こう言うのである。
「それで好きです」
「騎士ですか」
「はい、騎士です」
それだというのである。騎士だとだ。
「だから。馬に乗るのは」
「とりわけ白馬ですね」
見れば今もである。太子は見事な白馬に乗っている。それに乗りながらだ。ローゼと笑顔で話をしているのである。それが今の太子だ。
「それがお好きですね」
「白馬に乗っているとです」
「やはり騎士になったように思われますか」
「白鳥の騎士ですか」
ここで太子はこんなことを口にした。
「それになった気持ちになります」
「白鳥の騎士?」
「ローエングリンです」
彼はこの名前を出した。
「それに」
「ローエングリンというと」
「先生は御存知でしょうか」
「あれですか。姫の窮地を救う白銀の鎧の騎士」
「はい、それです」
話す太子の顔が晴れやかなものになる。そのうえでの言葉だった。
「それなのですが」
「ううむ、ローエングリンにですか」
ローゼは太子の言葉を受けて難しい顔になった。そのうえで述べるのだった。
「それはいいのですが」
「いいのですね、それは」
「ただ」
「ただ?」
「殿下は王になられる方です」
厳しい顔になった。そのうえでの今の言葉だった。
「それは御承知ですね」
「はい、それは」
「ならば。騎士になられるのも当然ですが」
これは貴族という意味である。ローゼはそうしたことを踏まえたうえで太子対して話すのだった。二人は今も馬上で横に並んでいる。
「まずは王になられることをです」
「自覚せよというのですね」
「ローエングリンは王ではありません」
このことを言うのであった。
「そのことはよく御承知下されるよう」
「それはわかっているつもりですが」
「ならばいいです」
ローゼは太子の目を見た。いつも空を見ているその目を見てだ。そこに嘘がないのを見ての言葉だ。太子は嘘は言わない人物だった。
「それでなのですが」
「はい、乗馬の次は」
「剣です」
それだというのだ。
「フェシングをしましょう」
「フェシングですね」
太子はそれを聞いても笑顔になった。
「それなのですね」
「殿下は剣もお好きですね」
「はい、それもまた」
笑顔のまま話す太子だった。顔が晴れやかなものになっている。
「好きですから」
「それはいいことです。銃は」
「どうも好きにはなれません」
それはだというのだ。
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