戦国異伝供書
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第二十一話 天下布武を固めその七
「四国のことじゃが」
「伊代ですな」
長曾我部がすぐに応えた。
「あの国ですな」
「四国はこれまでお主がおる土佐と讃岐、阿波を治めてきたが」
「これからは」
「あの国もじゃ」
「領土にしていきますな」
「うむ」
その通りだとだ、信長は長曾我部に答えた。
「そうする」
「左様ですな」
「あの国を抑えずして」
「四国を手に入れたことにはなりませぬな」
「だからじゃ」
それ故にというのだ。
「あの国もじゃ」
「手に入れますな」
「そうする、必ずな」
「それは今でなくとも」
「そうじゃ、伊予は国人達がそれぞれ分かれて治めているが」
しかしとだ、信長はその目の光を強くさせて言った。
「わしは天下を統一するのじゃ」
「それならば」
「あの国もじゃ」
「領土とされますな」
「そして治める、伊代は豊かな国じゃ」
信長は既にこのことを知っている、それで今も言うのだ。
「治めれば治める程じゃ」
「よくなるからこそ」
「領土にしたら是非な」
「治めますな」
「そうする、そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「あの国も豊かにするぞ」
「わかり申した、さすれば」
「それと九州じゃが」
信長はこの国の話もした。
「聞いたところじゃが」
「はい、近頃島津家が日増しに強くなり」
「北上の用意をしているとか」
「果たしてその勢いが止まるか」
「どうなるかですな」
「止まらぬな」
信長ははっきりと答えた。
「大友も竜造寺も強いが」
「それでもですか」
「両家でも島津家は止められぬ」
「そうなのですか」
「そう思う、しかも大友家は」
信長は手を結び懇意にしているこの家のことを話した。
「近頃な」
「どうしてもですな」
「主であられる肝心の大友殿が」
「耶蘇教の教えに溺れていますな」
「どうにも」
「それじゃ、お主達の中にも切支丹はおるが」
蒲生や黒田、そして高山達を見ての言葉だ。
「お主達も神社仏閣には何もしておらぬな」
「はい、そして民達の信仰について」
「我等は何も言っておりませぬ」
「そこは自由にしています」
その蒲生達も信長に答えた。
「神社仏閣も壊さず」
「僧侶や神職の者達には手出ししていませぬ」
「そうしたことは一切」
「そうじゃな、しかしじゃ」
大友家の主である大友義重はというのだ。
「あの家は近頃そうでない」
「耶蘇教が他の教えを認めていないので」
「だからですな」
「それが変に影響し」
「神社や仏閣を圧していますな」
「わしは確かに比叡山や高野山とも戦った」
この時も不審なものを感じていたがだ。
「一向宗ともな、しかしな」
「それでもですな」
「殿も神社仏閣は一切手出ししませんでした」
「その信者達にもです」
「信じるなとも言われませんでした」
「その様なことは考えたこともない」
それも一切というのだ。
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