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戦国異伝供書

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第二十一話 天下布武を固めその六

「そして采配も知恵も」
「備えておるな」
「しかも心も確かです」
「ならばな」
「傍に置くべきです」
「お主もそう思うな」
「必ず」
 こう信長に言うのだった。
「あの者は」
「そう思うと武田に勝てたことは何と大きいか」
 川尻はここでしみじみとして述べた。
「ただ武田家を降しその主従を当家に加え多くの領地を得ただけではありませぬな」
「うむ、わしは恐るべき者も手に入れた」
「武田信玄入道と」
「あの者をな」
 幸村、彼をというのだ。
「このことはまことに大きい、そしてじゃ」
「次はですな」
「上杉家じゃ、まずは川中島に進むぞ」
 そこにというのだ。
「そして海津城をじゃ」
「あの城において」
 金森が応えた。
「どうするか」
「それじゃ、あの城に入るが」
「そこで、ですな」
「上杉の軍勢を待ち受けてじゃ」
 そうしてというのだ。
「戦ってじゃ」
「そのうえで勝つ」
「そうする、上杉にも勝てば」
 それでというのだ。
「北陸も手に入りな」
「今度はですな」
「上杉家、そしてな」
「上杉謙信公も」
「わしに降る、甲斐の虎だけでなくじゃ」
「越後の龍も」
「わしの家臣となり天下の為に働くことになる」
 信長は金森に確かな声で答えた。
「そして西国の殆どがな」
「当家のものになりますな」
「しかしそれで終わりではないぞ」
「北条家が残っています」
 上杉家に勝ってもとだ、蜂屋が言ってきた。
「関東の」
「そうじゃ、わしはこの度の戦はな」
「関東もですな」
「全て手に入れるまでな」
「終わらぬと思っていますな」
「北条家も降し」
 即ち北条氏康をというのだ。
「そしてじゃ」
「関東も全て手に入れ」
「治めていくぞ」
「そうしていきますな」
「そしてこの度の戦で手に入れた国々を治め」
 毛利、武田、そしてこれから戦う上杉家と北条家の領地を中心とした国々全てをというのである。
「そうしてじゃ」
「そのうえで」
「その政が固まるとな」
「その後で」
「いよいよじゃ」
「残る国々を降し」
「天下統一とする」
 その様にというのだ。
「そうしていくぞ」
「わかり申した」
「その大きな土台をじゃ」
「今築いていますな」
「この度の戦でな」
 そうしているというのだ。
「それでじゃ」
「はい、次は上杉家となりますな」
「そうなる、あとじゃ」
 ここでさらに言う信長だった。 
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