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Fate/BBB ー血界戦線・英霊混交都市ー

作者:海戦型
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一匹狼っていうけどそもそも狼は群れる生き物だと知識人アピしてマウント取るのもどうかと思う。って短編

 
前書き
なんかイケるかな、と思って執筆。例によってちょっと内容荒いけど、細かいことは気にしない。

※ヘシアン・ロボの幕間物語来たので書き直してみました。 

 
 
 ヘシアン・ロボ――いや、狼王ロボは世に数多く存在するサーヴァントの中でも極めて特殊な存在の一つである。

 まず英霊じゃないし、そもそも人間を憎み切っているから何で座に登録されてるかも分からない。しかも首なし騎士を連れた複合サーヴァントという、率直に言って訳の分からない存在である。そんな訳の分からない存在がどうして特異点新宿を通り越して召喚可能になったのか、何故当時のカルデアのマスターの召喚に応じたのか、そして何故カルデアのマスターにはほんの僅かに心を許していたのか……その答えはほんの一握りの存在しか知らない、謎のサーヴァントだ。

 さて、件のロボであるが、HLの動乱の最中に望まずして召喚されていた。



 驚愕。久しく味わうことのなかった現実に、しばし唖然とした。

 町とは人の作ったもの。その中に人間がいるのは当たり前だ。
 しかし目の前に広がるのは「人間っぽい何か」と呼ぶべき、異形の大群。
 新宿にいた頃、人間に飼い慣らされたキメラなる愚かで脆弱な生物を噛み殺した事はあった。また、座の知識という奴で、人外の存在がいることなど党の昔に知っていた。実際に何度が遭遇し、戦ったこともある。
 しかしHLはそれと全く趣を異にする。とにかく異形は無秩序に多様に存在し、互いに別の存在であることを気にも留めない様子で共存している。人間のような言動をする、人間と全く別の生物が平気な顔で町を闊歩し、必殺の首狩り宝具を使おうにもそもそも首がないどころか粘体生物のような存在もいる。夜の帳が町を覆うあの新宿とは違い薄気味の悪い霧に包まれたこの場所は、混沌の極みだ。

 だが、戸惑いはそう長くなかった。
 彼らの纏う匂いの多くが、人間に類似している。
 憎き人間、決して相互理解する日の来ない人間――人間と同じ動きをする存在。本能の察する人外共の性根は、限りなく人間。人間のふりをする本でも人間のような泥でもない、あれはまさしく化け物の姿をした人間でしかない。

 本能ががなり立てる。殺戮せよ、と。
 顎で砕き、切り裂き、臓腑を千切り、人の塗り潰した大地に躯を晒せと。
 微かに脳裏をよぎるカルデアでの日々に、靄が掛かって見えなくなってゆく。だからどうした、と嗤う。人を憎むがゆえの自分であり、復讐者。これはあるべき姿、あるべき行動。

 もはや己が身は獣ですら非ず。ヘシアン・ロボは怪物だ。

 ここにマスターはいなかった。世界も異なる。これは世界を救うための旅――グランドオーダーではない。であるならば、目的など一つ。誰が何のために召喚したのかなど関係なく、人を殺し続けるのみだ。

 思考が行動に出るのは早く、そしてすぐさま己の周囲は屍の山となった。
 
 どれほど殺したか、それほど間を置くことなく警察なる人間の組織が来たことを背中に乗せた首なし男が告げる。化物退治に人間どもが、おっとり刀で駆け付けたらしい。金属の鎧に身を包み、金属の筒で身を守る脆弱な人間たち。貴様らも殺してやる。
 人間の武器に見慣れているロボにとってそれは特別な脅威でもない。
 化物の化物たる由縁を教えてやる、と襲撃し――再度、驚愕した。

 スペック負けしている。

 時速200キロで走行できる足がさしたる優位とならない。キメラを一撃で噛み砕く咬合力を以てして、鉄鎧(パワードスーツ)が容易には噛み千切れない。ヘシアンの援護で数人殺せば連携は崩れると考えたが、同胞の死など見るにも値しないとばかりに夥しい弾丸を叩き込んでくる。死と恐怖などとうに克服したとばかりに、狂戦士の如く彼らはワイルドハントを続けた。
 特に驚いたのが弾丸の威力だ。多少は身体で受け止めてでも攻撃をしようと考えたのが大きな間違いで、その威力は新宿の武装兵士『雀蜂』のそれとは比べ物にならない程の威力で肉体を破壊してきた。

 自らの過ちと思い上がりを、悟らざるを得なかった。
 英霊の力、幻霊の力を得て自らが人間を鏖殺する側の存在になったと思いあがった。

 本来ならば、これが当然なのだ。
 英霊の力を手に入れたから兵器が効かない。
 幻獣になったから人間に負けない。
 そんなまやかしをアテにした己の愚かしさを呪った。

 生前の自分ならもっと狡猾に隙なく立ち回れていた筈だ。
 なのに、なまじ力を得たばかりにこの体たらくだ。
 逃げて態勢を立て直さなければならなかった。
 傷だらけの体を引き摺って逃走し、警察の追撃を振り切って町の闇へと姿を隠した。

 化物ロボではなく、これは狼だったころのロボの行動。
 微かな郷愁と自重を抱え、ロボは摩天楼の狭間に姿を消した。

 殺害できたのは僅か数十名。この町で発生するドンパチの中では『軽犯罪』と言って差し支えない、極めて小規模な事件。おまけに当時のHL市民の感覚としては「英霊は基本人型」であり、ロボはどこぞの実験魔獣が暴れたものと考えられた。
 故にそれはHLを駆け回る膨大な情報の低優先度の問題として扱われ、埋没していった。



 = =



「グルルルルル……」
「………………」

 チェイン・皇がその生物を発見したのは、いつものように街の高所を跳躍しながら情報収集をしている最中だった。何もない場所に感じた気配を見ていると、そこから突然巨大な狼が現れたのだ。どうやら自らの姿を透過させる(すべ)を持っていたらしいが、こちらが気付いたと判断して透過を解除したようだ。

 巨大な狼の上に首なしの大男が座っているという、極めて奇怪な出で立ち。体には血と傷の痕があるが、傷そのものは塞がっているようだった。恐ろしい形相で唸っている。
 見たことのない獣だ。とても野生の生物としてここにいるとは思えないため、チェインはすぐにそれを魔獣の類と推測した。魔獣を町に放つことに定評のある堕落王フェムトからゲームのお誘いはなかったので、多分だが別の誰かが作った実験魔獣が逃亡してここにいるとかだろう。

(でも、なんか変。姿が余りにも普通すぎる)

 何言ってんだこの人と思われるかもしれないが、HLじゃ背中に首なし男を乗せた巨大な狼など、趣味的ではあるが普通としか思われない。HLのデフォルトかつトレンドといえば宇宙生物もしくは魔界の邪悪な生物感があるヌメヌメしたりデロデロしたりしているものだ。決してフサフサしているものではない。

 どうしたものだろう、とチェインは考える。

(手負いの獣、襲ってきても可笑しくないと思うんだけど、戸惑っている……?)

 見るからに危険そうな生物だ。少なくとも一般人にはどうしようもない力を持っているだろう。しかし今のところ、この手の生物が脱走したとか人を襲ったといった話は彼女の耳には届いていないし、自分も襲われてはいない。時間差であとから届くことはありえるとして、うっかり殺して後から大変な事態に、なんてことは避けたい。なにせ魔獣だ。死後に何かしら影響をばら撒いてもおかしくはない。

 ひとまず写真を撮影して報告し、スティーブンの指示を仰ぐべきか。
 それともリスクを承知でこの見るからに危険そうな獣の心臓を止めるべきか。
 だが、その一瞬の判断の中に冷たい殺意の気配を感じた狼の反応は早かった。

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 咆哮と同時、背に乗っていた首なし人間のマントが鋭い刃となって次々にチェインに飛来する。しかしチェインもこの程度は予想していたため、マントを避けていく。人外の存在、人狼であり修羅場を潜ってきたチェインには造作もないことだ。
 だが、同時に襲い来る刃を避けながら、チェインは違和感を覚える。

(おかしい……自分の思ったように避けている筈なのに、誘導されてる?)

 次第に自分のいる場所が、距離があの狼の間合いに都合のいい場所へと近づいている。もちろんそれを狙っているとしても容易に乗るチェインではないが、これは明らかに変だった。「思い通り避けているのに、結果的に誘導されている」。因果の偏り、或いは認識のずれ。この場にレオナルド・ウォッチがいれば彼の目は全てを捉えるだろうが、そればかりはチェインには逆立ちしても真似できない。

 気が付けば逃げ場は消失し、巨大な刃を咥えた狼と自分は一直線上に並んでいた。
 必殺の間合いにして必殺の状況。狙いすましたタイミングで狼が疾走する。



 狼――ヘシアン・ロボは、勝利を確信した。

 これはロボの本能的殺意とヘシアンの理知的殺意が融合した絶殺宝具だ。人間の狡猾な追い詰め方が具現化した「宝具のレンジ内で首狩りに優位な偏差が生ずる」という必殺の状況を作り、そこにロボが必殺の殺意を注いで首を裂く。

 これがヘシアン・ロボ最強にして唯一の切り札。
 相互理解不可能、憎悪を撒き散らす獣の絶対的殺意。

遥かなる者への斬罪(フリーレン・シャルフリヒター)

 この女が何者かは知らない。自らの最大の武器である鼻が、この女には効かない。臭いのない存在――だが、この人外に溢れた世界では「そういう人間」もいるだろう。何よりも自らの優位を疑わない女の目が、ロボを苛立たせた。

 さぁ、貴様の血は赤かどうか、首を切り離して確かめてやる。

「ま、当たらないんだけど」
「――ッ!?」

 するり、と。

 ロボの全力の一撃は、何事もなかったかのようにチェインの体を通り抜けた。
 なんの感触もない。体もぶつかった筈なのに感触の一つもない。驚愕に振り返ったロボの目には、先ほど必殺の間合いに追い詰めた筈の人ならざる女が何事もなかったかのようにそこに立っていた。

 ロボは知らなかった。彼女は確かに人外であり、その種族名を人狼と呼ぶことを。そして、人狼は人狼でも、彼女は月夜に吼える毛むくじゃらの怪物とは全くの別物――その気になれば因果の糸さえすり抜ける「不可視の人狼」であることを。
 いくら必殺の間合いを作ろうが、必殺の一撃を放とうが、全てが無駄。
 彼女に届きえる攻撃手段を持たないことは、そのまま彼女を決して倒せないことに繋がる。

 これが、彼女の力、『存在希釈(エグジスティンスルート)』。
 どんな拘束もどんな因果追跡も自らを希釈してすり抜ける、人狼最大の武器。
 こと回避という一点に関しては、HLでも最強クラスを誇る異能の力である。

 効かないのではなく当たらない。命中率に大幅な上昇補正を持つロボの宝具でも、もちろんゲイボルグでも当たらない。因果を逆転させたところで、心臓が希釈されて因果をすり抜けるのだから。

 敗北を悟らざるを得なかった。ヘシアン・ロボはこの瞬間、チェインに対する戦意を喪失した。それは彼女がれっきとした人外であることもひとつの要因かもしれない。そしてカルデアで過ごした時間がヘシアン・ロボの心を弱くしてしまったのかもしれない。新宿で敗北したあの日、少なくともロボとしての自分は、悪くない結末を迎えたのだ。

 ヘシアン・ロボはそれ以上抵抗しなかった。
 勝利は不可能。相手は人間ではない。納得できる死とは言えないが、人間に殺されるよりはましだった。チェインはそんなロボをみて、何故か周囲をちらちらと見まわしたのち、手を翳す。
 そして――もさっ、とロボの首元を触った。

「……………」
「……………」

 その顔には、「思ったよりもふもふじゃない」という微かな落胆が見て取れた気がした。

 数日後、ロボはブラッシングを経てもふもふな毛並みを手に入れ、代わりにチェインの相方としてカルデアで働くこととなった。チェイン程ではないが、姿を透過できる彼の能力は有用だし、移動手段としてはなかなか優秀だ。
 それに、HLの事を知ることで、ロボにも多少は戦う動機が出来た。
 この世界にもロボはいた。であるならば、人間と共闘する理由はある。

 もちろん彼の本質を警戒したキャスターたちによってチェインに令呪が施されたりと楽な結果ではなかったのだが、カルデアでの生活が響いているのと「人間を殺す」という役割も与えられることもあってか、ヘシアン・ロボは不承不承ながらライブラに――正確にはライブラに所属するチェインに従うことを受け入れた。


「行くよ。ロボ、へシアン」
「グルルルルル……グオオオオオオォォォォッ!!」
「な、なんだこいつら!何もないところから――ぐあああああああッ!?」

 今日も狼と人狼は町を駆け、そして世界の均衡の為に敵を滅する。

 強者に弱者が従うのも、ある意味では自然の摂理だ。それに……。

「おつかれ、ロボ。ブラッシングしたげる」
「すっかり日課になったなぁ、チェイン達のロボくんブラッシングは」
「ま、体が大きすぎて数人がかりな上に気に入らない人は近づくのを許してくれないっすけど。体を許すのチェインさん、ツェッドさん、エルキドゥさんにナーサリーさんくらいですし。ここも人間の臭いを遮断する異界の部屋ですもんね」
「……ところでレオ君。ナーサリー・ライムさんは絵本が本体と聞いたのですが、レオ君にはどう見えているのですか?」
「半透明の女の子の真ん中に絵本があるように見えてます」
「まぁ!レオさんのエッチ!」
「義眼で透視(ノゾキ)とは、レオも悪に染まってきたね」
「謂れのない罪がッ!?俺そんなことしてないですけど!?」
「嘘つけ陰毛野郎が。どーせ内心スケベなことばっか考えてその辺のマンションの中で着替え中の女がいないか鼻の下伸ばしながら探して回ったりしてんだろうが!」
「ファッキンシルバーシット先輩は黙っててもらえますかねぇ!?」

 騒がしく腹立たしい存在たちを睨んで追い払い、地面に体を投げ出す。そんなロボにチェインがもたれかかり、毛並みを優しく撫でる。これは人間に対する隷属ではない。狼が、より強い狼に従っただけに過ぎない。我が身はあくまで復讐者、人間の下につくことはない。

「んー、やっぱり読み通り、ロボは毛並みを整えれば絶対気持ちいい触り心地になると思ったのよねー。今度人狼局に連れてって皆に紹介しよっかな?」

 聞くところによると同じ能力を持った人狼はまだまだいるらしく、自分より格上の雌がそれほど多くいるという事実に少しうんざりする。
 恐らく還れば二度と誰にも呼ばれず応えぬ身、このような関係は今回だけだ。きっと、今回だけの――。
  
 

 
後書き
チェインさん難しい。前書きの通り書き直したのでちょっとだけ内容変わりました。
ちなみにわざわざロボの攻撃を最初普通に回避してたのは、ロボの手の内を知りたいから当たらないという事実をギリギリまで隠していたからです。そして一つでも多くの情報を収集してからスティーブンさんに報告したかった訳ですね。

レオの透視悪用疑惑はきよひーチェックによって無罪が立証されました。

「私なら覗いたっていいのよ、レオくん♪」
「マジでやめてくださいマルガレータさん。ホワイトが滅茶苦茶睨んでます」
「ぐぬぬぬぬぬ……何よレオったら私がちょっといない間にあんなボンキュッボンな……くぅぅぅ~~!!教授!聖杯もう一個用意して私の体をアレぐらいスタイル抜群に出来ないの!?」
「まぁまぁ。レオくんはスタイルで女性を評価するタイプじゃないんだからそうカッカしないで。それとも君も露出で攻めてみるかネ?ちょうどここに(フラン)がデスレースの時に着た衣装が……」
「包帯と紐ビキニ!?アンタ自分の娘になんてもの着せてんのよこのスケベオヤジッ!!」

何だこの寸劇。 
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