魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。
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第一部
第18-1話 新年魔法大会【書き初め】
前書き
レンside
「いぇーい! みんなのアイドルッ! MI☆O☆Uだぜぇぇええいッ!!」
出場者席に着いたと思えばこれだ。
開幕式の時に白髪の看守が居た場所で、マイクを持った女が叫んでいた。
「今回の大会は、局長に代わり、副局長のあたしが司会をするぜぇぇええいッ!! よろしくなぁぁぁあああ!!」
「うるさっ……」
フリルが多い、女性アイドルが着るような衣装を着たそいつがパチンと指を鳴らすと、闘技場を囲む様にある観客席の、最前列にある出場者席の後ろに、映像が映し出される。そこには、一般人や、看守、白衣を着たヤツが映っていた。
シンがそれを目を輝かせながら眺める中、"ミオウ"と名乗った司会が叫ぶ。
「今回はこんなたくさんのお客様が見てくれるぜい! 死ぬくらい頑張れよなぁ、御前等ぁぁああああ!! ミオウちゃん、期待してるぜぃ!」
すると、ワッと会場が盛り上がったような声が、映像から聞こえてくる。どうやら、この映像の向こう側が相当盛り上がっている様だ。
これは、頑張らないといけないな。
「この大会で優勝した舎には、何でも好きなモノをあげるぜ!!」
「「「「なにぃぃいいいいい!?!?」」」」
……好きなモノ?
隣を見ると、グレースやハクが鼻息を荒くしていた。シンは、「魔道書魔道書魔道書……」と呟いていた。
「俺、熱血系じゃないけど優勝するぞぉぉおお!!」
「おおおぉぉおおおおお!!!!」
グレースとハクが叫ぶ中、それに負けないくらいの声量で、
「おお、一舎熱いねぇ! 琴葉センパイ、頑張れぇぇぇええええ!!」
と、ミオウも叫んだ。それにマイクもあったため、グレース達の数倍の音が出て、思わず耳を塞ぐ。
ここのヤツは皆騒がしいな……
「それじゃあ行くぜ! 第一種目は『書き初め』だぁぁああああッ!! 半紙は主任看守に渡したモノを使って貰うぜいッ!! 選手は全員参加だぁッ! さっさと下に下りやがれ、選手共ぉおおおッ!!」
四人で階段を下りて、琴葉の元へ向かう。
着いたときには、琴葉は既に半紙と筆、墨を持って、要と共に仁王立ちしていた。
「……全員下りたなぁ!? 今回書くのは『謹賀新年』だぜッ! 半紙を宙に魔法で固定しつつ、筆を器用に、魔法で操れぇぇい!! ここで最下位の舎は脱楽だぜい! あたしが見惚れるような作品が出来ることを期待してるぜぇぇぇええええ!!」
琴葉は黙って半紙と筆、墨を俺達に押し付け、自分はこれまで見たことが無いくらいの殺気を放ちながら、自分の半紙を持つ。あの後、色々挑発されたようだった。
琴葉は半紙をピンと広げ、空中に置くように手を動かす。手を離すと、半紙が宙に浮き、その位置に固定された。
「……え」
そのまま墨池の蓋を開け、筆を持つ。が、すぐにその筆を手放す。
「は……」
が、筆は浮き、琴葉が腕を振ると、操られたように動き出す。墨を付けられた筆は、そのまま半紙の前まで移動した。
「ウソん……」
そして、素早く腕を振り下ろすと、筆が「謹賀新年」という文字を書いた。
同じ様な流れで、小筆で「一舎 黒華琴葉」とも書いた。
とても綺麗な字だったのが、少し苛つく様で、シンが舌打ちをする。
「オラ……さっさとやりやがれ。コツは文字をイメージすること。何をしたいのか、しっかりと想像することだ。分かってんだろ、さっさとやれやボケ。打っ殺すぞ」
振り返った琴葉が、鋭い視線で俺達を睨み付けてくる。その横で要が苦笑を浮かべていた。既に書き終えているようで、後ろに綺麗な文字が書かれた半紙が浮かんでいる。
「看守達と喧嘩して、挑発されて、相当頭にきたっぽいよ? 暫くは大人しくした方が良いと思うー」
……でも、やり方が上手く理解できないんだよなぁ。
浮遊魔法で浮かせて、固定魔法で位置を固定して、操作魔法で筆を操り、複製魔法で手本の字を複製して、その通りに筆が動くように操作すれば良いのか……?
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