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デジモンアドベンチャー Miracle Light

作者:setuna
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第90話:変態仮面集団

取り敢えず全員と合流した大輔達は、治達がいるらしい光が丘某所に向かった。

光が丘…ここで大輔達はデジモンと初めて接触したことを考えれば始まりと終わりがこの街とは何の因果だろうか?

この場にはアメリカにいるはずのミミもおり、デジタルワールド経由でアメリカから日本に直行したミミは1日光子郎の家に泊めさせた。

光子郎は“何でミミさんを僕の家に泊めさせるんですか!?”と反対していたが、仲間達の無言の圧力に負けて泊めさせた。

今はこうしてこの場に集まった日本の選ばれし子供達とデジモン達だが、目の前の光景に目が全員死んでいた。

「何じゃこりゃあ、何じゃこりゃあ、何じゃこりゃあ、何じゃこりゃあ、何じゃこりゃあ、何じゃこりゃあ、何じゃこりゃあ、何じゃこりゃあ、何じゃこりゃあ、何じゃこりゃあ、何じゃこりゃあ…?」

「今回ばかりはあんたの気持ちが痛いほどに分かるわ…本当に何じゃこりゃあ、何じゃこりゃあ、何じゃこりゃあよ…」

ブイモンが死んだ魚のような目で目の前の光景を凝視し、テイルモンもまた死んだ魚のような目で目の前の光景を凝視した。

「何だあれは?」

「とてつもなく目に痛い変態仮面のコスプレ集団です」

「見れば分かる。どうしてああなった!?」

「あの子達のお父さんとお母さんが見たら卒倒するか絶望確定ね」

「卒倒か絶望だけで済みますかねあれ?親が見たら投身自殺物ですよあれは」

太一、タケル、ヤマト、空、芽心が目を庇いながら目の前の変態コスプレ集団を見つめていた。

「あそこにいるじゃないか…TPOを全く弁えていない変態コスプレ集団と変態仮面が…目の毒にも程があんぞおい…!!変態かこりゃー!!変態仮面かこりゃー!!一乗寺治かこりゃー!!」

「ブイモン、正気に戻ってそのリアクション止めなさい。あんたの気持ちは痛い程に分かるけどね…取り敢えずどこぞの銃撃多重奏の芸術家じゃないんだから」

「はっ!?俺としたことが…些か取り乱してしまったようだ…」

ここが人気のない場所なのが幸いした。

流石に人気のある場所なら警察沙汰だろう。

大輔達の家族が子供達の親を連れてくると言ったが、あれは寧ろ見せない方がいいのではと思わないでもない。

大輔達の両親の表情やら目も死んでいたのは気にしない。

もう本当に気にしたら負けだと思う。

「良く集まってくれた僕の同志達。君達は僕という天才に選ばれた特別な存在だ。共にデジタルワールドに行き、僕の崇高な理想を邪魔する悪を打ち破ろうじゃないか!!」

「悪人はお前だろうが…」

「伊織君、絶縁ってどうすれば出来るんだっけ?」

「ええっとですね…」

大輔が呆れたように呟き、賢は疲れ果てたように伊織に絶縁の方法を尋ね、タケルはそれを哀れみ、ヒカリと京は治を汚物を見るような目で見つめていた。

「では君達を夢の世界へ連れて行こう。一緒にデジタルワールドに行き、デジタルワールドを支配しようじゃないか!!」

【はい、デジモンカイザー様!!】

治の言葉に同調した子供達の声に大輔達は最早手遅れかもしれないと絶望した。

しかし、治の言葉にほくそ笑むブイモン。

「ふん、馬鹿が。デジタルゲートは全て封鎖してるんだ。通れるわけ…何ぃ!?」

ブイモンが治を蔑むが、突如開いた穴に全員が隠れた場所から飛び出した。

「おいこら待て、変態仮面!!」

大輔が飛び出すのと同時に叫ぶ。

「ん?何だ君達か?何の用かな?」

「何の用だじゃないだろ!?子供達に妙な物を植え付けた挙げ句デジタルワールドに連れて行くなんて何考えてやがる!!」

「妙な物?はははは!!暗黒の種は僕がこの子達に与えた神の恵みだよ!!凡人達に救いを齎した僕の慈悲に感謝してもらいたいくらいだよ!!」

「何が慈悲だ!!そんな物を体に入れられて何の副作用もないと言い切れるのかい!?急激な変化に体に何の負担もないわけがない!!」

特に暗黒の種と言う、デーモンが狙う程の代物を体内に植え付けられたのだ。

植え付けられた人間に能力と引き換えに何らかのデメリットは必ず存在するはずだ。

「それでも種を受け入れたのはこの子達の意思。生きる価値がない凡人達に価値を与えてあげた僕の優しさに感謝するがいい」

罪悪感を欠片も持たずにいけしゃあしゃあと言う治に普段は温厚な丈ですら怒りを禁じ得ない。

「どうやら叩き潰すのに躊躇する理由は全く無くなったな。お前の裏に誰がいようと誰の意思だろうとな」

「何を言っているんだい?これは正真正銘、僕の意思だよ!!君達のような愚かな凡人を排除するためにしているのさ!!」

「よし、言質は取ったぞ。録音しましたよね光子郎さん」

「勿論です」

携帯電話の機能を使って確かに治の発言は記録した。

つまりもう言い逃れは出来ない。

「ふん、君達虫螻は僕達にデジタルワールドを支配される様を指を咥えて見ているが良い」

治は大輔達を嘲笑いながら子供達を連れてゲートを潜る。

「確かにおじさんはデジタルゲートを全て封鎖したはずですけど…」

「もしかしたらデジタルワールドとは違う世界に飛ばされるんじゃないの?」

「多分な…まあ、逃げられるよりはマシだし。追い掛けて叩き潰してやろうか」

伊織の呟きに賢がそう言うと大輔も頷き、急いでゲートを潜る。

悠紀夫に一応現状をメールで報せながら。

「あれ?本当にデジタルワールドじゃないわ」

「それはそうですよ。」

「悠紀夫さんがかけたプロテクトを簡単に解除出来るはずもねえしな」

京とヒカリと大輔が見慣れない世界の周囲を見渡しながら言うと、珍しく慌てている治の姿があった。

「な、何だこの世界は!?ここはデジタルワールドじゃない!?」

「俺達がお前の馬鹿に何の対策をしてないと思ったのか?頭良い癖に馬鹿じゃねえかお前?」

太一が呆れたように呟くと治がこちらを憤怒の形相で見つめる。

そんな間抜けな姿では迫力など全くないが。

「貴様らは…一体どこまで僕の邪魔をすれば気が済むんだ!?」

「いや、お前も一体どこまでアホなことすれば気が済むんだ?」

「彼と話しても疲れるだけだから止めましょうよヤマト。さっさと倒して終わらせて帰りましょう。」

ヤマトと空が呆れながら前進。

出口は無くなってしまったが、まあ何とかなるだろう。

まずはこの目の前の馬鹿を…。

「う…ぐ…ああああ!?」

【ん?何?変態特有の持病?】

治が突如として苦しみだし、頭を抱え出す。

大輔達は変態特有の持病だろうかと思いながら見つめていると。

「偶然辿り着いた場所だが、此処こそ俺が願っていた世界」

「ん?変態仮面の声?」

ブイモンが突如として響いた治に似た声に疑問符を浮かべると、唐突に空間を歪ませ巨大な口が現れた。

それを見た治と集められた子供達は表情を強ばらせた。

「怖いか、そうか。この世界に迷い込んだ者は、仲間が生きながら闇に食われる事に恐怖し、自分も逃げられない事を知り絶望する……」

「……僕の声みたいに聞こえるが、空耳か?」

「空耳じゃない、俺はお前だ。3年前、俺は探していた。選ばれし子供達の究極体達の一斉攻撃を受けてデータとなった俺が生き残るための宿主をな。しかし宿主となり得る存在などそう簡単に見つかるはずもない。1年もの時が経過し、受けたダメージもあって自我すら危うくなりかけたそんな時お前に出会った。デジタルワールドに選ばれた子供達への、弟への嫉妬。重すぎる両親からの期待に自暴自棄になりかけていたお前にな」

唇は文字通り大きく口を開く。

その奥に見えるものは、約2年前の治の一部始終であった。

「成る程、嫉妬していたそいつはお前からすれば絶好の憑依相手だったわけだなヴァンデモンさんよ?」

「やはり気付かれていたか」

ブイモンの言葉にヴァンデモンはニヤリと笑った。

「気付いたのはつい最近だけどな。デジヴァイスとD-3無しで行く方法は限られているし、一応3年前の時にその方法を知った。あのカードを使ったんだな?念のためにお前のアジトがあった場所に行ったら棺の中のカードが無くなってたしな」

「まさか、あの攻撃を喰らって生き延びるとはゴキブリのような奴だ。しかし今度こそ闇に葬ってくれる」

ブイモンとテイルモンが忌々しそうにヴァンデモンを睨み付ける。

「出来るかな?俺とてあの時の俺ではない。ついでに教えておいてやる、イービルリングはコピーしておいたお前のホーリーリングのデータを逆転させ使ったのだ」

「…そう言えば昔ホーリーリングを取り上げられたことあったわね」

確かに昔、ヴァンデモンにホーリーリングを取り上げられたような気がする。

それを聞いたブイモンがテイルモンに呆れ果てる。

「おいネズミ。お前そんな大事なことを何で言わないんだ」

「うるさいわね!!ずっと昔のことがこんなことになる原因の1つになるなんて普通思わないわよ!!」

「喧嘩は止めろ!!とにかくお前はまだ体を手に入れていないんだろ!?なら体を手に入れる前にぶっ潰して…」

太一がブイモンとテイルモンの首根っこを掴んで喧嘩を止めてヴァンデモンを睨む。

3年前に倒し損ねた相手を今度こそ完全に倒すつもりなのだろう。

「消されるのはお前達だ」

「う、うわああああ!?」

治は巨大なヴァンデモンの口に食われ、飲み込まれた。

「あ、腐った変態仮面が食べられた」

「お腹壊さないかしら?」

賢と京が別の心配をする。

治を飲み込んだヴァンデモンの口に変化が起きてどす黒いエネルギーを放出する。

そのエネルギーは触手となって他の子供達の暗黒の種が発芽して出来た花を摘み取り、自らの力とする。

「ヴァンデモンに!?それともヴェノムヴァンデモンに!?」

タケルはそれを見て、完全体のヴァンデモンとなるのか、それとも究極体のヴェノムヴァンデモンになるのかと警戒する。

「そのどちらでもない、ベリアルヴァンデモンと呼んでもらおう!!」

治と暗黒の花を取り込んだことで肉体の形成に成功したヴァンデモン。

「ベリアルヴァンデモンだって?ヴェノムヴァンデモンより小柄じゃないか」

ベリアルヴァンデモンと名乗ったデジモンは、完全体のヴァンデモンのように人間めいた姿ではなく、かと言って以前の究極体の姿であるヴェノムヴァンデモンのように理性を失った獣の姿でもない。

賢の言う通り、ヴェノムヴァンデモンより遥かに小柄だが、あのヴァンデモンのことだから自分達と戦うために半端な姿で挑むはずがないので、多分ベリアルヴァンデモンは究極体だろう。

恐らくはヴェノムヴァンデモンよりは知性がある分強いはずだ。

知性がある分、知性がないためのある種の危険性が喪失しているだろうが。

「行くぜブイモン!!」

「おうよ!!初っ端からフルパワーで行くぜ!!」

「デジメンタルアップ!!」

「ブイモンワープ進化、デュナスモン!!」

しかし、そこで臆する大輔とブイモンではなく、ブイモンをデュナスモンに進化させてベリアルヴァンデモンに突っ込んでいくのであった。 
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