魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者
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第五十二話 合流 2
早朝訓練が終わり、シャワーを済ませたアスカが向かったのは医務室。
そこで待ち受けるシャマルは……
魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者、始まります。
outside
シャワーを浴びて着替えてから、アスカは医務室へと向かった。
「失礼します」
ドアをくぐると、そこには腰に手を当てて頬を膨らませて怒ってますよアピールをしているシャマルがいた。
「失礼しました」
反射的にクルリと方向転換するアスカ。だがシャマルは逃がさない。
「待ちなさい!」
アスカの首根っこを掴んで、グイと引き寄せる。
「アスカ君?先生、訓練が終わったらすぐに医務室に来てねって言ったわよね?そのまんまでいいから来てねって言ったよね?言ったでしょ!」
「あ、あの、シャマル先生?」
「なのに何で着替えているかな?シャワーも浴びているみたいだし。汗まみれでも泥まみれでもいいから来てねって言ったのに、何で身じたくしてるのかな!?」
アスカをベッドに座らせたシャマルが一気にまくし立てる。
「えーと、その……」
何か言い訳をと考えるアスカだが、シャマルを前にして目が泳いでいる。
「……」
ジト目でアスカを見るシャマル。そのプレッシャーにアスカは負けて本音を言ってしまった。
「……そう言うの、気にするお年頃?」
「アスカ君!」
「ごめんなさい!」
パンッ!と両手を合わせてアスカが頭を下げる。
「で、でも、オレでもやっぱ気にするんですよ……自分の汗の臭いなんて、女の人に嗅がれたくないんですよ」
とくに美人には、の言葉をアスカは飲み込む。さすがにそれを言ってしまっては、あざとすぎると思ったからだ。
「……もう、良いから横になって」
呆れたのか諦めたのか、シャマルはため息をついてアスカをベッドに寝かせた。
「その……すみません……」
さすがに悪いと思ったアスカが謝る。
「もういいわ。楽にして」
シャマルはアスカの胸に手を置いた。そして、治癒魔法を発動させる。
シャマルの魔力光にアスカは包まれる。
すると、さっきまで体内で暴れていた嘔吐感が消え、煮立っていたように熱くなっていた内蔵が冷却されたように爽やかになる。
「ふう……」
目を瞑り、大きく息をはくアスカ。二度、三度と深呼吸をする。
「どう?気持ち悪いの、なくなった?」
「……はい。すごく楽になりました」
「よかった……じゃあお終い。朝ご飯食べても良いわよ」
シャマルが手を離し、カルテに治療内容を記入する。
「シャマル先生……その、済みませんでした……」
心配させてしまったアスカは、少しヘコみ気味に謝る。
「いいわよ。確かに、そういうに気にするお年頃だもんね」
シャマルが笑って言う。だが、すぐに真顔になる。
「でも、身体に異変があったら、どんな小さな事でもすぐに言うのよ?例え夜中でも、私のところに来ないとダメだからね」
シャマルは本当にみんなの事を心配している。
その昔、なのはの身体の不調に気づかずに大怪我をさせてしまった事を、今でも後悔している。
だから、同じ過ちを繰り返さない為にも、くどいくらいに言っているのだ。
「はい、分かりました」
アスカも、それは充分に理解している。
だから、次からはすぐに医務室に来ようと思っていた。
(でも……ちょっと怒ったシャマル先生も、カワイイんだよね)
まだまだ余裕のあるアスカであった。
アスカside
一悶着あってから、オレはシャマル先生と一緒に食堂にきた。
すでに隊長や、フォワードメンバーや早出のロングアーチメンバーも食事をしている
シャマル先生はすぐに部隊長達のテーブルに向かう。
何となく、オレはその隣の隊長のテーブルを見る。
高町隊長とハラオウン隊長に挟まれて、ヴィヴィオがご満悦でオムライスを食べていた。
「ん?」
オレはヴィヴィオの皿を見て、ちょっと唸った。
なぜなら、ヴィヴィオはピーマンの切れ端を皿の隅に寄せていたからだ。
「やれやれ、だな」
苦手なのは分かるけど、好き嫌いは良くない。だからと言って、無理矢理喰わせるとトラウマになる可能性があるからな。
と言う事で、オレは一計を練った。
「おばちゃん、ちょっといいかい?」
オレは調理室のおばちゃんに声を掛けた。
「あいよ、なんだい?」
「あのさ……」
ゴニョゴニョとオレはおばちゃんに耳打ちする。
「本当にそんなの作んのかい?」
オレのオーダーに、おばちゃんは眉をしかめる。オレは何も言わないで、チョイチョイとヴィヴィオを指さした。
「あぁ……そう言う事かい。あんたも難儀な性格してんねぇ」
オレの考えている事を察してくれたおばちゃんが呆れたように言う。
「うまく行けばいいんだけどね」
呆れながらもおばちゃんはすぐに料理を作ってくれた。
山盛りの料理を手に、オレは隊長の隣のフォワードのテーブルについた。
「あ、アスカさん……なんですか、それ?」
オレの料理を見た途端、エリオがツッコミを入れてきた。
いやいや、エリオ君?それはコッチの台詞ですよ?
「いや、待てエリオ。何で当たり前のようにパスタタワーが3つもあるんだよ?」
スバル、エリオ、ギンガさんの前にそびえ立つパスタの塔にオレは唖然とする。
しかも、パスタタワーの横にはサラダ山が築かれているし。
「え?何かおかしい?」
ギンガさんが真顔で何で?と聞いてきた。
「………忘れていたよ、スバルの姉ちゃんだった」
せっかくシャマル先生が癒してくれたのに、ドッと疲れが出た。
「あ、ヴィヴィオだめだよ。ピーマン残しちゃ」
その時、隣の席から高町隊長の注意する声が聞こえた。
「うぅ~、苦いのきらーい!」
駄々をこねるヴィヴィオ。
「えー、美味しいよ」「しっかり食べないとおっきくなれないんだから」
ハラオウン隊長と高町隊長が両側から言うけど、あれはヴィヴィオにとってはキツイ。
子供の味覚だから苦みには敏感だし、一度苦手意識を持ったら、中々食べられないだろう。
なら、味覚以外の事で食べさせればいい。と言う訳で、オレの料理の出番だ。
「そうだぞー、ヴィヴィオ。ピーマンに負けていたら、キレイになれないぞー」
オレの言葉に、ヴィヴィオが頬を膨らませる。
「だってー……うにゅ?」
オレを見てヴィヴィオが変な声を出す。正確には、オレの料理を見てだ。
「……アスカ君、やりすぎ」
高町隊長もオレの料理を見て、さすがに苦笑いしている。
そりゃそうだろうな。
何しろオレの朝食は、緑色のチャーハンだからだ。
米とピーマンの比率が半分くらいと、明らかにおかしいチャーハン。
これを作り上げるおばちゃんの技術、尊敬するぜ!
オレはスプーンを持って、グリーンチャーハンを頬張る。
「ほら、ピーマンなんて何でもないぞ~」
こういう小さい子は、大人の行動をマネする事がよくある。
だから、言葉で言うよりも行動で示せばいい時もあると思う。
「はうぅ……」
バグバグとピーマンチャーハンを食べるオレを、ヴィヴィオは呆然と見ている。
むう……乗ってこないか。ならば、今度は挑発してみよう。
「あっれ~?それともヴィヴィオはピーマンに負けちゃうような、弱虫さんかな~?」
オレのその言葉に、ちょっとムッとしたヴィヴィオ。
「ヴィヴィオ弱虫さんじゃないもん!ちゃんと食べられるもん!」
そう言ってヴィヴィオは、端に寄せたピーマンの切れ端は口に運んだ。
ウッと眉は八の字にしたけど、すぐにゴクンと飲み込む。
「ほ、ほらね、食べられたんだから」
思いっきり苦そうな顔をしながらも、食べたよアピールをしてくるヴィヴィオ。
よし。苦手な物でも食べる事ができれば克服できる筈だ。
「おー!偉いぞ、ヴィヴィオ。好き嫌いが無くなれば、フォワードメンバーみたいに、すっごく強くなれるぞ。なぁ、みんな!」
オレが振り返った時だった。
「え?」
キャロがエリオの皿にニンジンを移そうとしている瞬間を目撃してしまった。
「「……」」
オレとキャロの視線が交差する。
引き吊るキャロに、ジト目のオレ。
「……おばちゃーん。次はニンジンのチャーハンを……」
「な、何言ってるんですか?わ、私、好き嫌いなんてありませんよ?」
キャロが慌ててニンジンを食べる。
顔をしかめて、それでもしっかりと噛んで飲み込んだ。
さすがに、自分より年下のヴィヴィオが苦手なピーマンを食べたのに、自分が好き嫌いを言ってはいられないか。
カワイイじゃないの。
「そうだよなー。それでこそお姉さんだ」
ヨシヨシとオレはキャロの頭を撫でくり回す。
ヴィヴィオも負けず嫌いな所があるのか、残りのピーマンを全部平らげた。
「うー、食べたよぉ」
「うん。偉いね、ヴィヴィオ」
高町隊長に頭を撫でられ、ヴィヴィオは嬉しそうに笑った。
なんか、本当の親子みたいだな。まあ、母親って言うには隊長はまだ若すぎるけど。
「しっかし、まあ、子供って泣いたり笑ったりの切り替えが早いわよね」
そんなヴィヴィオを見ていたティアナがニコやかに言う。
「スバルのちっちゃい頃も、あんな感じだったわよね」
懐かしむようにギンガさんが言う。まあ、何となく想像はつくけど。
「え?そ、そうかな?」
急に子供の頃の事を言われて、スバルが赤くなる。たぶん、アレは自覚があるな。
「リインちゃんも、そうだったわね」
シャマル先生が、自分と同じくらいのフォークと格闘しているリイン曹長に言った。
今でもちっちゃいのに、更にちっちゃかったのかな?
「えー!リインは割と初めっから大人でした!」
ぷう、と頬を膨らませて可愛く抗議するリイン曹長。大人って……
「ウソをつけ」
シグナム副隊長が間髪入れずにツッコム。容赦ないですね、シグナム副隊長。
「身体はともかく、中身は赤ん坊だったじゃねぇか」
ヴィータ副隊長も乗っかってくるけど、エターナル○リータには言われたくないな。
「う~、はやてちゃん!違いますよね!」
味方がいなくなったリイン曹長が、とうとう八神部隊長に泣きついた。
「さぁて、どうやったかな?」
そんなリイン曹長が可愛いのか、八神部隊長が頬を緩ませて笑う。じゃあ助けたれよ。
「はやてちゃんまで~!」
プンプンと可愛く怒るリイン曹長。あぁ~、和むな~、と油断していたら……
「アスカはどう思いますか!」
いきなりこっちに話がきた!何でオレよ!当たりやすいからか!?
まあ、オレは素直に思った事を口にした。
「リイン曹長もスバルも、切り替え早いと思いますよ?」
「「それって私が子供って事!?」」
見事なハモリで、リイン曹長とスバルがツッコんできた。
なんだ、自覚があるんじゃない。
outside
一騒動あった朝食が終わり、アスカはオフィスで書類仕事をしていた。
エリオとキャロはフェイトと共に砲撃事件の最終報告書を作成する為に、隊長室にいるのでここにはいない。
「じゃあ、よろしくね!」
スバルがアスカとティアナに手を振って、オフィスから出て行った。
「あれ?スバル、外出か?」
何も知らないアスカがティアナに聞く。
「えぇ、健康診断よ。ギンガさんも一緒に」
「健康診断って……健康優良児の見本みたいなナカジマシスターズがかよ?」
あのパスタタワーとサラダマウンテンをペロリと平らげたのを目の当たりにしたアスカが、思わず呟く。
「……まあ、色々あるのよ。スバルも、ギンガさんも」
少し言葉に詰まるティアナ。
「ふ~ん、そんなもんかねぇ」
アスカはそれ以上は追求せずに、書類に意識を戻した。
「……」
(ごめん、アスカ。きっとスバルから話をする時がくるから、それまで待って)
ティアナは、詳しく話せない事を心の中で謝った。
首都クラナガン、最新技術医療センター。
スバルとギンガは、マリーと共にそこにいた。
その建物の一番奥。
一般人は立ち入る事ができない特殊医療室にスバルとギンガは入って行く。
そこには、二つのベッドが並べられていた。
「二人とも、ハードワークだとは思うけど、調子悪い所とかない?」
モニタールームからマリーが聞いてきた。
「ありませーん!むしろ、めっきり好調で!」
元気いっぱいにスバルが答える。
「私もです」
ギンガも同じように答えた。
「なら良かった」
マリーの声に、安堵の響きが混じる。
スバルとギンガは服を脱ぎ、ベッドに横になる。
「じゃあ定期検診、始めよっか」
マリーがパネルを操作して、小型のMRIのような装置をベッドにセットした。
「「はい」」
スバルとギンガが答える。いつもの検査だ。
足下から、その装置が二人の身体をスキャンしていく。
「……」
マリーは上がってくるデータを真剣な目で見ていた。
モニターに映し出された影は、常人とは違う物だった。
骨格形状は普通だが、色が違っていた。
カルシウムを投影した時にある白濁とした透明感は無く、黒く塗りつぶされたように映る骨格。
関節部にあるモーターのような機械。
血中で蠢くナノマシン。
それらのデータを、次々と読みとっていくマリー。
スバルとギンガは、普通の人とは身体の構造が異なっている。
なぜなら二人は……
「戦闘機人のプロトタイプ……」
マリーの顔が悲し気に歪む。
スバルとギンガは、ある違法研究施設の生体ポッドの中にいたのを、ゲンヤの妻であり当時の武装隊のエース、クイント・ナカジマによって救い出された。
人工生命体である姉妹。それも機械化された箇所を持つ、人と機械のハイブリッド。
それだけではなかった。
DNAを調べた所、クイントの細胞からクローニングされた事が判明したのだ。
その時からゲンヤは、管理局内部に犯罪組織に通じる人物がいると感じていた。
結局その姉妹は、ゲンヤとクイントが娘として引き取る事になった。
それから間もなくして、クイントはある任務で命を落とす事になる。
母の死を期に、ギンガは管理局への道へと進む事になったのだ。
マリーは二人が幼少の頃から、健康診断をしていた。
戦闘機人の構造を持つスバルとギンガは、通常の医療施設での検診ができないからだ。
「大丈夫よ。何があっても、私がちゃんと守ってあげるから……クイントさんと約束したから」
マリーの言葉の端には、悲しみが混じっていた。
傾いた日が、部隊長室に差し込む。
はやては、なのはとフェイトを呼び出していた。
「今日、教会の方から最新の予言解釈がきた」
はやてはそう切り出した。
「やっぱり、公開意見陳述会が狙われる可能性が高いそうや。もちろん、警備はいつもより、うんと厳重になる。機動六課も各員でそれぞれ警備に当たってもらう」
はやてはそこで、申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「ホンマは前線丸ごとで警備させてもらえたらええんやけど、建物の中に入れるんは、私たち三人だけになりそうや」
公開意見陳述会の警備は、基本的に地上本部が担当する事になる。
地上部隊とは言え、海寄りの機動六課は煙たがれると言う事だ。
「まあ、三人そろってれば、大抵の事は何とかなるよ」
フェイトの言葉に、なのはが頷く。
「前線メンバーも大丈夫。しっかり鍛えてきたから。副隊長達も、今までにないくらい万全だよ」
新人達のチームワークと副隊長の戦力に、なのはは絶対の自信を持っている。
「でも……監査がどう転ぶかでシフト変更になっちゃうかもしれないね」
フェイトが顔を曇らせる。
監査をすると言う通達はあったが、まだ時期が決まっていない。
だが、どんなに遅くても公開意見陳述会までには必ず行う筈だ。
「そっちはまかせてんか?大丈夫やから」
はやてが笑う。そして、力強く言った。
「ここを押さえれば、この事件は一気に好転して行くと思う」
「「うん」」
なのはとフェイトが頷く。
「きっと、大丈夫」
なのはの言葉にも、力強さがあった。
この時、はやてはカリムから”悲しみを知る盾”については何も知らされていなかった。
プロフェーデン・シュリフテンの発動時期でないにもかかわらずに浮かび出た予言に、カリム自身が信憑性に欠けると思っていたので、はやてには知らせなかったのだ。
後にこれは、最悪のタイミングで知らされる事になる。
後書き
リアルが忙しいくて投稿が遅れました。申し訳ありません。
本当なら前回の一回で投稿する予定でしたが、長くなったので2回に分けました。
相変わらず下手な文章で申し訳ありません。
読んでいただいている方には、大変感謝しています。これからもよろしくお願いします。
今回はシャマル先生から始まってます。シャマル先生、カワイイですよね。あんまり目立たないけど……
こういう、日常的な細かいやりとりって、結構好きです。
後はサクッと飛ばして隊長達のシーン。
悲しみをしる盾については最終決戦で明かされます。それまでお待ちください。
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