| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第9話:スイーツ地獄

キリハ達との戦いからしばらく経ち、タイキ達の冒険は順調に進んでいた。

冒険初期のテンポの悪さを帳消しにするかのようにゾーンを攻略し、コードクラウンは5つ目となる。

「大分戦力も充実してきましたから冒険のテンポも良くなって来ましたね」

他のゾーンに行き、そのゾーンを侵攻しているバグラ軍を撃破してコードクラウンや仲間を増やしていったタイキ達。

「それにコードクラウンも5つ目だし…」

「ブイモン達も幼年期に退化しなくて済んできたし」

「さっきのリバーゾーンも結構楽勝だったよねー!」

賢、ゼンジロウ、大輔、アカリの順番で言う。

「何せX4のパワーが凄いからなあ!仲間のデジモンも少しずつ増えてきたし…これなら結構簡単にバグラ軍もやっつけられるんじゃないか?」

最近シャウトモン達の地力も上がっているのかX4の力も増しているように思えるゼンジロウはそう言うが、それをタイキが否定する。

「いや…Xローダーに触れてると何となく分かるんだけどさ…X4はマテリアルクロスのサジタリモン、超進化のジュエルビーモン…そしてあのメタルグレイモンとほぼ同レベルくらいだと思う。だからこの間は確実に勝つために奴らを分断させるしかなかったんだ!多分まだタクティモンやパイルドラモンには敵わないだろうし…」

「まあ、キリハさんも切り札があるみたいでしたし、俺達も今より強くならないと!!」

大輔もパイルドラモンにデジクロスして倒したのがそこらの完全体なら調子に乗っていたかもしれないが、初デジクロスの相手があの化け物じみたタクティモンだったのが幸いしたようだ。

上には上が存在することを知れたのは大輔にとって良かったかもしれない。

「(X4とサジタリモンは完全体並みに強くてワームモンは完全体に進化出来るようになって…今じゃ私達が一番弱いんだよね…)」

勿論、ネフェルティモンは主力メンバーの1体だが、完全体相当の力を手にしたシャウトモン達と比べればかなり劣り、今では直接戦闘ではなくサポートがメインとなっている。

「あ、そうだ……なあ、ヒカリちゃん。後で少し試してみたいことがあるんだ。」

ヒカリの様子に気付いた大輔はヒカリにある提案をする。

「え?」

「サジタリモンとネフェルティモンをデジクロスさせたいんだよ。サジタリモンは確かに強いけど空が飛べないじゃんか。ネフェルティモンとデジクロスすればその弱点を補えそうなんだよ」

「デジクロス…か…うん、やろうよ大輔君」

確かにサジタリモンは強いが、飛行能力がないために、空中の敵には若干不利である。

「まだまだ強くなれるよ俺達もさ。」

「そうね」

「私達はまだまだ強くなれるわ」

大輔の提案に頷くヒカリ。

テイルモンも悪くないと思ったのか頷いてくれた。

「あっ…デジタル空間を抜けるよっ!!」

「あれはっ…」

「うっひょおおおお!ケーキ!ケーキの街だあああああ!!」

デジモン達の中でも屈指の甘党であるブイモンが歓喜の悲鳴を上げた。

【…って…また空からかーいっ!!】

「うっひょおおお♪」

「きゃあああああ!?」

大輔達はクッキーの地面に落下。

ブイモンは着地と共に近くのチョコの木にかぶりついて一気に平らげ、ヒカリは生クリームの中に沈んだ。

「っててて…!でも何か柔らかい地面で助かったな…」

「…あれ?これもしかしてクッキーか?」

「と言うかこれ全部お菓子だよ大輔」

「あ、本当だ…お菓子の家とかそんな次元じゃねえな」

お菓子の街並みを見渡しながら大輔がぼやいた。

「ってか、ヒカリ君。埋まっちゃったぞおっ!?」

「ヒカリちゃん大丈夫!?」

「ぷはっ!生クリームまみれになっちゃった…でも、何か凄く良い香り…」

指についた生クリームを舐めるとヒカリはあまりの美味しさに打ち震えた。

「お、お…美味しい~!!」

「美味~い♪」

「ほ、本当に美味し~い!!」

あまりの美味しさにヒカリとブイモン、アカリの歓喜の声が上がる。

「うわっ、本当だ!これ最高級の生クリームだぞ!?うんめぇ~!!」

「こっちのケーキもふわふわして滅茶苦茶美味いですよ!!」

「街の一部食べちゃって良いのかな…」

大輔もケーキを一口食べるが、スポンジがふわふわで今まで食べたケーキで最高に美味いと表情を輝かせた。

「おやおやおや、大丈夫ですか旅の方々!?…!ややっ…!?そのご容姿…尖った黒髪にゴーグル…5人の人間の仲間…!ま…まさかあなた様方は…!!」

ケーキ型のデジモン達にこのゾーンの主の元に案内されるタイキ達。

「よくぞおいで下さいました。ジェネラル・タイキ様とその御一行!!ここはスイーツゾーン!!デジタルワールド中のパティシエの集まるお菓子の聖地ですわ!私はここのコードクラウンを預かる女主人、ウェディンモン!!この子達は我が従者、ショートモン達ですわ!」

ケーキのドレスのような物を纏っているデジモン、ウェディンモンが自己紹介する。

「へへっ!俺達も中々、有名になってきたじゃねえか!」

「はい!ここ最近多くのゾーンをバグラ軍から解放してきた皆様の活躍は…戦乱に苦しむこのデジタルワールドで小さな伝説となりつつあるのです!」

「そう言えば、とても平和そうな街だったけど…ここはまだバグラ軍の侵攻を受けていないのか?」

タイキがこのスイーツゾーンがバグラ軍の攻撃を受けることなく未だに平和なことについて尋ねる。

「フフ…お砂糖は最高のエネルギー源でしてよ?ここのスイーツで滋養をつけた我が精鋭達がバグラ軍の侵入を防いでいるのです!!」

「ふうん、あんた達は見かけによらず強いのね」

「まあ、テイルモンも見た目は成長期だけど成熟期だから強いしな」

「でも、それだとコードクラウンは貰えないな…」

賢の呟きに大輔も頷く。

「バグラ軍を倒した時のお礼って形でコードクラウンを貰ってたしな。流石にバグラ軍に侵攻されてないゾーンのまでは…」

「いえ!このデジタルワールド全体を救うために戦っておられるタイキ様達に…このコードクラウンをお預けすること。私は異存ありませんわ!」

「えっ?じゃあ…」

「貰っちゃっていいのコードクラウン!?」

「ただし…このコードクラウンを託すためには…スイーツゾーンに伝わるある試練を乗り越えて頂かなくてはならないのです…!!」

「試練?」

「いかにも!!」

ウェディンモンの後ろのカーテンが開き、とてつもない大きさのウェディング・ケーキが姿を現した。

「このゾーン最強のスイーツ…!スーパーウルトラミラクルダイナミックスペシャルワンダーギャラクティカパワフルギガンティックウェディング・ケーキ…一気食い!!」

「「「ええええええ!!?」」」

とてつもない大きさのウェディング・ケーキに全員の目が見開かれた。

「てっぺんが見えねえぞこれ!!これタイキと大輔と賢だけで食えっつうのかよ!?」

「一緒に人間界からいらしたお仲間には力添えを認めましょう…ですがデジモンは手出し無用!!これはあくまでジェネラルの資質を試すものなのです…!!」

「オ…美味シソウ…俺モ食ベテミタイ…」

「そ、そんな…うぁあああんまりだあああああ…」

「俺は見てるだけで胸焼けがしてきたぜ…」

「正直見るだけでお腹一杯だわ…」

バリスタモンとブイモンは涎を垂らし、ドルルモンとテイルモンは見てるだけで辛そうである。

「…やるしかねえか…タイキさん、賢、ゼンジロウさん、アカリさん…!!やりますよ!!」

【おう!!】

大輔達が超巨大ウェディング・ケーキを食いきると言う大試練に挑む。

「あれ?そう言えばヒカリはどこに行ったんだ?」

「ああ、ヒカリ様でしたら、生クリームまみれでしたので先程…」

ブイモンがヒカリがいないことに気付き、近くのショートモンに尋ねる。

ヒカリのいる場所は言うまでもなく。

「うーん…カモミールの良い香り…」

「キュ~♪」

生クリームまみれとなったヒカリは身体についた生クリームを落とすために風呂に入っていた。

何故かキュートモンも一緒である。

「スイーツは美味しくてお風呂は良い香りがして、平和で…」

「もうこのゾーンから出たくないキュ~」

「本当、最高だね!!」

「本当にね~」

ヒカリの言葉にキュートモンとは違う人物の声が応じた。

「!?誰……っ!!?天野…ネネさんっ!!?」

「あら、ヒカリさん。お久しぶり!こんな所で会うなんて奇遇ね~。あら?ヒカリさんどうしたの?エンジェウーモンがレディーデビモンと対面したような顔して」

隣にはヒカリと同じようにティーカップ型の風呂に入っていたネネの姿があった。

「き、奇遇なんて嘘吐かないで下さい!あなたが私達のことを監視してるのは分かってるんですよ!今度は何を悪巧みしてるんですか!!?」

「あら?半分は本当なのよヒカリさん。近所に行きつけのクレープ屋さんがあるの!で…残り半分の悪巧みの方はね…?タイキ君と…特に大輔君を誘惑しに来・た・の♪」

色気のある表情を浮かべてヒカリに迫るネネにヒカリの脳裏に大輔に迫るネネの姿が浮かんだ。

「え…ええええ!?だ、だ…駄目ええええ!!」

顔を真っ赤にしてネネを止めようとするヒカリにネネは思わず吹き出した。

「冗談よ冗談♪(あー、この娘ったら可愛いし、からかうの面白いわぁ…)」

「な…っ…か、からかわないで下さい!!」

「ふふふ…ヒカリさん可愛い…でも大丈夫よ。あなたの大輔君を取ったりしないから…私の目的のために…少し貸して欲しいだけなの…彼が一番波長が合うから…」

湯船から身を乗り出してヒカリの顎に手をやるネネ。

「えっ…?波長…?」

「大丈夫…もうすぐあなた達はこの恐ろしい争乱から解放されるわ…!人間界に帰るチャンスだって近く回って来るかもしれない…だから…安心して、私に全てを任せて欲しいの…」

「え…?ネネさん…それって…どういう…こ…と…?」

突如ヒカリの意識が朦朧とし、そのままキュートモンと共に眠ってしまう。

「見事な幻術だわペックモン。」

潜んでいたペックモンがヒカリとキュートモンに幻術をかけたのだ。

「ネネ様…急ぎませんと赤の少年達も…」

「ええ…(ごめんなさいね。でも本当にもう誰にもあなた達を傷つけさせたりしない…)」

ペックモンはネネにバスタオルをかけてやり、ネネはヒカリに歩み寄る。

「この罠だらけのデジタルワールドは優しいあなた達には厳しすぎる…もうすぐなの…もうすぐ私が全てに決着をつけるから…!」

一方で、超巨大ウェディング・ケーキ…スーパーウルトラミラクルダイナミックスペシャルワンダーギャラクティカパワフルギガンティックウェディング・ケーキを食していた大輔達だが…莫大な量にタイキとゼンジロウ、賢は既にリタイアし、大輔とアカリが踏ん張っていたのだが…。

「くっ…もう、限…界…」

「かなり食ったはずなのによお…」

「…まだまだ全然残ってるな…と言うか、あの大きさからすればひと摘まみ分しか食えてないんじゃないか?良いなあ大輔達」

ブイモンがウェディング・ケーキの大きさを見て思わず羨ましそうに呟く。

「はっきり言って、ここまでクリアさせる気が皆無な試練も珍しいわよね…」

テイルモンは辟易したようにウェディング・ケーキを見つめながら呟く。

「俺…コーヒーか水が欲しい…」

苦しそうにケーキを頬張りながら呟く大輔。

「タイキはリタイアしちゃうし…もう少し胃袋を鍛えさせれば良かった…」

「で…でも、腹一杯になっても、胸焼けしても…これ滅茶苦茶美味いですよ。ウェディンモンもショートモン達がお菓子作りが本当に好きなんだって分かります…本当に凄えよみんな…」

「っ…!」

その言葉にウェディンモンとショートモン達は少し過剰に反応した。

「どうしたウェディンモン?ショートモン?」

ウェディンモンとショートモン達の反応が気になったブイモンが尋ねる。

「い、いいえ…何でもありませんわ…」

「それにしてもヒカリはまだ風呂に入ってんのかな?」

「確かにヒカリは長風呂派だけどここまで長いのは珍しいわね…」

ブイモンは未だに風呂から戻ってこないヒカリに首を傾げるブイモン。

ヒカリのパートナーであるテイルモンもヒカリが長風呂派なのは知っているが、ここまで長い時間入っているのは珍しいとテイルモンも首を傾げた。

「大丈夫だ…て言うか、ヒカリちゃんが来ても状況は好転しないと思う…俺はまだ…ぐう…」

とうとう力尽きた大輔とアカリは床に倒れ伏した。

「だ、大輔!アカリ!!後ついでにタイキ達!!お前達の死は無駄にはしない!!お前達の意志は俺達が継いでやるからなーーー!!」

「いやいや、あんた大輔達を勝手に殺すんじゃないわよ」

号泣するブイモンにテイルモンが横で呆れながらツッコミを入れた。

「しかし…流石にこいつはリタイアだな。ヒカリが戻るのを待って後日に再チャレンジさせてもらえりゃいいんだが…」

「いえ…結構ですわ!私達が丹精込めて作ったこの一品…ここまで味わって頂いて感無量ですわ。その情熱に免じて…苦しませずにあの世へ送って差し上げましょう…!!」

ウェディンモンの雰囲気が変わり、ショートモン達もフォークの槍を構えた。

「…な…?何ぃっ!!?」

「…そりゃどういうこった、女主人さんよ」

「うふふふ…それはこういうことですわ勇者様方」

背後から蝙蝠の群が飛び出し、一カ所に集まるそこから現れたのは…三元士の1体にして七大魔王の一角…リリスモン。

「あらあら…折角のジェネラル達とのご対面なのに…随分無様な格好でおいでだねぇ…」

「なっ…リ…リリスモンだとっ!?奴にまで目を付けられてたのか俺達は…!?」

「ムカつく奴ね…何だか知らないけどぶっ飛ばしてやりたくなるわ…」

「落ち着けよテイルモン…でもリリスモンって確か、タクティモンと同じ三元士だよな!?」

「ああ、こりゃ有名になるのも良し悪しだぜ…」

ブイモンがテイルモンを宥めながらリリスモンを見て言うとドルルモンが肯定した。

「なるほど…最初からスイーツゾーンはバグラ軍に占領されていたんだ!!」

「くっ…私としたことがこんな単純な罠にかかるなんて…罠に対する勘が鈍くなってしまったようね…」

ワームモンとテイルモンがウェディンモン達を睨みながら言うとリリスモンが笑みを深めた。

「うふふ…そうよ…このウェディンモンは賢い娘でね…私達がこのゾーンに攻め行って早々に降伏してきて、私に極上のスイーツを貢ぎ続けることを条件にこっそりこのゾーンを安堵してあげてるってわけ!」

ショートモンからムースが盛られた器を受け取ると美味しそうに食べ始める。

「お前上司に怒られないかそれ?」

「んん~っ!だあぁぁって、この娘の作るムース、本当に最高なんだもん。それにバレなきゃいいのよ♪」

「それでいいのか三元士…」

聞いたブイモンは思わずがっくりとなった。

「…………それにしてもあなた、何処かで会ったかしら?」

「は?何の話だよ?」

リリスモンはブイモンに誰かの面影を見て尋ねるが、ブイモンはリリスモンとは初対面なので疑問符を浮かべている。

「…いえ、気のせい…ね。それにしても回りくどいことをするわねぇ?あいつらに食べさせるお菓子に私の魔法毒を少し混ぜてやるだけで殺すのも生きたまま操り人形にするのも思いのままなのに…」

「け…ケーキに毒っ…!?い…いえ…リリスモン様にそのようなお手間を取らせるなど滅相もありませんわ…」

毒と言う単語にウェディンモンは動揺したのを意識が朧気ながらもしっかりと大輔は見た。

「(そっか…ウェディンモン達は…)」

「これこの通り、ジェネラル達は無力化しましたわ!後はデジクロス出来ない残りのデジモンを始末するのみ!!」

「だとぉ…」

「ふざけるな!!汚い真似しやがって!!」

「その腐った性根を叩き直してやるわ」

「戦いもせずゾーンを明け渡したお前如きに負ける俺達だと思うなよ…!!」

「僕達だって大分強くなったんだ。お前達なんかに負けない!!」

ウェディンモン達に対して怒り心頭のシャウトモン達が臨戦体勢に入る。

「ふん…!リリスモン様の恐ろしさも知らずに大口叩くんじゃなくてよ!!さあ、行きますわよお前達っ!!レッツ!!スイィーーツッ!!」

【イエス!!マダム!!】

ウェディンモンがキャンドモンとショートモン達を吸収し、巨大なデジモンへと変貌を遂げた。

「オォーーッホッホッホッホッホ!!さあ!スイーツゾーンの女主人が甘いばかりでないことを教えてあげましてよ!!」

リバース・ウェディンモンへとパワーアップし、ブイモン達にかなりの勢いで迫るのであった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧