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永遠の謎

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583部分:第三十四話 夜と霧とその六


第三十四話 夜と霧とその六

「私は城にも多くの科学を取り入れています」
「そうして灯りや食事もですね」
「はい、整えています」
「古城に科学をですか」
「取り入れています。それは非常にいいものです」
 こう話すのだった。王は実際にその中にいるからこそ言えることだった。
「そして空ですが」
「その空ですか」
「はい、空です」
 この話に戻った。空のことにだ。
 話をしながら上を見上げる。その青い空を。
「この青い空を何時か人は飛ぶことができるようになります」
「夢の様ですね」
「ですが夢ではないのです」
 王の中ではそうなるものだった。そして自然にだ。
 王はだ。皇后にこう話したのだった。
「夢は現実になるものです」
「現実に、ですね」
「はい、なります」
 王は無意識のうちに話していた。こう。
「だからこそいいものなのです」
「だからですか」
「人は多くのものを求めそれを果たしてきています」
「一つ、そしてまた一つと」
「なっていきます。それにしても空は」
 また空を見上げてだ。王は話した。
「何時見てもいいものですね」
「本当は青い空が好きなのですね」
「青は好きです」
 王の好きな色は青だった。このことは変わらない。
 その青についてだ。王は深く見てだった。
「バイエルンの。我が国の色ですから」
「だからこそ余計にですね」
「はい。青に包まれた世界ならどれだけいいか」
 恍惚とさえなって話していく。しかしだった。
 憂いの顔になりだ。王はこんなことも述べた。
「ですが。昼の世界には」
「だからですか」
「私は昼の企みから避けている、いえ逃げているのですね」
 顔は自然に俯き寂しいものになってだ。王は青から、王が愛している青から目を逸らせてだ。そうして皇后に話すのだった。その憂いを。
「そうしているのです」
「昼にだけ青はありません」
 その王にだ。皇后は静かに述べた。
「夜にも青はありますね」
「はい、それは確かに」
「昼の青も夜の青も同じく素晴らしいものです」
「では私は」
「なら夜の青を愛されるべきです」
 必然的にだ。そうあるべきだというのだ。
「昼の企みに耐えられないのなら」
「夜のですか」
「はい、夜の青を」
 また王に告げる皇后だった。
「そうされてはどうでしょうか」
「そうですね」
 少し考えてからだった。王は皇后に答えた。
 そうしてだった。少しだけその顔を晴れやかにさせてだ。皇后に述べるのだった。
「色は夜にもありますから」
「夜はお好きなのですね」
「好きなのでしょう」
 ここでは言葉は断定ではなかった。
「私もそう思います。私自身も」
「そうですか。やはり」
「夜は醜いものを覆い隠しています。それに」
「それに?」
「照らせば隠されている美しいものは見えます」
「青もですね」
「そうですね。青も」
 こう話していく。王は今その青について考えてだ。
 
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