ロキを愛する冒険者がいるのは間違っているだろうか
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閑話 その時ロキは
前書き
今晩は今回は番外編のような話です。
一応伏線みたいなものです
それではどうぞ
「はぁー最悪や‼️」
朱髪の女神は盛大なため息を吐いた。
飛翔がドノバンと入団交渉をしている同じ頃、神会に参加していたロキは超不機嫌だった。
ここまで楽しくない神会など今までなかった。
ゼウスとヘラファミリアが幅を効かせていたときも、こんなデナトゥスはなかった。
ロキがこれほどまでに不機嫌なのは
「おやおやため息だなんて、幸せが逃げてしまうよロキ君」
「じゃかましい。
その変な口調をやめぇやドチビ‼️」
満面の幸せ一杯の笑みを浮かべているヘスティアが原因だった。
ここはオラリオが誇る五十階建ての摩天楼施設バベルの30階、神会を
行う会場である。
この広大な荘厳さ溢れる大部屋で
オラリオにいるレベル2以上の
眷族を持つ神々が3ヶ月に一回
開催される神会を現在行っている。
議題は次々と消化され、現在の議題はこのデナトゥスの最大の議題
新たにランクアップした眷族達の
二つ名の命名について、その命名も残すは後一人だけ。
その最後の一人が
「さあロキ君もため息、何かやめて
ぼ‼️く!!のベル君の新たな二つ名を決めようじゃないか。
レベル5にランクアップした、僕の、僕のベル君のぉー」
レベル5にランクアップした、ヘスティアファミリア団長のベル・クラネルだった。
★
ベルクラネル
それは、このオラリオで若くして名を馳せている少年。
たった一人の眷族しかいない弱小ファミリアの団員でしかなかった
兎を思わせる少年だったが、レベル1でのミノタウロス単独撃破を始め、リヴィラの町でゴライオス撃破アポロンファミリアとの戦争遊戯
と数々の修羅場を超え、この度に
異常な速度で成長し、次々とランクアップを果たし、そしてついに今回
(ダンジョン深層から手負いのエルフとたった二人で生還、及び破壊神
ジャガーノートの討伐って、あーたんのファミリアを全滅させた
化け物をたった一人で……戦争遊戯の時レベル2とは思えんほど強いとは思っとったが、恩恵貰って1年もせんうちにレベル5第一級冒険者とは……)
ロキは自分に配られたベルの資料を
確認する。
「うむレベル5とは……新たな第一級の冒険者の誕生を喜ぶべきなのだろうが」
ロキと同じく資料を見ていた、顔の上半分を象の仮面で覆っている
神ガネーシャが見ていた資料の内容を見て唸る。
「うふふっ、もうレベル5だなんて
ヘスティアの子は凄いのね」
「まぁね。今はまだフレイヤ
君の子には敵わないだろうけど
それも今だけの話さ」
美神フレイヤの称賛を円卓の上に乗ってブイサインで
答えるヘスティア。
「ちょっとヘスティア!嬉しいのはわかるけど、行儀が悪いわよ」
「そうや。ファイたんのいう通りや」
円卓の上に乗っている、ヘスティアを席に座らせるのは、女鍛冶神のヘファイストス。
今回の神会はレコードホルダーが
一年もかけずにレベル5になったということで、凄い注目の的となっており、そうそうたるメンバーが集まっている。
オラリオ三大派閥の主神である
ロキ、フレイヤ、ガネーシャを始め、第一級冒険者を団長に持つ
世界クラスのブランドを誇る、鍛冶師系ファミリア主神ヘファイストス
そのヘファイストスと質の上では
互角と言われる、ゴブニュファミリアの主神ゴブニュ、めんどくさがって神会に滅多に出ない、ディアンケヒトファミリアの主神、ディアンケヒトも参加しており、極めつけは
「ははっ……ヘスティア俺も
ベル君のランクアップはとても嬉しいよ。
下手をすると我が子のランクアップよりも嬉しい。
だからこそ、ベル君には素晴らしい二つ名をつけてあげようじゃないか‼️
そのためには彼の主神である
君が落ち着かないとねぇ」
自称中立を宣言する、パッと見キザでイケメンなつかみどころのなさそうな神ヘルメスが超ハイテンションのヘスティアを嗜める。
彼も世界中旅をしているので神会には滅多に顔を出さない。
また極めつけはもう一人いる。
「あのそろそろ、議題に戻りませんか?
ベルクラネルの二つ名を決める……」
手を上げて、会議の再開を要請するのは、この場に居るはずのない
高級なスーツを着ている、エルフの男、現ギルド長ロイマン・マルディール
神会に神でない下界の子が居るなど
本来ではあり得ないことだ。
だが神達はこの例外を認めた。
何故ならロイマンマルディールは
神ウラノスの代理として参加しているからだ。
今回の神会の議長を務めるロキに
ウラノスが自分も神会に参加したいが自分は動けないから代わりの者を
寄越しても良いかと依頼され、
ロキが《爺ぃが珍しいのうまぁええわ》と許可したため実現した。
中立を宣言するギルドの主神である
ウラノスでさえ、ベルクラネルに
興味があるということだ。
「そうやなぁ。
長時間で皆も疲れてるやろうし
とっとと、終わらせよか」
「疲れているのはわかるけど、
二つ名は冒険者にとっては代名詞。
とても大切なものだから、慎重に
決めないといけないよロキ君
」
ロイマンの進言を受けたロキが
議題をさっさと片付けをようとするのをやんわりとヘスティアが、注意する。
普段なら《僕のベル君をないがしろにする気かぁ》とケンカ口調で迫るヘスティアなのだろうが、愛する子のランクアップともう1つの幸運により超ハイテンションな為、大嫌いなロキにも慈愛の心で接してくる。
それがロキにはたまらなく、腹立たしい。
(ドチビが調子に乗りおってぇ
でもそれも今のうちや、一皮剥けた
フィンにレベル3に留めている
レフィーヤの魔力アビリティはBにまで上がっとるんや。
ウチの勘やと、フィンは近々ランクアップしてレベルセブンになれるはずや。
そうなったら、ドチビに色ボケ女神にも目にも見せてやる‼️)
ロキは心の中でヘスティアを呪いながらも、議長としての役目を果たそうとする。
「ほなベルクラネルの二つの名の
案のある神は挙手してやー」
「はい~」
艶やかな声でピーンと手を挙げたのは美神フレイヤ
「おっフレイヤか
ほな聞こか、ベルクラネルの新しい二つ名は?」
「ふふっ……美神」
「却下ー‼️却下‼️」
ヘスティアが両手の平で円卓を叩いて、反対する。
「まだ言っていないけれど」
「言わなくてもわかるさ、美神の伴侶っていうつもりなんだろう」
「良い名前だと思うのだけれど」
「そんな二つ名つけたら君の
眷族が泣くぞ」
「あの子達はそんなに心は狭くないわ」
ヘスティアの追求を艶然とした笑みを浮かべてフレイヤはかわす。
「うー、とにかく却下だ。
ロキ他の案は?」
幸せの絶頂でご機嫌だったヘスティアも、フレイヤのちょっかいに怒り、普段の調子を取り戻す。
《うるさい命令するな》とロキは返すが、内心は気持ち悪いヘスティアでなくなってホッとする。
その気持ち悪さはぶ莉っ子に匹敵したからだ。
「はいはいーオックスハンターとかはどうでしょう? 」
比較的真面目そうにみえる、片眼の眼鏡をつけた神が意見を出す。
「うーん悪くはないと思うけど
ベル君を象徴するには何か足りないなぁ」
フレイヤの意見とは違い、聞く耳を持つヘスティア。
「まぁ少年は猛牛が大好きやからなぁ」
ロキが肯定とも否定とも取れない
意見を出す。
「確かにあの子は猛牛に縁があるわねぇ。
オックススレイヤーとも呼ぶ人も
いるし、何ならいっそ猛牛殺しを
二つ名にするのはどうかしら?」
「猛牛殺しか、迫力があっていいような気がしますなぁ」
「良いですねぇ流石はフレイヤ様」
「お見事なセンスです」
フレイヤの信者である、男神の何人かが、フレイヤを誉め称える。
「うーん。オックスハンターも
オックススレイヤーも悪くはない気がするんだけど、何か違うって感じがするんだよなぁ」
ヘスティアが二つの案を見比べ腕を組んで考え込む。
「そうだ。ヘファイストス何か
案はないか?」
ヘスティアは隣に座る神友に
頼む。
「私に聞かれても、ネーミングセンス何てないわよ」
胸の前で両手を振って、ヘファイストスが力にはなれないわと答える。
「そうか。
ボクもこれと思いつかないし、
この二つのどっちを採用するしかないか。
どちらもそんなに悪くないし、前回の時に出た案に比べたら、とても良いし」
前回のレベル4のランクアップ時の
神々の悪ふざけを思いだし、ヘスティアは顔をしかめる。
そのままオックススレイヤーかオックスハンターのどちらかで決まろうとしたとき
「私から一つ提案が」
「俺からもベル君の二つ名に意見が」
二人の男神がほぼ同時に声を上げた。
「なんやキザ男共」
声を上げたのは、長い金髪の男神デュオニュソスとヘルメスだった。
☆
「ヘルメスはともかく、デュオニュソスが意見を出すなんて珍しいのう。
二つ名議題で意見だしたなんて、
フィルたんの二つ名決めた時ぐらいちゃうんか自分?」
「そんなことはないとは思うが、
まぁ今都市を最も騒がせている冒険者だからねぇ、私とて気になるさ」
「何やヘルメス、ベルクラネルの二つ名を決めたいかんか?」
「俺は、ベル君のファンだからねぇ。
以前から暖めていた二つの案があるのさ」
髪をかきあげながら、ヘルメスが
答える。
その笑みからは、考えた二つ名に
対する自信が現れている。
「本当かいヘルメス
でも前回の神会の時にはいなかったじゃないか。
そんな暖めていた二つ名があるなら
何故言わなかったんだい?」
ヘスティアが疑い深そうな目で、
ヘルメスを見る。
「あのときはまだ大仰だと思ってね。
でも今のベル君ならこの名を授けても、名前負けしないと確信したんだよ」
「ほぉーそこまで自信があるんか?
でデュオニュソス、自分はどうなんや」
「私はヘルメスほど自信満々ではないが、私がベルクラネル彼を見たイメージをそのまま、二つ名とさせてもらったよ」
謙遜しているが、その口調からはそれなりの自信がロキにはうかがえた。
「面白いなぁ自分等?
ほな一斉にその自信満々の二つ名を
叫んで貰おうか」
「ボクも聞きたい。
ヘルメス、デュオニュソス君たちはボクのベル君にどんな二つ名をつけるんだい?」
興奮したヘスティアが前のめりに
なって、声を荒げる。
「参ったなぁそこまで期待されてしまうと、緊張してしまうなぁ」
「おっとデュオニュソス、君は
自信がないのかい?
俺はこの二つ名に自信を持っているから、ロキのご希望通り叫けべるぜ」
「ふっ流石はヘルメスだな。
良いだろうロキに乗ってここは
二人のネーミングセンス勝負と行こう」
ヘルメスの挑発に、それとわかっていながらデュオニュソスは乗る。
「よっしゃ決まりや、面白なってきたわぁ、キザ男同士のネーミングセンス対決、見物やわ。
ほないくでぇ3・2・1・0ぉー」
「白兎の英雄(ラビットヒーロー)」
「リトルヒーロー」
ロキの合図に合わせて、二人の男神はそのセンスを神々に披露したのだった。
☆☆
デュオニュソスとヘルメスの
案が出たことで、神会は白熱した。
僅か14歳の少年に英雄の名を
まがりなりにも与える事に反対意見は出なかった。
この場にいる神達はその片鱗を
何度も見せられたからだ。
あるものは戦争遊戯で、あるものは
オラリオに現れたブラックライノスの亜種との死闘で、あるものは
リヴィラの町防衛戦で、それぞれ
時と場所は違えど見せられていた。
ただ若干約一名朱髪の女神は
ウチの『勇者を差し置いて英雄やと
』と文句を言ったが、他の代案を出せるわけでもなく、他の神々が
納得してしまったため、覆すことはかなわなかった。
(くぅ……次の神会では見とけよドチビ、次の神会の前にはレフィーヤはレベル4にフィンはレベル7になって迎えたる。
その時は二代目九魔姫と、勇者王の二つ名をレフィーヤたんとフィンにつけるんやぁ)と心の中でロキは
誓うのだった。
もしか彼女の眷族である、当人達が聞いていたら全力で拒否していたのは言うまでもない。
ロキの葛藤を他所に、会議は進行していった。
最終的にリトル、未完という名は
脱却したのに、再びつけるのは違のではという、寡黙なゴブニュの
珍しい発言により、デュオニュソスが未完という名は今の彼にはふさわしくないなと、ゴブニュの意見に納得し、ヘルメスの案を良しとし、
他のデュオニュソスの案を押していた神々も折れて、オラリオ最年少第一級冒険者の二つ名はラビットヒーロー、白兎の英雄に決定し、こうして異例の神会は幕を閉じたのだった。
★
「酒や‼️酒ぇーとにかく高い酒持ってこい」
神会から帰ってきたロキが、ホームにガネーシャを連れて、やけ酒に
付き合わせたのは、言うまでもない。
後書き
最後まで読んで頂きありがとうございました。
余談ですが、ダンマチ最新刊発売まで後12日(笑)
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